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第3話 魔力剣の消滅と大猪との決着

 急に森の主こと大猪と戦うことになった。しかも隣りには謎の男ことおっさんがいた。なんでも大猪を撃退するのに共闘してくれだとか。はぁ~。なんだか。大変なことに巻き込まれました。


「おい! くるぞ!」


 確かに大猪は息をかなり荒げながら地面を蹴り飛ばしてはこっちに突っ込んできた。っておっさんがここでまたいなくなるなんてこと……あるかも知れない。だからここは。


「あの! 僕を囮にしないで下さい!」


 これくらいに強く言えばいいかな。じゃないと本当にされそうだもんな。


「ちぃっ!」


 あ! これは絶対にする気だった反応だ! あー絶対にしてほしくない!


「ならよ!」


 なんだ? 魔法銃だっけ? おっさんがそれになにかを詰め始めた。うん? なにをしたんだ? 一体?


「これでも喰らいやがれ!」


 なにかと思いきや片手で持っている魔法銃を両手で持ち狙いを大猪に向けた。え? それって……。


「だ」


 駄目ですよ! と言おうとしたら時既に遅く大猪目掛けてなにかが連続で発射された。僕はもう見てられないと目を逸らした。次の瞬間だった。なにかを抉るような音が連続と大猪の悲鳴が聞こえたのは。


「え? 死んだ?」


 そう僕が言いながら恐る恐る両目を大猪に向けてみた。すると大猪の姿はなかった。慌てて見渡すと真っ直ぐから綺麗な曲がりっぷりを見せていた。なんだろう。これは多分だけどおっさんは地面に向けてなにかを発射したんだと思う。


「だれが殺すか。それよりも今の内だ。バラバラになるぞ」


 確かに今ならバラバラに行動が出来そう。ただ今はまだ逃げるには早そうだな。


「おい! 耽っている場合じゃない! やるぞ!」


 おっさんはそう言い残すと遠ざかっていった。仕方がないので僕も移動を開始した。……って! 移動した先に大猪がいるんじゃあ? あ……いた。大猪は戻ってきていた。はは。移動が出来ないや。


「ちぃっ!」


 茂みに隠れたおっさんは舌打ちを……って! また僕を囮にするつもりですか! 貴方は!? なんて最低な人なんだ。これはリアスより酷いな。ああ。にしてもどうしよう? バラバラ作戦は失敗だ。


 ど、どうしよう? 大猪は僕と目線を合わせた後に相変わらず凄い鼻息を吹き出しながら地面を蹴り抉った。さらに興奮している時の鳴き声が聞こえた。と次の瞬間に大猪は僕目掛けて突っ込んできた。


 や、やばい。ここはとりあえず魔力剣をしっかりと前に構えないとな。で、でもその後が分からない。そもそも今の僕に大猪の追従力を避けるだけの力はない。それくらいに今は能力が低いと思った。


 うーん。かと言って自ら突っ込む勇気もない。だ、駄目だ。どんどん近付いてくる。そもそも僕は剣技すらも習得していないんだ。このままだと一方的にやられて死を迎えるだけだ。く。そんなの嫌だ。


 ああ。だれか。助けて。肝心のおっさんを気にする余裕はないし奇跡は二度も起きないと思うタイプだ。……いや。違うんだ。本当は……本当は奇跡は他人に委ねる物じゃないんだ。だからここは。


 下を向いていた僕は大猪を睨み付けた。効果はないけれどそれでもいいんだ。こうなったら駄目元でやってやる。そうだ。すれ違う一瞬を狙う。そんな神技が僕に出来るのだろうか。いや。してみせる!


「え?」


 忽然と消えていく魔力剣。そ、そんなぁ!? ここからだって時に! なんで!? なんで!? なんで!? なんでこうなっちゃうんだよぉおお! 駄目だよ。もう……ああ。短い人生だった。


「諦めるな! リディ!」


 え? おっさんの声? そんな思いになった途端に僕はだれかに突き飛ばされた。あの声は確かおっさんだった筈だ。と、言うことは。


「これでも喰らえ!」


 またおっさんの声がした。僕は慌てておっさんと大猪が視界に入るように見た。するとおっさんの魔法銃から紐よりも頑丈そうな鉄色の線が出ていた。その線は大猪目掛けて放たれた。そして当たった瞬間。


 大猪はその場で崩れ去った。なんだろう? 一体……なにが起きたんだろう? 分かんないや。ただ言えることは大猪はもう突っ込んでこないと言うことだ。これって……勝ったのかな。そうで……あってほしい。


「まだだ!」


 え? おっさん? って! よくよく見ると大猪が立ち上がろうとしていた。最後の力を振り絞ろうとしているように見えた。あ……まだなら早く魔力剣を出さないと。……あれ? あれれ? 出ない。どうしてなんだ?


