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ヒーロー×ブレイブ~世界を救った英雄は静かに暮らしたい~  作者: 橋藤 竜悟
第一章:帝国編 第一部三節 死霧の町
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24 死霧の町

「なんで、死体が、動くっ!」


「見たことないですけどっ!あれがグールとかゾンビとかいうやつですか!?」


「いや違う!それだったら闇魔法の霧もお構いなく動いて襲われていたはずだ!」


「じゃあ何なんですかこれ!」


 リードを助けて家を出ると、いつの間にか町は白い霧に覆われ、その霧と共に倒れていた町の住人が一斉に動き始めた。

 彼らはグールなどのアンデッド系魔物のように緩慢に動きながら、確実にこちらとの距離を詰めてくる。

 そしていつの間にか、おびただしい数の死体に囲まれていたのだった。


 この死体どもはどうやらこちらに反応しているらしく、にじり寄ってきては腕を振り上げたり噛みついてきたりで攻撃してくる。

 小さい子供を保護している現状、下手に戦闘することは避けなければならない。


 何とかその囲いを突破するため、全力で拠点に向かいながら動く死体をいなしていく。

 リードはフィードが抱えている。どうやらしっかりつかまっていて大丈夫そうだ。


「ッ!――雷よ!」


 前方に動く死体の集団ができていていたが、マオがとっさに雷の矢を放ち三人程を吹き飛ばす。


「くそっ、どこから沸いてくるんだ!」


「おそらくコイツらこの町の人口分くらいはいるはずですよね?!対処なんて無理です!」


 場所によっては迂回しながらも何とか住宅南区から北区へ変わる大通りが見えた。

 そこは黒い壁のように霧が元の黒色へ戻っていることに気づく。


「入るぞ、気をつけろ!――光よ、我を守護する壁となせ!」


 俺はフィードに近づき、光魔法で皆まとめて強化する。

 すかさずマスクを押さえて確認し、そのまま大通りに突っ込んだ。


「ハァ、ハァ、ホントに、何が起こってるんだ」


「どうやら、あいつらからは、逃げ切れたみたいですね。音もきこえません」


 ジンも息が上がっている。戦いながら全速力で移動していたんだ。特に前衛の消耗が激しい。


「とりあえずこの娘のこともありますし、早く拠点に帰りましょう」


「……さんせい」


 後ろの二人はまだ余裕があるらしい。俺が一番消耗しているという事実が切ない。


「そうだな、この娘を外に出さないといけないわけだし、帰って話し合おう」


 拠点へ帰る途中には白い霧は現れず、時間はかかったが無事拠点へたどり着くことができた。


「いったいなんだったんだあれは。突然霧の色が変わったと思ったら死体が襲ってくるなんて……。グールの方がまだわかりやすいぞ」


「……たぶん、あれもまほう」


「は?」


「マオ、わかったんですか?」


「……かくしょうはない、けど……これできゅうしゅうできた」


 マオが腰についたポシェットから小さなマグナイト鉱石を出し、俺に渡してきた。


「……ひかりまほうをつかって」


「あ、あぁ。そういうことか?――光よ、我を祝福せよ」


 小さくマグナイト鉱石がひかり、体が軽くなる。


「クリスタルの魔力だけで使えたな」


「……やっぱり」


「え?どういうことです?」


 フィードが首をかしげている。


「つまり……しろいきりはひかりのまほう」


「ということは死体が起き上がった理由も大体予想がつく。霧を操る奴は闇の衰退と光の活性を霧として出せるということなんだろうよ」


「……たぶん」


「でも霧だけだと死体が動く理由にならないのではないですか?」


 ジンが聞いてくる。実際、光魔法に対照を意のままに操るなんて効果を出せる魔法はない。


「おそらく、町の住人は生物としては死んでいない」


「え?」


「これも確証はないが、黒い霧で精神を破壊されたうえ仮死状態になっているんだろう。そこを白い霧で活性化させてやると肉体は復調する。後はあらかじめ闇魔法でそれしか考えられなくなるような強い暗示を刷り込めば、人間と呼べない動く死体の完成ってところだろ」


「仮死状態ということはこの町の人は助かるんですか!?」


「命は、な。だがそんなことをされた精神は戻らない。もうアレは人間とは呼べないよ」


「そんな……。むごいことを」


 ジンが肩を落とす。

 魔人と戦うときはこういうわけのわからない事が度々あった。街がひとつ犠牲になるようなことも今回が初めてではなかったが、そのまま命を兵器として利用してくるとなると俺にも沸々と怒りがこみ上げる。


「とりあえずだ、霧のことはなんとなくわかったが、リードをどうするかだ。外に逃がすのが一番安全だが」


「ま、まって!姉さんを探してください!」


 焦ったようにリードが会話に割り込んできた。


「姉さんがまだ残っているんです!姉さんは領主さんの屋敷のメイドとして働いていて……きっとまだ生きています!それまで私はここを動きません!」


 必死に訴えるリード、しかし残念ながらその可能性が限りなく低いことはこの惨状から察しがつく。


「カイン様どうしますか?暴れる人間抱えてこの町を出るのも大変ですよ」


「……仕方ない、わかったよリード。次俺たちは町の中心部の捜索に出る。そのとき君のお姉さんを見つけれたらここまでつれてくる。見つからなかった場合は君一人でも町を無事に出てもらう、いいね?」


