第5話 決別
この森から王都まで500キロ程離れていて、歩くと4日程掛かってしまう。村から森でさえ5キロ程の距離がある。だがその距離をシャルネアとセルフィスは、約3分で着いてしまった。時速に直すと約100キロ。だが、そんなシャルネアたちでさえ王都に行くには約5時間は掛かってしまう。それにバラバラの遺体を運ぶとなると到底無理である。
「だったら灰にして持って行こう」
そう言うと遺体を集めたところまで行き、ライターのような四角いもので火をつけようとする。この世界に地球と同じようなものがあるのかと思い少し興奮してしまう。
「それなんだ?」
「ん?ああ、これか。これは魔道具だよ。自身の魔力を使い、火を出すことができるんだ。私は魔法が使えないからな、だからこういう魔道具を持ち歩いているんだよ」
「そうか。でも、魔法ならセルフィスが」
「彼女にやらせるのは酷だろう」
シャルネアはどことなくキツそうな顔をしていた。だが、仲間に火をつける行動をセルフィスにさせるのは酷だという理由で自身の感情は無視してその役を受けた。
(シャルネア・・・)
「あの、火をつけるのは私がしてもいいですか?・・・いえ、私にやらせてください」
「それはもちろんいいが・・・」
シャルネアは「大丈夫か」とは聞かなかった。セルフィスの表情はツラそうであった。だが、その目は真っすぐで。だから、聞けなかったのだ。
「そうか・・・わかった」
セルフィスは持っていた遺品と花をシャルネアに預け、遺体の集められた所に行き、哀しそうな表情でバラバラになった仲間たちを見やる。
「みんな、ごめんね。私がみんなを助けることができなかった。自分の無力が憤ろしい。私のせいでみんなを死なせてしまったも同然。みんなごめん・・ほんと・・・ごめん」
途中、嗚咽が混じる。今にも泣きそうなところをギリギリ我慢し、気持ちを切り替えるため、両頬をパンっと叩く。
「・・・それじゃあね。みんな」
目には涙が溜まっている。泣かないのは意地だろうか。そうして、手をサッと遺体に翳そうとした時
「えっ!?」
セルフィスが何かに驚いた声を出す。
「どうしたセルフィス?」
目で何かを追うように自身の周りをキョロキョロし始めた。やがて視線を徐々に上に上げていく。数秒上を見上げた後、遺体の方に再び手を翳す。
「いえ、なにも」
そう言う彼女は静かに涙を流しながら、優しく笑っていた。その時の彼女はとても幻想的で美しかった。
「みんな、じゃあね」
セルフィスが遺体に翳していた手が光り始め、ゆっくりと口を開く。
『聖焔』
出てきたのは真っ赤な炎ではなく、光り輝く焔。優しく遺体を包み込み灰に変えていく。その光景を見て、セルフィスは持っていた遺品をギュッと握りしめる。涙はもう流れていなかった。
今後の参考にしたいので、どんなことでもいいので感想、要望等々くれると助かります。