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自称勇者じゃないです!



よし、演技を続けよう!


そう開き直ったアルノは、か弱い少年を演じる。


「…え?」


戸惑った声に、キョロキョロと視線を迷わす少年、アルノはまさにか弱い少年である。

場違い感が漂うがそんなのは、どうでもいい。

この演技で魔王達が騙されてくれるなら、問題ないからだ。


「…おい、自称勇者。」


魔王バルデロがオロオロと戸惑う少年アルノに声を掛けた。

しかし、固まったままのアルノ。


…は?


俺が、自称勇者、…だと!?


俺は別に自分で勇者と名乗った覚えはない。それどころか、村人によって勇者に仕立てあげられただけなのだ。


それを、自称だと…


「ふざけんなよっ…」


ボソッと呟かれたアルノの言葉は、誰の耳にも入ることは無かった。


しかし、アルノの怒りのオーラに、近くにいた者達が、反応し何が起きたのかと困惑する。


その中には、魔王バルデロも入っており、


魔王バルデロは、何故魔力も持たない勇者のなりそこないが、魔王である自分までも反応するようなオーラを放てるのかと、困惑の表情は出さないが、固まっていた。



そして、周りが固まってしまったのを見たアルノが、自分が思わずオーラを放ってしまったことに気づいた。


やべー、ここは演技して何とか乗り切るしかないな。



「ゆ、ゆうしゃ?ゆうしゃって、勇者?え、僕が自称…へ?」



意味がわからないといった風に、こちらも困惑する演技をする。

だって、自称じゃないもん!

だから、訂正できるチャンスを与えてやろうじゃないか!



「あぁ、そうだ。お前は自称勇者だ。」



…この魔王は馬鹿なのか?


せっかく訂正できるチャンスをやったと言うのに!


自称の意味も知らないのか?


イラッとしたがまた怒りのオーラを出せば演技がバレる可能性がある。


ここは抑えて抑えて。抑えるんだ俺!



そして、空気を読めない魔王は言う。



「自称勇者、俺が誰かわかるか?」



「…わ、わかりません。」



当然だ、平凡村に生まれた平凡な一般人が魔王の顔を知ってるわけなかろうが!



「………。」



しかし、帰ってきたのは沈黙。



ん?


何故沈黙?


え、だって知るわけないじゃん!

え、なに?


知ってるとでも思ったの?


本当の馬鹿なの?


あんた本当に最強魔王のバルデロかよ…



こんな、馬鹿だったなんて(笑)


ギャップ狙ってんのかな?


それは僕と被るからヤ・メ・ロ・よ?



「おい、ハーザン。此奴を連れ出せ。」



そう言い放つ魔王バルデロ。


もしかしなくても、此奴とは、ボクかな?


おいおい、大事な魔王になれる器を捨てるとはお前は本当に馬鹿だったようだな、バルデロ。



「お、お待ち下さい!バルデロ様!この、自称勇者は、大切な魔王の器を持つものなのですよ!?この後、この者を捨てたら、次いつ器たるものが現れるかわからないのに、今ここでこの者を捨てるという判断をするには早すぎやしませんか!?」


おぉ…、どうやら配下の方が優秀な頭をお持ちのようで!


ただ、自称勇者と言ったことはいつか後悔させてやる。


ふふふ…


そう頭の中で考えつつも、アルノは同時に演技を続ける。



「ば、ば…ばばばるでろ?それって、大魔王バルデロ?…っ!?」



自分が今、目の前にいる悪魔が大魔王バルデロである事を気づいたように見せるため、腰を抜かしたように見せて、床に座り込んだ。



「ほぅ、名前は知っていたか。」



ふーんと言った感じであまり興味無さそうだ。

興味なくていいから、あんまり上から見下さないでくれる?


馬鹿に見下されるとわかったら、無性に腹が立って仕方ないんだ。


頭の中とは逆に演技は続く。



「な、なんでっ…魔王が…っ!??!?」



ビクビクと怯えて座ったまま、後ろへと後ずさる。

すると、肩は壁に当たる。


同然だ、ここは場内、壁がある。


泣きそうな顔と声。


まさにか弱き少年を演じるアルノに、魔王とその幹部達、また、この場にいる配下達全員が騙されたのを確認し、アルノは、自分の計画が上手くいったと思っていた。


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