初ブーストハイ?
先日発現した魔眼は、自分自身の鑑定も出来るようだった。名前や前世、スキルなどが分かるようだ。
《鑑定》
前野眞緒(前世:魔王ルカエディオ)
【魔奪吸β】【魔即変換β】【魔眼β】
魔眼以外にもスキルが既にあった事に驚く。気付かないうちに発現していた訳だ。スキルを認識出来るようになったのは、魔眼のおかげなんだろう。魔眼が最後に並んでいるところを見ると、獲得した順番なのか。
【魔奪吸β】丸飲みが可能。また、即座にエネルギー獲得可能。
【魔即変換β】魔奪吸で得たエネルギーを即座に代替物へ変換可能。
魔奪吸は、魔力を丸飲みにするスキルで、魔即変換は、丸飲みにした魔力を自分の魔力等に変換するスキルと認識している。人間に置き換えるなら、ものすごい摂取消化に吸収代謝。魔奪吸は早食いが出来るスキルで、魔即変換は大食いが出来るスキルと言ったところか。可愛らしいレベルに劣化している。だが、前世のスキルがそのままに今世で発現されてしまったら、核爆弾的存在になってしまうだろうから、そのくらいが丁度いいのか。以前ならば、魔奪吸による種族無差別の枯渇死や魔即変換による超級魔法の連投などもあり得たものだ。もっと訳が悪いかもしれない。
それにしても、読み取れる情報が少ないのはつまらないな。どれだけ集中しても、得られる情報が増える事はなかった。
グゥ
「腹減った」
考え事をすると、腹が減る。何か食べる事にしよう。
自室から出ると、リビングでジンが誰かとスカイプをしているのが見えた。
テーブルにはゴリラリザイの瓶がいくつも並んでる。こいつ、こんなもんよく飲めんな。ポーションにブラックオーガの生き血を混ぜて、薄めて、甘くしたのを炭酸で割ったみてぇなドリンク、何が嬉しくて飲むのか。中毒性でもあんのか?臭ぇだろ。
「誰と話してんだ」
「えっ?あ、マオマオ。今ねー、スイーツ企画の打ち合わせー。もう終わったけど」
『あ、マオマオさんですか。お世話になりますー』
「あ?」
ノートパソコンから聞こえる声に、思わず反応した。世話をした覚えはねぇ。するつもりもねぇ。
「マオマオ、この人が今度スイーツいっぱい用意してくれるんだから、ちゃんと挨拶しないとダメだよ」
「スイーツ?」
『オードーメテンプさんの次の企画、コンビニスイーツの大食い食べ較べ。私どものところで開発させて頂いた物を提供致しますので』
「あ」
ぶっちゃけ、忘れていた。
そもそも、レアチーズケーキを満足に食べられなかったがために、企画を提案したものの。ジンが用意していたそれに満足してしまったから、何の未練も執着も無くなっていた。
「それは…どうも」
「夏のスイーツだと準備で時期ずれちゃうから、秋スイーツにする予定だよ。マオマオ、かぼちゃプリンとかスイートポテトとか好きっしょ?楽しみにしてて!」
『今回は、若者向けの広告についての調査も兼ねて開発してますので。期待してください』
「映えってやつね、これはユーチューバーとしてもありがたいよねー」
「お、おぉ」
満足に食べられなかったレアチーズケーキが発端だとは、最早言えない。
魔法陣作成に凝りすぎて連徹した時の「(俺を)眠らせろ」発言を部下が喜んで「(邪魔する人間を永遠に)眠らせろ」と拡大解釈して皇国1つ潰しちまった時の気まずさな。あれに似てる。まあ、あの国は腐りきってたから、人間にとっても害だったとは思うが。
「楽しみに、してる」
としか言い様がない。
『頑張らせて頂きますので』
「マオマオ、偉そうですみませんー。でも、ここまで言うのは珍しいから、本当に楽しみにしてると思うんで、大目に見てやってください。詳しい日程については、またメールください。お願いしまーす」
『承知致しました。こちらこそ、宜しくお願い致します』
スカイプが終了した。気まずさは拭えないが、俺の突発的な思いつきにも関わらず、対応が早い。最近のジンの手際の良さには感心する。
…ん?
