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第1話 オールGのリディとリアスとの遭遇

 僕のスキルが発現してから次の日になりすっかり朝になった。


 僕はと言うとアイリーンさんが用意してくれた二階の部屋にいた。ベッドの上にいると思いきや既に着替えを済ませて二階の部屋の扉に向かった。


 扉を開けると廊下に出た。後は階段を探すだけだった。どうしてこんなにも早くに動こうとするのかと言えば全てはアイリーンさんに恩返しする為に……だ。


 階段のところまでくると下り始めた。これは多分だけどまだアイリーンさんは寝ているんじゃないかな。だからここは静かに下りようと思う。


 一階に着いた。やはりまだアイリーンさんは寝ていた。姿が見えない。これはこれで好都合と思い僕はさっさとギルドに向かおうとした。きっと今の僕なら行ける筈だ。


 一昔前の僕はスキルなしでギルドから門前払いを喰らったけど……今回は自信満々だった。なぜなら今の僕にはアイリーンさんが発現してくれた浪漫覚醒があるのだから。


 後は一階の出入り口を目指し外に出るだけだ。へへ。待っていてね。アイリーンさん。僕……一人前になって帰ってくるから。意を決して僕は歩を進めた。


 外に出た。うう。寒い。さすがにこんな朝っぱらだとこうもなるか。フフ。この冷たい空気さえも今の僕には楽しく感じる。なんていい日なんだ。


 さてさて向かうはギルドだ。今度こそ僕はギルドの一員になって世界一の冒険者になるんだ。こうして僕は気分上々になりつつギルドに向かったのだった。



 ギルドは相変わらず大きいな。今までは疎遠してたけど今なら堂々と入れるもんね。フフ。楽しいな。こんな日がくるなんて……アイリーンさんに感謝しないとな。


 ギルドの中に入ると凄くムワっとした空気と出くわす。しかも汗臭かったり酒臭かったりする。僕は苦手な臭いに耐えながら受付嬢のいるカウンターを目指した。


 カウンターに着くと既に顔がばれているので白い眼で見られた。こ、この前のぼ、僕とは違うんだぞ。ほら。ここに発現させたと言う確たる証拠もあるんだぞ。


 僕は恐る恐る確たる証拠を受付嬢に渡した。ほんのちょっと受付嬢が紙を見るとどこかに行こうとした。きっと偽造していないかの確認をする為だろう。


 あれからしばらく経った。ふぅ~。なんだか緊張するな。これから僕は一人で生活していくことになるのか。ふわぁ~。なんだかやることが沢山あるな~。


 お? 受付嬢が戻ってきた。しかも念願の名札を持って。名札はそれぞれ白銀、金、銀、銅、鉄の鉱物で出来ている。僕の憧れの白銀が一番上で鉄が一番下だ。


「お待たせしました。発現の方ですがおめでとうございます」

「あ、ありがとうございます」


 な、なにを僕は反応いているんだ? ここは堂々でもいいのではないでしょうか。たまには……だけど。


「それではこちら名札になります。えーと……リディ様のランクは鉄でございます。お間違いないようにお受け取りください」


 僕は初心者の同然だから……鉄が妥当だしいきなり鉄より上は貰えない。これは基本中の基本だ。あ。それよりも僕は名札を受け取った。


 やったぁああ。僕はこの時をどれだけ待ち望んだことかぁああ。うう。今思えば周りの同期はどんどん発現していくのに僕だけが置いていかれたんだ。そ、それがまさか。こんなことになるなんて思いもしなかった。


 と喜んでいる場合じゃないや。さっさと名札を付けるか。えーと……まずは胸の上に付けて……と。よしよし。あともう少しだ。……よし。付けれたぞ。


 ちなみに名札の上に名前が書かれており名前の下にステータスが……。あ! そうだった! 周りから訊いた話だけどステータスを更新するには能力値測定用カプセルに入らないといけないらしい。


 そこに入ると全身の筋肉量や体脂肪率とかを測定してくれる。実に優れた機械だ。なんだか嫉妬してしまいそうだ。とその前に受付嬢にどこにあるのかを訊いてみよう。


「あのう!」


 受付嬢は業務に戻っていたが僕が話し掛けたことでこちらを見つめ始めた。うん。いつもの僕ならここで逃げてただろうけど今の僕は違う。もう……僕は逃げたりなんかしない。


「能力値測定用カプセルはどこにありますか!」


 聞こえなかったら嫌だから大きめな声で言った。これなら多分だけど聞こえた筈だ。


「ああ。それなら……」


 受付嬢はカウンターの上に両手を置いて立ち上がると両手はそのままカウンターから乗り出し始めた。


「出入り口のところに置いてますよ」


 受付嬢はそう言いながら出入り口に人差し指を向けた。え? そんなところにあったんだ。知らなかった。それもそうか。スキルがないからこことは無縁だったし。


「あ! すみません! 気付かなくて」

「いえいえ。早速使用されるんですか」

「はい!」

「それはよかった。今回は初回限りでタダとなっています。その後は料金が銅一枚となりなりますので悪しからず」


 なんだか最後は脅されたような気分だ。にしても初回はタダなんだ。ここは出し惜しみするべきじゃないな。だから早く行こう。


「では! 行ってきます!」

「はい! いってらっしゃい!」


 なんだろうな。ここの受付嬢はスキルが発現したら凄く優しいんだな。はぁ~。アイリーンさんがいなかったらと思うとそ~っとする。とそれよりも行かないと。


 きっと僕は軟弱者だからステータスは低いんだろうな。それでもアイリーンさんは言っていた。君には無限の可能性があるんだって。僕はその言葉を信じて能力値測定用カプセルに向かった。


