真実
カナンがベッドの脇で正座している。クロはベッドの上に座り、尻尾をテシテシしている。何となく偉そうである。
「さて、カナンくん。ついに全ての元凶があの時計塔であろうことが判明したわけだが、昨日あそこに行っても何もなかったのは君も承知しているかと思う。それで、君は昨日どんな夢を見たのかね?参考としてお聞きしたいのだが。」
「うんとね。パパとママと一緒に美味しいもの沢山食べたよ。」
クロは頭を抱えた。でしょうね、と思った。昨日の夜はイビキかいて尚且つヨダレまで垂らして爆睡してたもの。聞いた自分がバカだった。こいつのこのノー天気さは称賛に価する。しかしこのカナンの緩さがクロの肩の力を抜けさせたらしい。クロの思考回路は絶好調だ。クロは昨日の、時計塔での作業員達の会話を思い出した。
『大事に扱えば物にも心が宿るのだ。だから物は大切にな。』
「それだー!!」
急に大きな声を出すクロに驚くカナン。その頭の上には『?』が5つほど並んでいる。
この街の住人はあの時計塔を街のシンボルとして、大切に大切に愛情を込めて扱ってきた。だから『物に心が宿った』のだ。東方の国には物に宿る魔物だか神だかがいるのだという。確かツクモ…何とかと言ったか。
自分だって黒猫の死体に宿っているくせに、クロはすっかり忘れていた。あの時計塔にも、もしかすると魔物や精霊の類いのものが宿ったのかもしれない。一つの世界を作り出すほどの膨大な魔力を持つ何かが。