1ー1 夢を見たい少女は騎士と出会う
処女作です!色々至らぬ所はありますが、ご容赦ください。
「リカ……私と一緒に来るか?」
そう言って、彼女は私に手を差し伸べた。
「リカを必要とする者はこの世にはもう居ない、だが今から私が帰る世界には必ずリカを必要とする者達が現れる。少なくとも私は君を必要としている、私は君を求めているんだ!」
彼女は更に言い募る、手を私に差し伸べながら。
私はこの世界で誰からも必要とされず、誰も自分のことを見てくれなかった。
そんな世界に絶望した、こんな世界を呪った、
夢の一つも見れないこの世界が大嫌いになった。
この世界で夢は見れない、希望も持てない、
だけど、彼女の世界なら?
私はもう一度希望を持てるかもしれない、夢を見れるかもしれない、自分を必要としてくれるかもしれない。
私が生きる世界は何もない、可能性すらも。
なら、答えは決まってる。
私は差し伸べられた手を取って、強く握りしめた。
いつも叶えたいと思っていて、でも諦めていた夢を叶える為に。
◆
「行ってきます。お父さん、お母さん」
少女は仏壇の前で手を合わせ朝の挨拶を済ませていた。仏壇には仲睦まじい夫婦の写真が飾られている。
仏壇の前にいる少女は、人形のように美しかった。腰に届く艶やかな黒髪は朝日を浴びて輝き、少女の肌は傷一つない陶磁器のように白く滑らかだ。そして、冷然として少々鋭い目だが、その瞳は新月の夜闇を切り抜いたかの如く綺麗で、吸い込まれるようである。
少女は立ち上がり、叔父に自分が学校に行く事を伝える為に隣の部屋へと向かった。
叔父の部屋の扉を開けると、部屋に充満していた酒の臭いが少女の顔を顰めさせる。
「叔父さん……また飲んだの?」
部屋は酒瓶やビール缶が机の上に山と積まれ、床には脱ぎ捨てられた衣服が散乱している。その他にも様々なゴミが放置されている状態だ。一言で言って、
汚部屋である。そんな部屋の主は少女の言葉を聞き大声をあげた。
「うるせえ!自分の家で何を飲もうと俺の勝手だろうが!ガキはさっさと学校にでも行ってろ!」
少女に大声を出したこの男の名前は花咲正志。少女の叔父にあたる男だ。
少女は正志の言葉に、相手が聞き取れない小さな声で、
「……ここは貴方の家じゃない」
と呟き家を出て行った。
正志はその態度に舌打ちをし、再度眠ろうとベットに横になった。
◆
花咲理華は万和日本生まれの普通の女子高生である。
彼女の人生は17年とまだまだだが、経験してきた事は辛いことばかりだ。
彼女は一年前の2089年に発生した関東大震災により、両親を失った。
その震災は確認されているだけでも死者千人以上にのぼり、多数の被害をもたらした。
その後、両親に先立たれて独りとなった理華を正志が引き取ったのである。理華の家庭は裕福で、理華が大学を卒業できる位の貯蓄があった。
だが、理華を引き取った正志がその貯蓄をギャンブルや酒に使うようになったことで、大学を受験する事すら危うくなってしまったのだ。
「最悪……自分の家って何よ、あの家はアイツの家なんかじゃない……!」
理華は正志への恨み言を言いながら、学校へと向かった。
◆
理華の数少ない癒しである、学校も終わりの鐘を告げた。放課後である。
部活は帰宅部の理華はどのコースで家に帰るか考えていた。家にはなるべく遅く帰りたい、下衆と同じ空気を吸いたくないのだ。
考えているうちに、ふと家族との思い出がよみがえった。小さい頃、両親と一緒に行った神社だ。
近所にある、そこまで大きくない神社。
境内に入るための長い階段で父と競争をして、負けて悔しかったのを覚えている。そこで家族がいつまでも一緒にいれらようにお参りした事も覚えてる。
ーーーその願いは叶わなかったけど。
「久し振りに行こうかな……」
随分と前に行ったきりになっていた神社は、驚く程変わっていなかった。
やがて、階段を上りきって境内に着くと、奇妙なことに気づく。神社が光を放っていたのだ。
「えっ!?!?」
驚いて、目をこすったらいつの間にか光は消えていた。
「なんだったんだろう?あの光は?」
理華は恐る恐る光っていた場所に近づくと、勢いよく扉が開かれて、中から何かが飛び出してきた。
「なっ!?なにっ!?」
飛び出してきたソレは大きな音を立てながら派手に転がり、ソレは理華の前で動きを止める。
飛び出してきたのは全身甲冑の騎士?だ。全身甲冑の不審者は呻き声を上げて、ゆっくりと体を起こそうとする。
騎士?は起き上がろうとするが、上手く力が入らないようである。
理華は騎士を前にして混乱して動けずにいた。そんな理華に気付いた騎士は震える手を前に出し、口を開いた。
「み……水をくれぇ…………」
コレが理華の人生を変える、騎士との出会いであった。
続きも読んでくれると嬉しいです!