 それでもリードはあまり納得していないように目を伏せている。


「大丈夫だ。君が町を出た後も捜査は続ける。絶対君の姉さんを見つけ出してみせるさ」


 カインはリードの頭を優しくなでる。リードは聞き分けてくれたのか小さく頷いた。


「よし、まずお姉さんの特徴をできるだけ細かく教えてくれ。悪いがジンは拠点に残ってお姫様の護衛だ。中心部は俺とフィード、マオで調査する」


「わかりました。皆さんくれぐれも気をつけてくださいね」


 ジンが任せてくださいと胸に手を当てる。横ではフィードとマオがリードから細かに特徴を聞いていた。


「お前も何かあった時点で彼女と中和機を抱えて町を出ろ、リードの安全が最優先だ。拠点に誰もいないのを確認したら俺たちも町を出る」




 少し休憩した後、こちらで白い霧が発生したことを考え、拠点にしてる宿屋内から死体を撤去し、バリケードを作っておく。

 そのままジンたちと別れ、三人で町の中心部に向けて移動を始めた。

 先ほど調査していた住宅南区にはもう白い霧が出ていないようで、見通しの悪い黒い霧が広がっていた。


「この大通りを直進していくと領主の館と各行政施設、周囲に富裕層の屋敷や病院なんかの施設になっているようだな」


「カイン様が最初に言ってましたけど、そこに敵がいる可能性が高い理由は何です?」


 フィードが結構前の情報を質問してくる。


「あぁ、それは単純にこの霧の特性上そうだろうと踏んでいるだけだ。町が見渡せる高い建物が多い場所で、尚且つ町の中心地近くはかなり好立地だと思うしな」


「そ、それだけですか?」


「それだけだ。そんなもんなんだよ、実際」


 いろいろ策を巡らせてくる敵も確かにいたが、魔人族のように自分の力に自信があるものはその力を出し切るフィールドで戦おうとする。

 そうなるとこういった能力の場合途端にわかりやすくなってしまうのだ。


「そういうわけで、今はジンもいない。気を引き締めていくぞ」


 そのまま大通りを直進し、行政区に入る。町並みが変わり、大きな屋敷や建物が目立ち始める。

 住宅区と違い込み入った道がなく、綺麗に整備された町並みであることが人目でわかった。

 警戒する場所は少なかったが、黒い霧で視界が悪いため気を抜くことができない。


 すると突然視界が白く切り替わる。――あの霧だ。


「霧が変わった、気をつけろ!」


 周りから小さくうなり声が聞こえはじめる。


「右に三、正面に二、左に二です」


 フィードが即座に周囲を見る。いつも思うがどうやって敵の数を確認しているんだ……?


「あいつらは遅い、このまま正面突破で切り抜ける」


「……わかった」


 言うと共に正面に走りこむと、霧の中から二体の死体が現れた。生物として生きているとわかると攻撃し辛いが、こうなってしまっては仕方がない。そう心に言い聞かせる。


「恨んでくれるなよ……!」


 正面右側にいる死体の首を一撃ではねる。同時にフィードも左側にいた死体の心臓を貫いていた。

 そのまま死体は揺れるように倒れる。予想通り、ゾンビやグールなどと違って普通の人間と同じ急所のようだ。


「……まだくる」


「ええい、こいつら鬱陶しいな!」


 速くもなく、さほど機敏でもなく、考える知能もないようだがわらわらと大人数に詰め寄られるのはそれだけで脅威だ。


「マオ!水魔法で足止めを頼む!」


「……うん。――海よ、不浄なる者をこの地に鎮めよ」


 マオが魔法を展開すると、周囲の地面に冷気が降りる。

 瞬間、死体の足が凍りついた。


「……ながくもたない」


「今のうちだ!正面を蹴散らしながら一気に抜けるぞ!」


 前に佇む死体を切り捨て、進んでいく。すると、大きな柵が並んでいる区画が見えた。


「ここが領主の住んでいた館か。門は南側にある、走るぞ!」


 そのまま柵伝いに南下、その間も絶えず襲ってくる死体を掻い潜りながら門を捜す。


「門が見えました!」


「よし、フィーとマオは先に走って門を確保しろ、俺は足止めをする!――火焔よ、わが敵を灰燼に帰せ!」


 フィードとマオを先に走らせ、見送った後即座に魔法を展開、周囲に炎の渦を作る。

 魔術の霧のせいで思った以上に効果が出ないが、それでも周囲の死体は無力化できた。

 また死体が集まってくる前に門へ走る。門はフィードとマオに破壊され開け放たれていた。

 すぐさま中に転がるように駆け込んだ。


「無事か?フィード、マオ……」


 突然視界が開ける。霧が晴れた。

 いや、この場所だけ霧が晴れているのだ。


「どうしてここだけ……?」


「……」


 先に着いた二人も驚くと共に周囲を警戒している。

 すると屋敷の正面扉が開き、中から人が出てきた。

 いや、あれは只の人間じゃない。魔人族だ。見たところかなり若いようだが……。


「ようこそ人間」


 強烈な威圧感を放ちながら、魔人族の少女はこちらを睥睨(へいげい)した。


「……とエルフと獣人」


 青い肌、頭には二本の角、背中には小さな羽根と力強い尻尾が見える。その“悪魔”なような見た目から魔人族であることが容易にわかる。

 それと、どうやら律儀な性格らしい。


「挨拶もそこそこで悪いが、容赦なく死んでもらう。こんな町に入ってくる時点で貴様らはマトモではあるまい」


 言い切ると、彼女は手にした身の丈に合わない歪な斧槍のようなものをこちらに構えた。

ゾンビとは厳密に違いますが、似たようなものなのであまり気にしなくてもいいです。

この事件は戦争とは関係ないところで進んでいます。

ですが、それ以上にカインを悩ませる出来事でもあるので、もう少しお付き合いください。

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