【魔酔支配β】カリスマ化効果あり。一定数の対象を惹き付ける事が可能。また、支配下にあるものの能力を20%上昇させる。
おっと、これ…大丈夫なスキルか?発現条件は相変わらず不明だが、このスキルは確か、後天的に得たものだったはず。って事は、前世で持っていたスキルは全て発現可能性ありって事か。俺の要望如何に関係なく発現する辺りも、困ったもんだな。まあ、悪用しなけりゃそんでいいか。俺も丸くなったもんだ。日本が平和で飯が美味い国だと言う証拠だな。魔王だった俺が言うのも何だが、いい国だ。
「仕事したら、腹減ったー。マオマオ、何か頼む?オレ、ラーメンな気分なんだけど」
「いいな、それ」
「壱斑のグループで、高級ラーメンやるようになったらしいんだよね。それ食べてみたいなー」
「高級ラーメン?」
美味いのか?
「出前もやってくれるんだよ!そんで、海外セレブの間で人気が出てきてて、逆輸入的な感じで日本でも始まったんだけど、結構評判いいみたい」
相変わらず、壱斑家はすげぇな。ボンボンだとは思ってたが、生粋のボンボンなんだもんな。何でこいつ、俺と同じ大学通ってんだ?
「…それ、今頼めんのか?」
「わっかんない。オレの思いつき」
じゃあ、無理だろ。
「でもせっかく頼むなら、撮りたいよねー…。絵になると思うんだよねー。ちょっと交渉してみよっかな」
ジンはそう言うと、スマホで電話をしだした。英語だ。割と流暢で、驚いた。
数分後。
「すぐには無理だってー。どうする?」
「頼めんのかよ」
「オレ、一応御曹司だからーっつってね」
ジンは嬉しそうに笑った。
あ。俺のスキル関係してんのか?
☆☆☆
「今、開発中のはデコデコのパンプキンタワーケーキが目玉で、あとは堅く、スイートポテトに、和栗あんのどら焼き?って感じですかね」
『そうですね、ケーキについてはコンビニ搬入陳列出来るぎりぎりまで大きくする予定です』
「それ、話題になりそうですねー」
『スイートポテトは、今人気のアニメとコラボします。デザインは全10種。パッケージは中身が見えないようになっていて、シークレットデザインも用意する予定です』
「推しを探すタイプのお菓子だ。楽しそうだけど、これ炎上しないかなー」
『炎上ですか。キャラクターそのものでなく、イメージモチーフになっているので、そこまでと踏んでいるのですが』
「なるほど。じゃあ、大丈夫、なのかな。ちなみに何のアニメなんですか?」
『申し訳ありません、そこはまだ言えないんです』
「あ、すみません。気軽に聞いちゃって。オレもライトオタクだから、気になっちゃって。それで、どら焼きは?」
『京都老舗の和菓子職人監修で作る予定です。実は1番力を入れてるのがこれなんですよ。材料にもかなり凝ってまして』
「おー。高級感出してるやつですね。了解です。じゃあ、この3つで映し方考えます」
マオマオが前に提案したコンビニスイーツ企画は順調に進んでる。じいちゃんの部下の人と話を詰めていて、かなり現実味帯びてきた。ワクワクする。
ガチャ
「誰と話してんだ」
「えっ?あ、マオマオ。今ねー、スイーツ企画の打ち合わせー。もう終わったけど」
『あ、マオマオさんですか。お世話になりますー』
「あ?」
マオマオ、顔と声。怪訝にしすぎ。
「マオマオ、この人が今度スイーツいっぱい用意してくれるんだから、ちゃんと挨拶しないとダメだよ」
「スイーツ?」
『オードーメテンプさんの次の企画、コンビニスイーツの大食い食べ較べ。私のところで開発させて頂いた物を提供致しますので』
