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第5話 激怒のアイリーンと反省した僕

 まだだ。まだ涙が止まらないよう。うう。僕は絶対にバルドさんみたいになるんだ。確かに口は悪いけど根はいい人なんだ。それを知っている僕は裏路地の鑑定屋に戻ってきていた。さぁ。中に入ろう。そしてアイリーンさんに褒められるんだ。グフフ。


「ただいまー」


 へ? 扉を開けた途端になんだか嫌な予感がした。恐る恐る入ると中にはなぜか両頬を膨らませて両腕を組んでいるアイリーンさんがいた。なんだろう? 直立不動っぷりも美しいな。って! そんなことよりもどうしたんだろう? この空気は。


「リディ君? ただいまーじゃないでしょ!? 大体ね! 君はね! いつもそうやって生きていくつもりなの!?」


 なんだか急に怒られた~。うへぇ? 僕は……僕は……褒められにきたのにな~。ぐすん。違う意味の涙が出てきそうだった。人に優しくしたらきっと逆手に取られてやられるだけなんだ~。きっとぉ~。はぁ。トラウマってこういうことを言うんだな。


「……心配したんだから」


 え? ……なんだろう。ここは謝るべきのような気がしてたよぉう。扉が閉まる音と同時に僕の扉も閉まりそうだった。


「ご、ごめんなさい。ちょっとでも恩返ししようとしました~」


 うう。なんでなんだろう? なんで僕はこんなにも涙脆いんだろう。


「ふぅー。恩返しよりも先に身の保全を優先させるべきでしょ? リディ君。君はそんな格好で冒険するのかい」


 え? 僕は自分の格好を見てみた。確かに冒険者というよりはただの村人に見えた。


「それに君は武器も持っていないじゃないか。それでどうやって戦うつもり?」


 え? 武器なら……こうして。って出ない。魔力剣が出ない。どうしてなんだろう?


「ふぅー。魔力剣か。それも一つの方法だろうけど……君にはまだ早いよ。絶対に。大体、君の魔力はどれくらいなの?」


 うう。確か僕は既に計測済みだから。ここは。


「Gです。Gだったと思います」


 Gってどれくらいなんだろう? 分かんないや。うう。


「はぁー。最底辺じゃないか。いいかい。リディ君。私に恩返しをしたいのは分かる。でもね。いくらなんでも無茶は駄目だよ。絶対に」


 え? そうなの? Gって。そうなんだ。ということは今の僕は出来損ないなんだ。うう。


「先に言えばね。魔力剣は自分自身の魔力と引き換えに出現させ続けれるんだ。つまり……膨大な魔力を保持した人が得意げに使う物なの。分かった? リディ君」


 はぁ~。そうなんだ。僕は最底辺のリディなんだ~。うう。悲しいけれど受け入れよう。だからここは。


「分かりました~。次からは気をつけます~」


 うう。本当は褒められたかった。でも……アイリーンさんに一理あった。これからは身の保全に勤めようっと。


「うん。それでよし。それじゃあリディ君。これを……受け取りなよ」


 ううん? アイリーンさんが僕の元まできてはクシャクシャになってしまった券をくれた。きっと怒りの余りに握ってしまったのだろう。にしても……なんの券なんだろう?


「それはね。鉄クラスの武器と防具の引換券だよ。なんと一枚で交換可能なんだ。高いんだけどね。君の今後の成長に期待してあげるよ」


 うへぇ~。そんないい券を貰っちゃってもいいのかな~。あーでも期待されている以上は貰っていた方がいいような気も~。


「なんだい? 凄く複雑そうな表情だね? リディ君。なんなら返してくれてもいいんだよ? 引換券を」

「いいえ! 有り難く受け取らせて下さい! アイリーンさん!」


 僕は両瞼を閉じて懸命に言った。恐る恐る力を抜き両瞼を開けるとなんだかにこやかなアイリーンさんが立っていた。


「フフ。そうこなくっちゃあね! リディ君! それじゃあさっさと向かおうか。武具屋に」

「いいんですか? お店を閉めることになりますよ? アイリーンさん」


 お店を閉めたら困るんじゃあ? お客様とか……さ。あーでも僕には武具屋がどこかなんて分かんないや。連れて行ってくれないと困るよね。絶対に。


「いいの。いいの。むしろ……リディ君の活躍の方が見たいかな~なんて」


 うほ!? ぼ、僕の活躍ぅうう!? こ、これはアイリーンさんからの愛の告白!? ってそんなことないよね。むしろこれで浮かれてたらどん引きされそうだな。だからここは。


「僕の活躍ですか。頑張って成長します! アイリーンさん!」

「うん! んじゃあ行こうか。リディ君」

「はい! アイリーンさん!」


 こうして僕とアイリーンさんはなんとか仲が元に戻り武具屋に向かうことにした。うん。僕はドキドキしていた。これから武具屋に行って一式揃えてそれから本格的な冒険が出来るのだから。

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