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第10話 近衛騎士隊長のセルゲンと裏ギルドの妙な噂話

 オルディンさんがアルガディアン城まで案内してくれた。ふへぇ~。こんなに間近でみることなんてないや~。今は中庭で待機中だ。ここまでならなんとオルディンさんの顔パスでこれた。な、なんて凄いことなんだ。僕はとんでもない仲間を手にしていた。


 今になって思えば……闇堕ち竜よりも怖いのって人間なのかも知れないな。うん。そうだ。そうに違いない。だって……意図的に引き起こせるんだよ? そんな怖いことが平然と出来るのが人間なんだよ? だれがどう見たって怖いのは人間の方だろうな。


 それに……これは失礼だろうけどオルディンさんの方が闇堕ち竜よりも強いのを確認しちゃってるからね。確かに僕はオルディンさん並みに強くなりたい。でもそれって逆に言えば自然の驚異になるってことだ。あーでも……脅威には脅威で立ち向かわないと。


「きたな。セルゲンが」


 僕の目の前にいるオルディンさんが言った。うーん。オルディンさんが邪魔で見れないや。移動しようにも緊張して動かないし仕方ないからここで我慢しよう。オルディンさんならこういう時に助言をくれそうだな。あーでも今は前に集中しているみたいだ。


 きっと今の僕に眼中はないだろう。もう……それくらいにオルディンさんはセルゲンさん? に釘付けだ。ここからでも大体の様子は分かる。千里眼じゃないけどちょっとしたことなら見えるんだ。大半の人が見えていると思うけど実際はどうなんだろうか。


 それにしてもセルゲンさん? はまだかな。確かにアルガディアン城は広大だ。だから早い段階で気付くとなんともいえないような空気が漂う。僕はそれが苦手なんだ。だから僕はあっちが気付いてくれるまで放置したい。たとえ言われようとも僕は僕だ。


「おお! 久しぶりだな! 同士よ!」


 この感じからして逢って早々に握手でも交わしたかのような空気だ。本当のところは知らないけど。それにしてもセルゲンさん? がどんな人かが分からないや。だからここはオルディンさんの影からひょっこりと顔を出そう。一体……どんな人なんだろう。


 僕が恐る恐る覗いて見るとそこにはオルディンさんとそんなに歳が変わらない老騎士がいた。この人がセルゲンさんか。うん。思った以上に優しそうだ。オルディンさんはいかにも賢者って感じがするけどセルゲンさんは孤高の戦士とかドワーフ系に見えた。


 おっと……セルゲンさんと眼が合った。ここから見ると本当に戦士にしか見えないや。けっして悪口じゃない。もし本人がそう捉えたのなら素直に謝るけど今のこれは心の中の独り言だし大丈夫だと思う。でもまぁ初対面でこれはないのかも知れないな~。


「うん? そちらの方はどなたかな」


 セルゲンさんが首を傾げることなく言った。ここは自分で自己紹介をする場面だな。もしここで自己紹介が出来なかったら恥ずかしいもんな。ってこんなことをしている暇はない。僕は僕自身で自己紹介をしていくんだ。これだけはだれにも邪魔させない。


「あ! 初めまして! 僕の名前はリディです!」


 はぁ~。なぜだか緊張する。さすがに冒険者稼業をしている人はこことは無縁だと思うから。あ……でもオルディンさんって元稼業なんだよな? それでここまで入れる程の逸材ってどんな逸材なんだ。はぁ~。訊いてみたいけど一大事な方が最優先だよね。


「うむ。私の名はセルゲン。アルガディアン王国で近衛騎士隊長をしている」


 うっへぇ~。近衛隊って言ったら……王族たちを守るというアレですか。アレ。ぶほぉー。こんなところでとてつもない隊長と出会っちゃったよ。ふぅほぉー。どうしよう? サインでも貰えるのかな。貰えないのかな。凄く興味が出てきたよ。凄いな~。


「おほん! ところでセルゲン? 話したいことがある」


 オルディンさんが咳払いをするとさっさと喋り始めた。きっと闇堕ち竜について話すんだろうな。なんだろう? セルゲンさんも空気を読んだ。場が静まり返り沈黙だけが流れ始めた。だけどこの一時の沈黙を打ち破ったのはセルゲンさんだった。


「なんだ? 気を改めて言わないと駄目なのか」


 セルゲンさんはオルディンさんに訊いてみた。この空気を感じない程にセルゲンさんは図太いんだな。はぁ~。僕なんて押し潰されそうだよ。うーん。二人とも凄まじい物を感じるよ。僕にでも分かる。この二人には伝説級の匂いがする。うん。間違いない。


「そうだ。……なにやらな。山の方で闇堕ち竜と遭遇してな」


 オルディンさんは言うと沈黙に入った。沈黙に入るとオルディンさんはなんかの仕草をしていた。うーん。ここからだと見えないんだよ。残念。はぁ~。闇堕ち竜か。今でも思い出すよ。あれは……本当に……おぞましい姿だった。僕なら即行で逃げ帰るよ。