「あ」
気まずそうにしてる。さすがに失礼って分かったかな。
「それは…どうも」
「夏のスイーツだと準備で時期ずれちゃうから、秋スイーツにする予定だよ。マオマオ、かぼちゃプリンとかスイートポテトとか好きっしょ?楽しみにしてて!」
『今回は、若者向けの広告についての調査も兼ねて開発してますので。期待してください』
「映えってやつね、これはユーチューバーとしてもありがたいよねー」
「お、おぉ」
あとは、マオマオがどれだけ楽しみにしてるかなんだけど。
「楽しみに、してる」
お、そんな事言うなんて本当珍しい。テンション低いように見えるけど、意外にノリノリなのかな。
『頑張らせて頂きますので』
「マオマオ、偉そうですみませんー。でも、ここまで言うのは珍しいから、本当に楽しみにしてると思うんで、大目に見てやってください。詳しい日程については、またメールください。お願いしまーす」
『承知致しました。こちらこそ、宜しくお願い致します』
スカイプが終わると、一仕事終えた感じがして、達成感。
ぐぅ
そういや、朝からゴリラリザイしか飲んでない。企画編集の友、ゴリラリザイ。薬品臭さが堪んないよね。この無駄にハイな感じもその所為かな。カフェイン摂取しすぎ?
「仕事したら、腹減ったー。マオマオ、何か頼む?オレ、ラーメンな気分なんだけど」
「いいな、それ」
そういえば。
「壱斑のグループで、高級ラーメンやるようになったらしいんだよね。それ食べてみたいなー」
「高級ラーメン?」
「出前もやってくれるんだよ!そんで、海外セレブの間で人気が出てきてて、逆輸入的な感じで日本でも始まったんだけど、結構評判いいみたい」
ちょっと気になるんだよね。
「…それ、今頼めんのか?」
「わっかんない。オレの思いつき」
頼めるといいなーってくらいなんだけど…。
「でもせっかく頼むなら、撮りたいよねー…。絵になると思うんだよねー。ちょっと交渉してみよっかな」
まず、本店の方の責任者に電話。実は、この人とアメリカの方の大学で一緒だったから仲良いんだよね。飛び級で色んな大学行ったから、どの大学だったか覚えてないんだけど。日本文化大好きで、食べっぷりも気持ち良かった。縁あって、壱斑グループに入ったみたいだけど、オレは何にも関係していないし、きっと優秀なんだろうなー。
簡単に近況報告したら、ユーチューブの事知ってた。嬉しいね。しかも、出前の事も撮影の事も快諾してくれた。トントン拍子で怖いくらい。
「すぐには無理だってー。どうする?」
「頼めんのかよ」
「オレ、一応御曹司だからーっつってね」
マオマオが驚いた顔で俺を見た。ちょっと気分いいな。
* **
1時間後、来た。
カメラを構えてたら、ラーメンじゃなくて、ラーメンを作る人と機材と食材が来た。出前ってそういう事かー。オレが思ってんのとかなり違うわー。ま、いっか。映えする、映え。
無駄に広いと思ってたリビングも、今回は役に立った。搬入されてきた機材、全部置けたし。で、ラーメンについては、確かに美味しかった。スープは濃厚だし、でも脂っぽくなくて、麺も美味いし。あと、チャーシューが馬鹿みたいに美味かった。脂身部分はプルプルしてて、お肉はジューシー。マオマオ、結構気に入ったのか、7杯も食べてた。材料なくなって、終わっちゃったけど。
搬入から調理、食事までで、結構な尺になったな…。話題になりそうだし、こういうのはスピードが大事だよね。早速編集、編集。頑張るぞー。