第6話 魔法
俺は、心が妙にポカポカと温かくなるのを感じた。これは、なんなんだ?
《光属性魔法の使用権限を与えます》
ん?なんか頭にアナウンスみたいなのが響いてる。光属性魔法の使用権限?なにそれ。俺、魔法使えるってこと?
《なお、光属性魔法の回復系統に限ります》
なんだよ。回復系統しか使えないのかよ。どこで回復を使えっていうんだよ。初めて魔法が使えると思ったのに使うところがなく、ガッカリしてしまう。
《ちなみに使用できる回復魔法はレベル6です》
〈レベル6?なんだそれは。こっちはまだ異世界に来たてなんだぞ。レベル6って言われてもわかんねーよ。てか、誰だよ!?〉
《チッ・・・ごほん。レベルとはいわば強さの基準です。最高でレベル10まであります。このレベルはあなたの気持ちや感情の深さ、強さで決まります。レベル6と言いますとまあ、失った体のパーツくらいなら治せますね。ただし、パーツの一部が近くにないと治すことはできません。あと、私はアンス。アンス様と読んでくれてもいいですよ。てか呼べ。私はこの体に埋め込まれた夕日さんをお助けする機能みたいなものです。本当はお前の手助けなんかやりたくないんですけど、まあ仕事なんで仕方ないですね》
ん?なんか舌打ちされたような気が。それになんだこのSが自我持ったみたいなやつは。
《舌打ち?しましたけど舌打ち。それがなにか?》
〈うわー。なんだよこいつ〉
《お前に言われたくねーよ》
〈こいつマジでなんなの。態度も悪いし。それに初対面なのにタメ口って。普通、敬語使うんじゃないの〉
《はー、ガキのお守りも疲れますね。こっちは仕事だってのに。なんで、こいつにわざわざ敬語とか使わないといけないわけ》
〈・・・〉
俺を手助けする機能とか言ってたな。俺の中から早く消えてくれないかな。絶対こいつにだけは手助けされたくない。
《あ?なんか言ったか?》
〈いえ、なんでも御座いません。アンス様〉
しくじった。俺の考えていることなど筒抜けだということを。もう、どうにでもしてくれ
《わかればよろしい。それじゃあ、なにかあったら聞いてくださいね》
長く話していたはずなのに話す前と全く光景が変わっていなかった。時間が経過しない。ああ、そうか意識の中での会話だから、時間は経過しないのか。せっかく魔法が使えるんだしなにか回復させれるものは・・・。周りを見渡し何かないか探す。だが、特に何もない。魔法が使えなくて残念に思い、シャルネア達を見る。ん?あれ、確かセルフィスって左腕失ってたよな。魔法が使えるとわかり少し興奮気味になる。取り敢えず回復魔法のレベル6が使えるみたいだからセルフィスの腕に使ってみよう。
「セルフィス。セルフィスはどこで腕をやられた?」
「みんなと同じこの湖でやられたわ」
腕をやられた時のことを思い出したのか失った左腕の付け根を抑え、苦痛に顔を歪める。みんなの遺体に混ざって一緒に燃やして、灰になってるな。たぶん。灰になってても使えるのかな?まあ、やってみるか。
〈アンス様ー〉
《あ?なんだよ?》
〈魔法を使う時ってどうすればいいんだ〉
《回復魔法だったら魔法をかけたい箇所に手を添えて魔法名を答えればいい。魔力の心配はしなくていい。お前が持ってる特殊スキルのおかげで魔法を使う時、魔力を消費せず、魔法を使うことができる。ただし、これはお前だけだからな。本当はいっぱい練習しないといけないし、そもそも元から素質がなければ使えない。そこにいるシャルネアも魔力はあるんだが素質がない。そのため、基本魔法しか使うことしかできない》
〈本来なら俺も素質があっていっぱい練習しなければいけないのか。そんなことになっていたら3年で神を殺すこともできないな。まあ、その点は感謝してやるゴミ。あ、間違えた神だった〉
《悪口だだ漏れだぞ。まあ、私もその点には同意せざるを得ないな。それじゃあ、魔法名を教える。魔法名は・・・》
再び意識が戻る。言われた通りにやってみるか。
「セルフィスこっちに来てくれ」
「え?はい。いいですけど」
セルフィスは頭上に疑問符を浮かべ、ゆっくりとこっちに歩いてくる。まあ、実際に浮かんではないが。そして、セルフィスは俺の眼の前で止まった。俺は、目の前にいるセルフィスの左腕の付け根にそっと手を翳す。セルフィスは、何かされると思ったのか俺が手を添えた瞬間、体を反らす。多分腕をやられた時の記憶がフラッシュバックされたのだろう。
「大丈夫。別に」
俺はそう言うと、セルフィスの左腕があったであろう場所に手を添えた。息を吐いて、大きく吸った。そして、先ほど教えられたことを思い出す。
《魔法名を教える。魔法名は・・・》
『不完全回復』
魔法名を唱えると夕日の手が光り、セルフィスの左腕の付け根も光る。そして灰も光った。灰が光った部分は一部だけ。その灰がセルフィスの左腕の付け根に集まっていく。たぶん光ったところがセルフィスの左腕だったものだろう。すると、見る見るうちに灰が左腕の付け根から徐々に左腕の形になっていく。そして、光がなくなったと思ったらセルフィスの左腕が完全に治っていた。