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第2話 初めての魔力剣と猪との戦い

 近場の森って言っても色んな危険がある。その中で一番の宿敵になりそうなのが猪だ。もちろん。猪以外にも蛇などもいる。僕はこう見えても知識はある方なんだ。


 と嫌なフラグを立てるのはやめてさっさと薬草を探そう。薬草は比較的に見つけ易い筈だ。それに確かこの辺には毒草がなかった筈だ。だから安心して取れる筈なんだ。


 ちなみに薬草は来たばかりだから一束もない。うーん。この辺にあると思うんだけどな。眼をよく凝らして見れば……あると思ったんだけどな。もしかしてこの茂みの奥かな。


 僕はそう思い恐る恐る茂みに近付いていった。その瞬間。茂みからなにかが跳びだしてきた。僕は避けることが出来ずに尻餅を付いた。しかし謎の物体の方が僕を跳び越えて避けた。


 なにやら後ろで息が荒い生き物がいる……と気付いた僕は無様な格好のまま慌てて振り向いた。そこにいたのは猪だった。しかも極度の興奮状態で今すぐにでも僕に襲い掛かってきそうだった。


 僕は慌てて立ち上がった。猪と言えば猪突猛進だ。僕の感通りに猪は息を荒げながら足を地面に力強く擦り付けては突っ込んできた。やばい。避ける自信がない。ど、どうしよう。


 あ……そうだ。ここは魔力剣の出番だ。魔力剣は魔力で構成された剣だけど物理攻撃も出来る。それだ! ってさっさとしないと喰らっちゃう! 僕はすぐさまに魔力剣を出現させた。


 やった! 初めての魔力剣だぁ! 成功したって言ってる場合じゃない! ここは……これだ! 僕はそう思いながらすぐさまに魔力剣で地面を勢いよく切りつけた。砂が猪を襲う。


 すると多分砂が猪の目に入り猪は凄まじい勢いで獲物を見失ったかのように僕から外れていった。相当に痛かったんだろう。僕ですら戦えずに痛い! と言ってしまいそうだ。にしても。


「はぁ。助かった」


 僕が安堵した束の間に猪とは違う方向からなにかが出てきた。うは。また猪かな。そう思いながらも僕は魔力剣を構えながらなにかの方に向いた。


「おっと! 俺は人間だ! 敵じゃねぇ!」


 人間か。でも盗賊かも知れない。ここは用心しなくっちゃ。


「僕の名はリディ! 貴方はだれですか!」


 僕が魔力剣を構えたまま早口で言った。まだまだ信用が出来ていないから。


「俺の名かぁ。俺の名は……」


 謎の男を遮るようになにかが鳴きながら出てきた。く。さっきの猪かも。僕は両方に警戒した。すると出てきたのは猪だった。


「おい! そこの餓鬼! 俺の獲物だぞ? そいつは?」

「なら早く倒してくださいよ!?」


 あ……咄嗟に言ってしまった。やばいな。喧嘩にならなきゃいいけど。


「なに? ……ちぃ。おい! お前! 俺に手を貸せ!」


 ほ。あ……でも手を貸しても大丈夫なんだろうか。不安がよぎる。


「どうして」


 僕がどうしてですか! と言おうとしたら猪は待ってくれなかった。猪を見ると興奮が最高潮に達しているのか一回の息遣いが聞こえた。猪が……くる。


「なんでもいいから手伝え!」


 謎の男が言い終わったと同時に猪が突っ込んできた。どっちだ。どっちにくる? 今じゃ分からない。は! 謎の男は? い、いない!? と言う事は。


 やばい! 僕の方にくる! く。ここはもう一度の砂掛けだ。僕はタイミングを見計らい猪に対して砂掛けをした。……あれ? 効いてない!? ま、まさか!