「なんだと? 闇堕ち竜っていや~百年の一度の厄災だろう? なんでこんな中途半端な時に?」


 僕の知らないことが一杯あるんだな。なんだろう。世界はまだまだ不思議で一杯なんだ。浪漫……感じちゃう。でも……正直のところ……関わりたくはない。だけどいずれ関わることになりそうだ。もし全ての竜が闇堕ちとなれば世界に対して反乱を起こせる。


「それが人為的とすれば? ……セルゲンはどう思う?」


 人為的。これが本当に可能なら僕等は竜と全面戦争になるかも知れない。いくらオルディンさんが優秀であっても全世界の竜が闇堕ちして暴れ始めたら浄化どころの騒ぎじゃない。そんなことが出来るのは本の中の主人公くらいだ。現実はそんな簡単じゃない。


「ふむぅ。裏切り者か。……心当たりがない訳ではない」


 へ? どういうこと? セルゲンさんも薄々は感付いていたってこと? うーん。謎が深まるな~。もし闇堕ち竜の謎が解明できたのならそれはそれで素晴らしいことだ。だって……闇堕ち竜にさせるには時間を要するのかが分かるのだから。はぁ。知りたい。


「うむ? どういうことだ? セルゲン?」


 僕もオルディンさんと同意見だ。本当にどういうことなのかをきっちりと説明してほしい。裏切り者に心当たりがあるのなら一刻も早い情報交換をするべきだと僕は思う。たとえ情報が被っていても認識し合えるだけで信頼は厚くなる。僕はそう信じている。


「知っているんじゃないのか。オルディン。お前ならな」


 え? オルディンさんが知っている? ……あ! もしかしたらセルゲンさんも裏ギルドを利用した? うはぁ~。なんだか。凄い人たちだな。僕もいずれはそこから情報を仕入れたりするのかな~。なんだか。浪漫というよりワクワクしてきたや。久々に。


「うむ? まさか。セルゲン。お主も裏ギルドから得たのか」


 あー! やっぱりぃ! オルディンさんもセルゲンさんも裏ギルドを利用したんだ~。うわ~。本当に裏ギルドってあるんだな~。すっごく浪漫を感じるよ~。うはぁ~。僕もいい大人になったら通ってみたいな。今は絶対に相手にされないだろうな。悲しい。


「ああ。そうだ。お前のいう聖域を利用した。なんでもそこの情報によると……ギルドリウス帝国が最近になって戦争放棄を始めたらしい」


 セルゲンさんも利用した裏ギルドってどこにあるんだろう? ここはやっぱり地下にあるのかな。なんだか僕の中では裏ギルドは地下にある感じなんだ。そこで色んな人たちが暗躍しているんだ。それにしてもギルドリウス帝国ってどこ? 戦争する国なんだ。


「ふむぅ。これは憶測だが……戦争では効率が悪いと考えたのかも知れん」


 うーん? 戦争って嫌だな。だって大勢の人が亡くなるから。考えただけでも末恐ろしいよ。だけど戦争放棄したんだね。それは朗報って……その代わりに闇堕ち竜を使う気なの? だとしたら世界の秩序は崩壊して混沌な世界になるんじゃないの? やばい。


「ああ。だからこそに……新政権と同時に裏でなにかを仕出かすかも知れない」


 なんて酷い国なんだ。戦争よりも悪いことなんじゃあ。戦争はまだ正義論とかあってそれが民衆を動かすんだろうけど。なんの考えもない闇堕ち竜を利用するだなんて信じられないよ。いや。信じたくない。平然と命を差し出す馬鹿にはなってほしくはない。


「帝国が帝国でなくなるのはにわかに信じられんな。裏があればこその決断か」


 表よりも裏の陰謀の方が際立っている。こんなことが許される筈がない。そんなことを平然としちゃう国をどうにかしようにも出来なさそうで怖い。だって戦争になってほしくはない。なんだろう。すっごく正義が溢れてくる。こ、これが……正義なのか。


「全く……。噂では……ギルドリウス王国になるらしい」


 この話を聴くと王国になっても裏が変わらなければ意味がないになっている。はぁ~。どうしたら陰謀をとめられるんだろ? このままだと全ての竜が闇堕ちし世界に混沌の影を落とすだろうな。はぁ~。敵は分かったけど対処の方法があまりないような気が。


「フン。表は盤石か。しかし」


 裏の陰謀をとめるには監視がいる。しかもお金などで情報を交換する裏ギルドも必要だろうな。本当に奴らの陰謀をとめようと思ったら……そこまでしないと駄目だ。もしもだ。竜が世界中にいたら……僕の考えでは不十分だろうな。はぁ~。才能がほしい。