 能力値測定用カプセルに着いた。能力値測定用カプセルは筒状が縦に置かれている。幸いなことに一つだけ空いていた。僕は意を決して入り込んだ。自動で扉が閉まると読み取りが始まった。


「これより読み取りを開始します。その場から動かないで下さい」


 機械の声がした。僕はそう言われたので動かないことにした。独特で嫌な機械音はなく読み取りが行われた。


「読み取りが終わりました。これよりステータスの入力を開始します」


 なんだか息が詰まる思いだった。僕は意味不明に両手を握り締め両瞼を閉じていた。


「名札へのステータスの入力が終了しました。それではこれよりステータスの報告をします」


 え? 報告ってなんだ? よく分からないけどここは耐え凌ごう。


「力はG。耐久はG。器用はG。敏捷はG。魔力はGです」


 うん? 全てGなんだけど? これってどうなの? うーん。まぁいいや。……お? 扉がこれまた勝手に開いた。


「またのお越しをお待ちしています。では冒険をお楽しみ下さい」


 どうやら終わったみたいだな。うん。ここからじゃ名札のステータスは見れないや。何度も確認してニヤケたかったのにな。残念。とそれよりも終わったし出よう。


 出たら今度は……。そうだ! 初めてのクエストを受注しよう! よし! こうなったらさっさと行こう! また受付嬢のところに行かなくっちゃ! ここは早歩きだ。


 そうだよな~。今の僕は無一文に近いんだ。ここはさっさとお金を稼がないとな。せめて一日銅三枚は稼ぎたいな~。はぁ。こんな僕に出来るのだろうか。


 受付嬢のところに着いたぞ。うん。仕事に没頭してるね。ここは悪いけど言わせて貰おうっと。


「あの! クエストを受けたいんですけど!」


 受付嬢は嫌な雰囲気を醸し出しつつも仕事を後にした。するとなにやら分厚い本を差し出してきた。僕はその姿にどん引きした。だってこれって……。まさか。


「これ全てが鉄ランクのみが受けられるクエストの数々です」

「うへぇ~。マジですか。これ全てがクエストなんですかぁー」

「その通りです。初めの方ならば最初らへんをお読み下さい」


 ぶっほぉー。なんだか。この世界は大変そうだな~。僕なんかよりも困っている人なんてごまんといるんだ。と、それよりも読まなくちゃ。


 えーと……。あ……。最初のページは採取系のクエストのみだ。そうだよな~。初心者がいきなり討伐系を選ぶ筈がないもんな~。だからここは。


「これです! これに……決めました!」


 僕が選んだのはなんでも討伐中に怪我をしたソロハンターさんからのクエストだ。内容は近場の森で薬草を三束ほど取りに行くだけだ。報酬は銅三枚だって。


「はい。分かりました。では」


 受付嬢は僕が指定したクエストページに押し印をするとクエストページを本から取り外し僕に渡そうとした。え? こんなやり方なの? ここって。


「これをお受け取り下さい。尚、万が一、紛失された場合は罰金銅一枚となりますのでお気をつけ下さい」


 ふへぇ? え? ええ!? そ、そんなの聴いてないよぉう。はぁ~。なんだか。一気にやる気をそがれちゃったな~。うーん。でもやるって決めたんだしやろう。


「分かりました! 紛失しないように気をつけます!」


 ふぅ~。受け取ってしまった。これでもう後には引けない。……うん? 受付嬢がなにやら取り出してきたぞ。なんだろう。見た感じはただの道具入れだな。


「これは今、初心者応援企画で配っている物です。どうか。お受け取り下さい」


 と受付嬢が言っていた。うっへぇ~。そんな企画を今はやってるんだ~。なんだか。ラッキーだな。んじゃさっさと貰ってさっさとクエストクリアでもしますか。


 僕は受付嬢から道具袋を貰うと早速クエストページを入れた。うん。ピッタシだ。後はこの道具袋を腰に付けて……と。よし。出来たぞ。うん。いかにも冒険者っぽいな。


「では……冒険の方、お気をつけていってらっしゃい」


 うお!? スキルがない僕のことをあんな眼で見てたのに今は凄く優しくしてくれる。なんだか。凄く嬉しいな。こんなにも頭を下げてくれる人も中々いないと思う。


 とそれよりもようやくこれで僕は冒険者稼業を始めることが出来るんだ! さてさて~後は薬草を見つけに行くだけだ! よぉおし! 張り切っていくぞぉおお!


 僕がガッツポーズをし終わり外に出ようとした。外はあともう少しだと言う時になんとリアスが新たな面子を連れて入ってきた。うげ!? どうしよう!? どうすれば。


 え? すれ違った? はは。もう忘れ去られたのかな。僕は。うん。嫌な思い出が脳裏を過ぎった。僕は顔を左右に振りその場を去ろうとしたその時。


「お、お前……リディか」


 呼び止められた。リアスに。


「リディだよな? お前……。まさか。冒険者になったのか」


 あーもう! 気が狂うなぁ! 僕を捨てたこんな奴には……。こんな奴には……。


「あっかんべーだ! リアスの馬鹿ぁああ!」


 気付いた時には振り返り人差し指で下瞼を下に伸ばしていた。そしてそんなことを言った僕はその場から逃げるように去っていた。密かにスッキリしたのは僕だけの秘密だ。

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