「学習した!?」


 そうだ。きっと砂が目に入る前に両瞼を閉じたんだ。きっと。そうに違いない。だとしたら……や、やばい。このままだとぶつかる!? く。今更避けようがない。


 この時の僕は最悪なパターンを想像した。ああ。折角アイリーンさんと出逢えたのに。僕の人生はここで終わるんだ。僕は……そっと両瞼を閉じた。とその瞬間。どこからか。なんかの音がした。


「おい! なにしてやがる!」


 え? うん? 恐る恐る両瞼を開けると目の前にいた筈の猪がいなくなっている。見渡すと猪がまた方向を見失って木の近くで倒れ込んでいた。なにが起きたんだろう?


「へへ。なにが起きたのかって顔だな」

「え?」


 読心術? なんだ? なんだ? やや混乱していると謎の男がどんどんこっちいくる。挙句の果てには軽く伸ばせば手の平が見える距離まできていた。


「実はな。ほら……これみろ」


 あんまり興味なかったけど謎の男は手になにかを持っていた。なんだろう? 初めて見るよ。それが……どうかしたのかな。


「これはな。魔法銃と言ってだな。なんと火薬なしで撃てる優れ物だ。もちろん。火薬ありでもいけるぜ」


 うん? 魔法銃? 火薬? なんの話をしているんだ? 僕はチンプンカンプンだった。んーとそれよりも。


「猪を討伐したのは貴方ですか」


 静かに冷ややかな目線を送りつつ言った。もしそれが本当なら僕はなにもしていない。ただ単に突っ立っていただけだ。ってか。今の僕の発言が正しかったら謎の男は命の恩人だ。


「そうだ。俺が仕留めた。この魔法銃でな」


 まるでどうだと言わんばかりだ。確かにこの形状や色合いに浪漫を感じる。うーん。なんて素晴らしいんだ。もし芸術があれば爆上げして今頃は芸術家になってたりして。あは。ないない。変な夢だったな。にしても。


「凄いですね。カッコいいですよ。それ」

「グハハハハハ。そうだろう? うん。気に入った。お前の名前は?」

「ぼ、僕の名は……リディです」

「そうか。リディか。憶えておこう。さてと」


 とその時だ。謎の男のさてとの後に獣の声がしたのは。慌てて獣の声がした方に向くと茂みよりも遥かにデカイ猪が息を荒げながらこちら目指して歩いてくる。


「な、なんてデカイんだ」


 僕が言った。余りの大きさにビビッてしまう程だ。


「こ、こいつは」


 謎の男がなにかを知っているようだった。でも僕達はそんな仲じゃない。しかも目の前に現れたデカイ猪は見た限りは歴戦と言う感じがしていた。右瞼に深い傷が縦に入っていた。


「な、なにか知ってるんですかぁ」


 今度は喧嘩にならないように言ってみた。いかんせん僕は冒険初心者ですから……教えてくれると助かるな。


「間違いなく森の主だ。こいつはきびしい戦いになるぞ」


 森の主? ならさっさと倒せるんじゃあ? なんでためらうんだろう? ここは……訊いてみよ。


「どう言うことですか」


 僕がそう言うと謎の男は僕の名札をジロジロと見始めた。


「鉄か。……なら教えてやるか。いいか。森の主は討伐しては駄目だ。ここは撃退のみしか対応出来ない。分かったか。リディ」


 うへ? んーと……巧いこと整理整頓したら……。え!? 倒せないの!? それって……やばいんじゃあ。


「その顔はようやく気付いたようだな。そうだ。むしろ討伐してみろ。要らない噂が立って見つかったら罰金金貨十二枚は取られるぞ」


 あ……思い出した。確かに爺ちゃんがそんなことを言ってたっけな。うわ~。凄く懐かしい思い出が掘り返されたよ。


「おい! 耽っている場合じゃない! どうやら仲間の死を感じ取ったようだぞ! ここは逃げたら駄目だ! おい! ここも共闘するぞ!」


 え? ええ!? 共闘って言ったって……さっきのは僕をただの囮にし立てあげただけじゃないか。本当に僕と謎の男は共闘が出来るのだろうか。

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