第11話 オルディンとの共同生活とアイリーンの手作り料理
なんということだろう。竜狩りのオルディンさんが……アイリーンさんの鑑定屋に寝泊りすることになった。部屋は十分に空いているらしい。ちなみに部屋に浴槽はなく。シャワーのみあった。ただ別の階に浴場がある。って設備が良過ぎじゃない!? これ。
なんだろうな。もう既にだれかを寝泊りさせるような構造になっているような……。あーもしかしてアイリーンさんって見掛けによらず意外に……。ああ。僕はなんていうことを考えてしまったんだ。うう。アイリーンさん。ごめん。僕は最後まで信じるよ。
とここでなんとアイリーンさんが手料理を作って待っていてくれた。あはぁ~。いいな。いいな。僕はもう既に限界に達していた。お腹は更に鳴り唾液が口の中で溢れていた。じゅるり。だ、駄目だ。マナーを無視して食べたいや。はぁ。はぁ。はぁ。はぁ。
じゅるり。僕は抑え切れない衝動に駆られだれよりも先に椅子に腰を下ろしアイリーンさんの手料理を食べた。アイリーンさんとオルディンさんは笑っていたけれど今日の僕は恥晒しでもいい。もうそれくらいにお腹がペコペコだ。ちなみにシチューが主食だ。
あくまでも僕の中では……だけどね。パンもある。これを千切ってシチューに付けて食べるのが本当に美味しいんだ。僕の大好物だよ。あーそう言えばよくお婆ちゃんが作ってくれたっけな。ああ。味は違っても真心は一緒だよね。絶対に。ああ。幸せだな。
「リディ君。本当に幸せそうに食べるね。おかわりならまだまだあるよ」
う~ん。僕がシチューの味に耽っているとアイリーンさんが椅子に腰を下ろすことなく言ってきた。にしてもそうなんだ。おかわりしちゃおうかな。ここは。あーでも後で請求されないよね? あ……もう既に食べちゃったや。う。どうしよう。後悔したかも。
「あー! リディ君! 今……不安になったでしょ?」
うへぇ!? ぼ、僕ってそんなに表情に出るのかな~。あは。あはははは。にしても僕がシチューに夢中になっている間にオルディンさんがいつのまにか椅子に腰を下ろしてシチューを食べていた。どうやらオルディンさんは黙々と食べる主義みたいだ。
「あー! リディ君! なかったことにしたよね? 今?」
うげげ!? あー目線にも出ちゃうのか~。あちゃ~。僕って奴は……どうしてこうも不器用なんだ。はぁ~。無表情でクールになりたいや。そうすれば……。ムフフ。アイリーンさんと肩を並べれるくらいの逸材には……。って今はそれどころじゃないよ。
「そ、それよりもシチュー……美味しいです」
お世辞でもない。心の底から本当のことを言った。僕が思い出すにシチューって凄く時間が掛かる印象があるんだ。それなのにアイリーンさんはいつのまに作り終えたんだろうな。そんな時間……あったっけな。うーん。分かんないや。ただ言えるのは旨いだ。
「え? 本当? ……本当はね? リディ君の為に早朝から仕込んでたんだ」
ふへぇ? そうだったんだ。どうりで早朝とかに見掛けなかった訳だ。僕が出掛けようとした時にはもう既にアイリーンさんは起きて調理をしていたのか。なるほどな。これなら納得がいくや。それなら残さずに食べないとな。うーん。頬がとろける~。旨い。
「そんなに美味しいんだ? んじゃあそろそろ私も食べようかな」
確かにシチューが入ったお皿は三つある。テーブルは一つで大きい。ただなによりも多いと感じるのは椅子でなんと六つもある。って準備が良過ぎじゃない!? これ。……なんだか。初めから稼業パーティが入居者になれるようになっているような気が……。
「あー美味しい。ほっぺたが落ちちゃうよ。ねぇ? リディ君!」
うほ!? 話し掛けられた。アイリーンさんも椅子に腰を下ろし食事を取っていた。うん。確かに美味しい。アイリーンさんは料理の天才だな。うん。味付けだけでも大変そうだもんな。料理って。それが誰一人文句を言わずに食べている。凄い光景だと思う。
「はい! アイリーンさん! ……あの! おかわりしてもいいですか」
念の為に訊いてみた。さっきのアイリーンさんの言葉ならおかわりはしてもいいみたいだった。だけどここはマナーを優先した。少し前の僕なら無我夢中に食べていたけれど今は比較的に冷静だった。そうでないとおかわりは出来ない。無心だと失礼だと思う。
「もちろんだよ! リディ君! 事前に用意しといてよかったよ!」
アイリーンさん。はう~。僕って奴はなんて不幸よりの思考を持ってるんだ。アイリーンさんが……アイリーンさんが請求なんてする筈がない。それなのに……それなのに僕って奴はなんて……なんて馬鹿なんだぁ~。反省しても仕切れないよ~。女神様だ~。
「ううん? どうかしたの? リディ君?」
あ……アイリーンさんが僕の心配をしてくれた。あは。なんだか最初に会った時のことを思い出したや。あの時の僕は泣いたんだっけな。あはは。今になって思えば凄く恥ずかしいや。うん。とそれよりも……おかわりをしようっと。今日はお腹が空いている。
「ふぅ~。ご馳走さんっと」
え? オルディンさんがシチューとパンを食べ終わったっぽい。うーん。なんだか。おかわりがし辛いな。で、でも残すと勿体ないしな。ここは僕だけでも食べよう。うん。その方がアイリーンさんも喜びそうだ。僕はアイリーンさんが喜ぶなら食べるんだ。
「ねぇ? オルディン。味はどうだった?」
僕が席から外れておかわりをしているとアイリーンさんの声が聞こえた。これはオルディンさんに向けられた言葉だ。僕向けではない。だから僕はせっせとおかわりし終えて席に付こうとした。それにしてもオルディンさんの意見もきっと美味しいだろうな。
「ワシか。そうだな。上出来だ。味も見た目もいい。素晴らしいぞ」
オルディンさんのお墨付きも貰えてよかったね! アイリーンさん! そうこうしている内に僕はさっきまで座っていた席に腰を下ろした。さて……二人を待たす訳にはいかないから早く食べないとな。うん。この味なら三杯はいけるよ。おかわりはないけど。
「ほんと? 有難う! オルディン!」
はぁーん。美味しい。本当に……極上の味だぁ。僕は贔屓はしない。美味しいと思ったら美味しいって言う。たまにだけど。毎日のように言ってたらちょっと可笑しい。だって当たり前に食べている物だから。どうしても飽きがきてしまう。残念だけど。
「二人とも今日は疲れたでしょ? ゆっくりと浴槽の中でお湯に浸かるといいわ」
それって……。つまり……地下にある浴場にいけと言うことだよね? うは。凄く気分がいいんだろうな。たとえ温泉じゃなくても僕は喜ぶよ。だけどいずれは本の中で見たことある温泉に入ってみたい。冒険者稼業になったからこそに遠出をして楽しみたい。
いずれ遠出が出来ることを信じて僕はアイリーンさんの案内の元で浴場に向かった。一方のオルディンさんは用事があるとかでどこかにいった。一体……なんの用事だったんだろう。よくは分からないけどきっと重要な用事でもあったのだろう。気になるな~。
なにはともあれ僕とオルディンさんは無事でした。今日はもう疲れたや。お湯に浸かってさっさと着て自分の部屋に戻りたい。そしてぐっすりと寝るんだ。今日はもう爆睡するつもりなんだ。僕はそう思いながらもタオルを二枚ほど借りて浴場に入っていった。




