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ヒーロー×ブレイブ~世界を救った英雄は静かに暮らしたい~  作者: 橋藤 竜悟
第一章:帝国編 第一部四節 交錯の戦争
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35 踊る戦場

 轟音が空を割る。強い光が頭上を過ぎ、砦を攻撃していく。

 リベリアが誇る魔導連隊の遠距離魔法により攻略作戦が始まった。

 帝国は魔法研究が遅れている国であるため、大規模な魔法戦ができない。

 その点、リベリアは魔術戦略において他の追随を許さないほどリードしている。そこを生かし、魔法攻撃を絶え間なく行うことにより目くらましをしつつ歩兵を中央へ前進していくことになる。


 しかし相手も魔法にまったくの無策というわけでもなく、すぐさま魔法を減衰させる対策兵器を展開させ始めた。

 これはマグナイトの魔力吸収、保持効果を応用したもので、マグナイトを粉末状にし空間に散布させ、そこを通る魔法を吸収、減衰させる効果を作り出す。

 ようするにカインたちがロータスで使用した道具の広範囲版だ。

 しかしこの道具は使い捨てで高価なため、国同士での戦争でもない限りお目にかかれない。


 そのまま散発的に大型魔法が飛び交う。

 帝国も少ないながら魔法部隊を編成しているようで、カインたちがいる前線の周囲に着弾し爆発を起こす。


「このまま押し上げる!中央軍全速前進、敵を蹴散らせ!」


 ほぼ最前線にいるジェイドが声を上げる。

 部隊はほぼ駆け足での突撃状態に入っていた。


 その時、砦方面の空が濁る。


「弓だ!各自魔装具起動、防御魔法ではじききれ!――火よ、我を清めよ!前進速度を落とすなよっ!」


 いい終わると同時に矢の雨が到達する。空気を切り裂く音と、防御魔法を使っていても襲い来る衝撃にこれから起こる戦いの苛烈さを感じた。

 防御魔法の展開が遅れた数名が脱落するも、何とか敵最前線に食い込むことに成功する。


「ここからは戦だ!生き残ることを考えつつ死ににいけっ!――火焔よ、我が恐敵を灼き断て!」


 そのままジェイドは最前線に構えるファランクスへと突撃粉砕していく。


「こちらも予定通り進めるぞ!俺は呼びかけながら前線を強行横断する、その間の援護を任せる!」


「わかりました!ガンガン頼っちゃってください!」


「自分も遅れません!」


 フィードとジンに声をかけ、そのままジェイドがあけた穴に飛び込み、風の魔力に声を乗せて敵陣奥へ呼びかけていく。


「「救世の英雄『カイン・リジル』だ!トントでの借りを返しにきた、恐れを知らないものから向かって来い!俺は全てを迎え撃つ!!」」


 この呼びかけを受け、相手の前衛がどよめきうろたえる。

 リベリアに英雄がいることは知っていたが、こんな最前線にいるとは思ってみなかったのだろう。


 しかしそれだけで相手の勢いが止まるほど戦場は個人でできてはいない。

 こちらへ向かってくる剣や槍をさばきつつ、何度も呼びかけ続ける。


 やはり帝国軍の兵力は圧倒的だ。数も多ければ練度もいい、こちらの兵も魔装具で多少優位には立てているが連携から剣捌きまで技量なら帝国が上だ。

 俺は何とかなるが、味方の部隊がどれだけ保つかわからない。魔法部隊がガス欠になればそれで崩壊してしまいそうだ。

 なんとしてもユカリを引っ張り出し、短期決戦を見据えなければどうあっても勝利はない……!


「クソッ、ユカリ!聞いているんだろ!?お前が出てこないと犠牲が増えるんだよっ!」


「カイン様!?そこまでいうとまずいんじゃ……?」


 フィードがあわてているが知ったことじゃない。こちらも余裕がないんだ、この戦いはリベリアにとって実質決戦でもある。ここで勝てなければ明日はない。それに、恐らくユカリにはこの方が()()

 その時、騒がしい戦闘の中ではっきりと声が聞こえた。


「何が犠牲だ!それならあなた達が引けばいいでしょう!」


 ユカリの幼い声が響く。

 乱戦状態で姿は見えないが、来てくれたらしい。

 この調子でいけば何とか引きずりだせるか……?


