10話 夜と格闘
ウェッジは部屋に戻り、アリスに事情を伝える。
そして、荷物をまとめるよう頼んだ。
アリスは急な展開に驚いたようだが、何も言わず動いてくれた。
フィオはウェッジに起こされると、
「湿気たツラで我の眠りを妨げるとは……」
と不機嫌な様子である。
しかし、さすがに状況が状況である。
概略を手短に伝えて、周囲の警戒を頼んだ。
ウェッジは荷物の詰め込み、装備の点検も終えて、準備を整えた。
あとは夜まで待ってから、傭兵団と遭遇しないよう警戒しつつ街を出る手はずだ。
◇◇◇
そして、夜。
ウェッジはベルトに下げたナイフをマントで隠す。
アリスは修道服が目立つので、その上からマントを羽織り、銀髪はフードで隠した。
さらに目立つ存在のフィオはアリスがマントの中に抱え込んだ。
「行きましょう」
ウェッジが出発を告げると、アリスは緊張した表情でうなずいた。
そして、夜の街を歩く。
夜は人出も少なく、街中では傭兵団どころか誰にも会わずに済んだ。
そして、街の出口である門扉の前に着くと、二人の男が扉の前に立っていた。
見た所、冒険者のようだが、傭兵団の可能性もある。
何食わぬ顔で横を通り過ぎるウェッジ一行。
だが、おい、と男の一人がウェッジを呼び止めた。
「俺たち、ここで人を探してるんだが。アンタの後ろの嬢ちゃん、顔を見せてもらってもいいか?」
「お断りします。急いでますので」
ウェッジが毅然とした態度で断る。
「アンタじゃねぇ、そこの銀髪っぽい娘だよ! そこのガキ、お前、アリスって娘か!?」
粗暴な態度でもう一人が詰め寄る。
(やはり、傭兵団でしたか)
ウェッジは軽く舌打ちした。
彼らはアリスを囲い込むために出入口を押さえていたようだ。
男の一人がアリスのフードを取ろうと手を伸ばす。
ウェッジは動いた。
男の伸ばした手を掴む。
同時に足払いをかけ、身体を捻った。ウェッジより一回り大きな男がふわりと浮く。
そのまま掴んだところを軸にぐるりと回転をかける。
男は背中から地面の石畳に叩きつけられた。
ウェッジの膂力は男を力任せに投げられるほどではない。
体重移動と相手の重量、力の方向を使い、流れるように投げたのだ。
受け身も取れず叩きつけられ、ぐはぁ、と呻き声を漏らす男。
「てめぇ! 何しやがった!」
もう一人の男が拳を振りかぶり、ウェッジに向かって突っ込んでくる。
ウェッジは男の拳を半身になって躱す。
さらに身体を回し、男に背を向ける形となった。
その状態から少し屈み、ふっ、と鋭く息を吐く。
そのまま、背中全体を使い体当たりした。
足のバネと体重を乗せた強烈な一撃。
ドンッと響く音。
同時に、男の身体が宙を舞う。
これも相手の力と体重移動を応用した体術のひとつだ。
ウェッジもそれなりの経験を積んだ身である。
ナイフ投げ以外にも近接戦の《技能》は持ち合わせていた。
本来は、さらに至近距離でのナイフ投げなども加えた独自の体術を使う。
だが、今回は相手をそこまで痛めつけるつもりはなかった。
「さぁ、アリス。こちらへ」
男たちが倒れている間に、アリスを連れて街の門を通り抜ける。
これで傭兵団にはアリスが居たことが伝わってしまうだろう。
夜が明ければ追撃が来ることは必至だ。
なるべく遠くまで距離を取っておく必要がある。
アリスの手を引きながら、ウェッジは街の外の地図を脳裏に浮かべた。
道なりに進めば、まずは森に突き当たる。
その森を抜けると、その先には一つ目の村。
森で一夜を明かすか、休み無く行軍して、休める村まで進むか。
アリスの体力がどれだけ持つのかも考える。
ウェッジはポーターとしての経験をもって、このパーティを導いていくため、夜の草原を歩き出した。
◇◇◇
新しいステータスが公開されました。
名前:ウェッジ・モルガ
スキル:体術……Bランク
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