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まさかの異世界転生!

「ほらぁまだまだぁ!」


 右手に持った木刀を真横に薙ぎ少年は前に突っ切った。


 カチンとやはりその手に持った木の剣で少年の剣を捌くと、エオリアはストンとその場から飛び上がり少年の突撃を躱す。


 そのままくるんと背後に飛び降り、背中から斬り伏せた。


 その斬撃をギリギリで避けた少年は前のめりに転がると、その先で右足を踏ん張りエオリアに向かって飛んだ。



「そこまで!」


 老練で良く響く声。


 それを合図に相対した二人は剣を下ろした。


 その場でしゃがみ込んだ少年の顔には汗が噴き出て、肩で息をしているけれどそこには笑みが浮かんでいた。


「ぼっちゃま。強くおなりになりましたね」


 黒のメイド服のまま立ち会いを続けていたエオリアにそう声をかけられ、少年は破顔した。 


「ティム爺とエオリアのおかげだよ。ほんとありがとう」


 白銀の髪が肩までかかり、華奢な体躯にすらりと伸びた脚。


 今年10歳になったばかりの少年、イリスは、額の汗を左手で拭うと、ひょいと立ち上がって自分より頭ひとつ分は背が高いエオリアの手を引いた。


「さあ、お茶にしよう? マルゴットが入れてくれたお茶が冷めないうちに」


 庭の中央に設られた真っ白なガーデニングテーブルには白地に蔦の模様が入ったティーセットが並べられ、温かい入れ立てのローズティーからはかぐわしい香りが漂っている。


 エオリアと同じメイド服に身を包んだマルゴットが引いてくれる椅子に腰掛け一息つくイリス。


「エオリアも座ろ? 今日は僕の先生なのだからね?」


 そう笑顔ではなすイリスに笑顔で答えるエオリア。


 執事のティムとマルゴットに給仕されお茶とお菓子をいただいて。


 イリスはそれまでの事を思い返していた。





 ☆☆☆☆☆



 っていうかまさかのまさか。


 ほんとに転生してしまうとは思ってもいなかった。


 流石にね? 異世界転生だなんて空想の世界だけだと思ってたし。


 それも、まさかの自作の小説の主人公だなんてほんとどういう事って思ったけどさ。




 今日は定例の剣の稽古。


 ほら。あたしって魔法が使えない事になってるし、ね?


 身を守る為にもこういう剣の鍛錬は必要だからって父様が雇ってくださったのがこのエオリア。


 元々剣の心得のある彼女。生まれはどこかの騎士家の出らしいけど詳しいことは聞いてない。


 っていうか、元々そこまで考えてなかったし。


 ティム爺は一応父様が子供の頃からこの家に仕えている執事で文武両道、ボディガードも熟す達人だって設定だった。


 ここ、アレハンド家は代々この地方一帯を治めている領主の家系で、5年前天空からふわりふわりと堕ちてきたあたしを拾って育ててくれた恩人だ。


 天上界を追放されほんとにただただ泣きじゃくるあたしを優しく保護してくれたロディ父様とマリア母様には頭が上がらない。今では弟ルークが生まれた事だしあたしは身を引いてここの跡目もルークにちゃんと託さなきゃと思ってるけど父様母様はそんな弟とあたしを分け隔てなく可愛がってくれている。


 だからね。


 あたしの魔力特性値マギアスキルが実は無限大♾で魔法が際限なく使えるチートだなんて、彼らにバレるわけにはいかないよ。


 それでなくとも天から降りてきた神の使いだって風聴する者もいるくらいだから、バレたらまともに普通の生活なんか送れなくなる。


 あたしはこのままひっそりと暮らしつつルークが成人の折には身を引かなくちゃ、そう決めて。


 そもそもこのお話を書き始めてまだほんの少ししか経ってない頃までの記憶しか無いあたしにとって、この先の展開はぼんやりと決めていたプロットでしかなくて。


 それならそれで、まったりとこの第二の人生を楽しまなきゃ損。


 幸にもあたしの好みのど真ん中な美少年に生まれ変われたんだもん。頑張らなきゃね? そんな風に感じてた。

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