「ああ。ここは警戒していた方がいいだろう。ここは辺境警備隊を派遣を要請しよう」


 警戒はもちろんのこと。ここは……世界会議が必要だろうな。だけどそんなことが可能なんだろうか。今の僕だと世界には疎過ぎるからな。というか。僕は今日……稼業したばっかりなんですけど。それがまさかこんな事態になるなんて僕は平和ボケしてたよ。


「心許ないな。それでは……な。竜は今や世界中にいるのだからな」


 うほ。オルディンさんの一言で僕の気持ちは一気に萎んだ。うーん。世界に竜がいるとなるともう手の施しようがないような気がする。僕達は僅かながらの抵抗しか出来ないのか。そこまでしてでも世界がほしいのか。その……ギルドリウス帝国は。怖いな。


「確かに……な。だが指を銜えて見ていろだけだと無能の境地だ。少なからずでも抵抗を見せなければ……な。民に示しが付かない」


 セルゲンさん……。一番に民のことを考えるなんて並大抵じゃあ出来ないよ。なんだか感動したな。涙が出そうだよ。今までの僕でごめんなさいって言いたいよぉう。身の保全に走り過ぎはかっこわるいな。本当に。うーん。僕はもっと早くに成長したい。


「そうだな。……世界会議は意味をなさんだろうな」


 うん? あるんだ。世界会議って。だけど意味をなさないってどういうことなんだろうか。……うーん。証拠がないと弾圧出来ないとか……かな。それだと確かに意味をなさないだろうな。はぁ~。止められずに人間たちのエゴで操られる竜が可哀想だよ~。


「ああ。穴だらけだからな。裏で悪さをしているなんてのはな。噂に留まっていれば痛手でもねぇ」


 セルゲンさんが見事に確信を突いていた。なんだかな~。嫌な世界だな。大人って色々と急がしそうだな~。はぁ~。証拠か。全ては証拠なんだな。これさえ掴めれば後が楽なんだ。うーん。でもそんなことなんて出来ないような。うーん。難し過ぎるよ。


「そこで調子に乗った連中が……裏ギルドを牛耳ればどうなるか」


 へ? そんなことになったら……世紀末にしか見えないな。もう。本とかでよく見る世界観だけど……本当になってほしいはない。当たり前だけど……非現実的な考えには浸りたくない。僕にとって本は教科書みたいな物だからな。あまり穢れてほしくない。


「ああ。あそこだけは絶対に聖域として守り通さなきゃならねぇ。オルディン。協力するぜ」


 ああ。なるほどう。オルディンさんやセルゲンさんの言う聖域ってそういうことだったのか。ちゃんとした意味合いがあったんだ。知らなかったな。僕も! 僕も守りたい! 微力だけど! 守らなきゃいけない物があるってのは浪漫を感じてしまう。凄く。


「それは助かる。……裏ギルドはけっして闇ではないということを証明しようではないか。なぁ? セルゲン」


 オルディンさん……。うはぁ。なんだろう。今の僕は厚い友情をみたな。この感じだよ。僕が求めてたのは。あーでも僕は下っ端も同然だ。うーん。あんまり考えたくないけど僕が世間から注目を浴びる頃には二人はもういないような……気がしてきた。


「ああ。そうだな。……それじゃあ用件は大体済んだな。なにかあるかも知れんから毎日でもきてくれ。んじゃあな。竜狩りのオルディン」


 用件はそれだけなのかな。よく分かんないや。でもこれで王国が動くことは確実だろうな。うはぁ~。オルディンさん。さら~と王国を動かしました。な、なんて凄いんだ。きっとオルディンさんは王国に対してなんらかの名誉を持っているんだ。違うかな。


「ああ。そうしよう。なぁあにワシの顔パスは深夜でも利くからな。ホッホウ。それまでは……リディと共に居合わせよう。なぁ? リディや」


 じゃなきゃここまで優遇はされないと思う。ここまできただけでも凄いのにオルディンさんは一体……なんの偉業を成した人なんだろう? どう考えても竜狩りで収まるような人じゃない。うは~。気になるな~。って耽っている場合じゃない。だからここは。


「え? あ! はい! 宜しくお願いします! オルディンさん!」


 気付いた頃にはセルゲンさんはいなくなっていた。僕が耽っているあいだに帰ったようだ。あ……今……お腹が鳴った。はぁ~。今日は疲れたや。寝たらぐっすりと寝れそうだな。帰ったらお腹一杯食べたいな~。アイリーンさんって料理が出来るのかな。


「うむ。ならば今日はもう帰るとするか。サイババたちが待っているだろうからな。さて……往くとするか」


 うお? ようやく帰れるんだ。ふはぁ~。独特な空気がなくなったと思ったら欠伸が出たよ~。うーん。背筋も伸ばしたい気分だ。だけど今はそんな気分を我慢して武具屋に戻ることにした。これから起きることを覚悟しながら僕たちは帰ったのだった。

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