決着
二人は決着を着けるべく、時計塔にやって来た。
「さぁ、やっと見つけたぞ!俺達をこの街にご招待してくれたパーティーの主催者さん!」
時計塔のすぐそばで時計塔に向かいイキるクロ。もはやただの変人、いや変猫だ。
「俺達に何か言いたいことがあるんじゃないのか?」
すると、誰かがどこかから二人の頭の中に直接話しかけてくる。
『…すけて……助けて……この街の皆を……。』
「残念だが、俺達にはどうすることもできない。この街もこの街の人達も、もう数百年前に既に滅びてるんだから。」
『嫌だ…もう誰も死なせたくない……もうこの街が滅ぶところを見たくない…。』
「そう思うのなら、もうこの街の人達を解放してやりな。それができるのはこの街に魔法をかけたあんただけなんだから。」
『…失いたくない。楽しかったあの時をもう一度取り戻したい。』
クロはふるふると首を振る。
「…これだから肉体を持たないヤツはタチが悪い。人間と違って死という概念がないから失うことに馴れてない。」
そう、かつての自分もそうだった。あの家族を失って、その元凶を作ったオヤジと愛人を許せなかった。俺の大切な家族を殺したくせに、自分達だけのうのうと幸せに暮らしているのを見て感情を抑えられなかった。殺してやると。あいつを殺すことで自分の中のあの母子への愛情を守れる気がしたんだ。そうしないと俺は、生きていられなかった。
「俺もお前と同じ様に大切な人達を失ったことがあるから辛さはわかる。でもな、お前のやっている事はお前のエゴでしかない。結局自分を、自分の心を守る事しか考えてない。」
そう、俺は俺の心を守る為にあいつを殺した。俺は俺が生きる為にあいつを殺したんだ。
「いい加減、お前はお前を愛してくれた人達を更に苦しめていると言うことに気付けよ!人間の魂にはな、俺達とは違って帰る場所があるんだ、逝くべき場所があるんだ。そこで少し休んで、またこの世界に生まれてくる。なのにお前がいつまでたってもこの人達の魂をここに繋げるから帰れないんだ、先に進めないんだよ!!」
『!!』
その時ずっと黙っていたカナンが意を決して叫ぶ。
「私の大事な家族を返せぇぇ!!」
パアァァァンと何がが弾ける音と共に、周囲が白く染まっていく。クロとカナンは眩しくて目を閉じた。