「雷魔法! ショートショット!」


 うん? おっさんが詠唱魔法をした? と次の瞬間に大猪は悲鳴をあげながら横転した。うへ? なにこれ? どうなってるのこれ? 僕が混乱しているとおっさんは線を魔法銃に戻し始めた。どうやら自動で戻るようだ。


 静かに大猪に眼をやる。すると大猪はあれから全く動かなくなった。し、死んではいないよね? ま、まさか。そんな苦肉な策にはなっていないよね? 大丈夫だよね? 罰金金貨十二枚なんて僕にはとても払えないよ。


「そんな顔をするなよな。なぁあに……安心しろよ。あいつは気を失っただけさ」

「え? おっさん? それ本当なの?」


 間髪入れずにおっさんに訊いてみた。するとこれまた間髪入れずに返事がきた。


「ああ。……って口の悪い餓鬼だな。俺には……。たっくよ。そう言えば自己紹介がまだだったな。俺の名は……バルド。これから会う度にバルド様と呼べ」


 うへぇ~。本当に自分のことを様呼ばわりする人がいるんだぁ~。不思議な感覚だな~。


「おほん! 聴いてるのか! リディ!」

「あ! はい! 聴いてます!」


 あ……口と体が無意識に動いた。今の僕は敬礼こそしていないけどどこかの軍の人みたいだ。


「よろしい! ……ところでリディ。お前はここでなにをしているんだ?」


 バルドさんは遂に僕がここでなにをしているのかを問いただし始めた。なにをってただ単に薬草集め……を。


「って! すっかり忘れてたぁああ!」

「うん? なにをだ?」


 バルドさんには関係がないけど僕は……僕はぁああ。


「薬草集めをしてました」


 ま。でもまだ時間があるよね。ここで焦った方が損だよね。きっとぉおお。


「薬草集めか。と言うことはお前は冒険者に成り立てか。どおりでどん臭い訳だぜ」


 あーこのおっさんも口が悪い。むしろ。似てしまったのではないでしょうか。にしてもこれだけは言いたい。


「僕はリディです。お前じゃありません。あとどん臭くてすみません」


 く。そこまで言うのならおっさんはどれくらい偉いんだ。ここは見ておこう。……うげ! 銀だ。うん? いや? 銀だよね? 白銀な訳ないよね? ねぇ!? ねぇええ!?


「おいおい。そんなジロジロみんなよ。恥ずかしいだろうが」


 ……完全に分かっていたことだけど僕の敗北だ。うん。ここは潔く謝っておこう。そうだ。それがいい。


「あの! バルドさん!」

「なんだよ? 急に改まって」


 癪だけど謝るしかなさそうだ。ここは。


「銀とは知らずにすみません! これからは気をつけます!」

「ああ。そうだな。気をつけるべきだな。ところで俺は色々と忙しいからそろそろ猪から剥ぎ取らせていただくぜ」


 え? なにを剥ぎ取るんだ? ここは訊いて見よう。


「あの! バルドさん! なにを剥ぎ取るんですか!」

「それはな。大きな牙を二個だ。猪の牙を二個一つで一括りにされてだな。特別価格の銅七枚だぜ」


 割に合うのかな~。それって。


「おう? 今……お前は割に合うのかな~って思ったか。俺は猪の異常な繁殖力をちょっとでも制止しようと銀なのに協力してやってんだぜ」

「どうしてですか。銀なら別の仕事をすればいいんじゃないんですか」


 はぁ~とバルドさんが溜め息を付き始めた。その頃にはバルドさんは猪の元に辿り着いていた。


「いいか。猪は放置すると大きくなる。と言うことは物資を運搬する隊が大変なことになるんだよ。それにな。猪は作物を荒らす常習犯だ。残念だが減らすしかねぇ」


 バルドさんはそう言いながら猪の大きな牙に手を掛けて切り始めた。切るだけでも気が折れそうだ。とそれよりも僕は……と。


「んじゃあ僕は……薬草探ししますね!」


 だけどここからは離れた方がよさそうだな。大猪が目覚めたら厄介だ。こうして僕とバルドさんはバラバラに行動し始めた。僕は危険がないところに行き薬草を三束見つけた頃には既に三時間が過ぎていた。

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