「出てきてくれたな……!ジン、フィード、このままユカリを前線から離れた東側へ連れて行くぞ」


「わかりました!」


「ユカリッ!来ているのならこちらへ来い!お前の好きな犠牲のない戦場だ!!」


 呼びかけながら東へ移動していく、声を張るためどうしても目立ってしまいあまり移動は早くないが、ユカリたちにはまだ位置がバレていないようだ。

 敵を切り伏せながら移動を急ぎ、東へ抜けようとしたところ、

 立つ事がやっとなほどの突風が吹きつける。


「何があった……!?」


 途端に空が曇り、目に見えない何かが形を成していく。

 そこにいたのは龍だった。

 風の塊が龍の形を成していたのである。

 あれは何だ……?生物ではない、竜種はあのように外郭まで魔力で形成されていない。

 では魔法だというのか?それにしてもおかしい、あれはここに存在している感覚さえある……!


 その竜が帝国の魔力減衰フィールドをものともせず、リベリアの前線を襲う。

 龍が戦場を薙ぐだけで隊列は崩れ、兵が転げる。剣や槍は通らず、重い鎧を着ていようと平気で吹き飛ばされていた。

 リベリアの魔法連隊もコレに応戦しているが、中規模魔法では焼け石に水のように無力化できていない。

 このままではリベリアの前線が崩壊するのは目に見えている。


「どうなっているんだいったい……!」


 強い風に吹かれながら、巻き込まれないようにそのまま東側へ抜けきる。

 離れてみても全容がはっきりしない。これが魔法なのだとしたら、何人がかりで作っているのかもわからない。


「フィード!これは何だと思う?!」


 風が強く、声を張らなければ近くの人間とも会話できないほどだ。


「おそらく魔法だと思いますが見たことがありません!上級魔法でもここまでの規模は規格外ですよ!!」


 ここまで力として干渉してくる魔法を維持し続けれるとも思えないが、短時間でもアレが居続けるだけでこちらの損害は爆発的に増えていくだろう。


「そもそもあれは魔法なのか……?とりあえず魔法だとして、術者集団は特定できそうか!?」


「ここまで大きいと近くにいるはずです!なおかつ見渡せる場所となると限られますので何とか!」


「よし、フィードは闇魔法で何とか術者共に近づいて、これを妨害、できれば止めろ!ジンは俺と一緒にユカリを相手にする!」


「わかりました!」


「了解です!カイン様もご武運を!」


 そのままフィードは闇魔法を展開し戦場から離脱する。

 その時、空が光る。強烈な、太陽のごとき閃光が空を覆う龍を直撃した。

 それは竜を大きくひるませ、形が歪むほどのダメージを与えたが消し去るまでにはいかない。

 どうやらリベリア魔法連隊の総力を上げた攻撃がはじまったようだ。

 いままでの散発的な攻撃ではなく、維持している魔装具をかき集めてひとつに束ね参戦している魔法使い総動員により抵抗しているらしい。


 この攻撃により龍の攻撃は苛烈さを潜めたが、しかし依然として攻撃態勢は保っている。

 リベリア側も先ほどのような攻撃は乱発できるわけもなく、大きな攻撃は鳴りを潜め、細かい魔法での牽制を続け回復と様子見に回っているようだ。


 風の影響も和らぎ、何とか持ち直したところでユカリがカインに追いついた。


「やっと見つけました……!こんなところにまで来て僕に何の用ですか」


 どうやらこちらが呼び出したことは気がついていたらしい。

 その上で来てくれるのは元来の人の良さからなのか、それともこれ自体が相手にとっても意味があるのか。


「縁殿、あまり前に出ないよう。あの方相手に以前のように勝てるとも思えません」


 ユカリと一緒に来たクリスがユカリを制止する。

 図らずも話し合う土壌ができた。これはチャンスだ、俺もユカリとは戦いたくない。


「お前に対して用向きは数え切れないほどあるが、今回はこれだけを言いにきた。ユカリ、お前は帝国を抜けろ」

ゆかり君は来てくれました。

いい子なんですが、お前これでいいのか感がぬぐえませんね……。

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