第17話 イケメン鍛冶屋
「よ〜し。王様の言ってた爽やかイケメンを探しにいくか」
「はい!」
時刻は10時。俺たちは宿で朝食をとり、宿を出た。
「探すって言ってもどうやって探すんですか?」
「そりゃあ聞き込みだよ」
「聞き込みですか」
「まあ、とりあえずそこらへんにいる人に聞いてみよう」
宿を出ると、目の前に道がある。宿を探すのに手間取っていてあまり気に止めていなかったがなかなか広い。その道には店が軒を連なっており、人が行き交っていた。昨日泊まった宿は部屋が王都ほどではないにせよ綺麗だったことから格式高い宿だったことがわかる。それもあって値段はかなり張った。まあ、急だったしそんな値段なんて気にしていられなかった。それにしても王様からもらったお金がなければこんな宿にすら泊まれなかった。お金がなかったら多分野宿だっただろう。王様ありがとうございます。
王様に感謝しつつ、道に行き交っている人を捕まえる。
「あの、すいません」
俺が捕まえたのは子供も連れの女性。
「なんでしょうか?」
女性はそう返答しつつ、子供がどこか行きそうなのを引き止めている。
「今人探しをしていまして、爽やかでイケメンつまりカッコいい人探してるんですが」
「それってリフッシさん?」
「リフッシ?」
俺の質問に答えたのは女性が連れている6歳くらいの男の子。どうやら俺たちが探している人を知っているらしい。
「リフッシさんはここミステスでは結構名の知れた人物なんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。よくうちの子も世話になっているわ」
「へぇ〜」
なんか聞き込み一発目で終わってしまった。結構時間がかかると思っていたのだが。なんかあっけないな
「それでそのリフッシさんはどこにいるんですか?」
「ここから噴水に行って、そこから右に進むと鍛冶屋があると思います。そこにリフッシさんはいますよ」
「ありがとうございます。今から行ってみます」
「いえいえ」
それではと女性は子供を連れ、去っていった。これでここに来た目的が果たせる。
「行こうか」
「はい」
ミステスは、壁で囲われており入り口は東西南北に一つずつ。俺たちが入ってきたのは北の入り口から。入り口付近は緑が生い茂っており、そこを抜けると近代的な街並みが見えてくる。ただ、道には木が生え常に緑が見える状態になっている。今が有りつつ、昔がある。それはなかなかできるものではない。ここの市長はすごい人とわかる。話を戻すが、ミステスのど真ん中には噴水がある。そこから東西南北に大通りが通っており、俺たちが今いるのはその噴水から北に伸びている大通りにいる。大通りは横に広いだけでなく縦にも長い。宿は噴水と北の入り口までの距離を半分にしたくらいの場所にあった。ここから噴水ぎりぎり見えるくらいの距離ではある。宿から離れ、噴水に着いた。さきほどまで微かに見えるくらいの距離だったのが今は目の前にある。噴水をはっきり見た時に思ったことは「デカイ」この一言に限る。微かに見えていた噴水はこのデカさで微かに見えていたのだ。ここまで結構歩いているのに全然着かなかったのはそういうことかと今、納得した。
「ここを右だったよな」
「そうですよ。ここから右に曲がって行くと鍛冶屋があってそこにリフッシさんがいると」
噴水を右、つまり西の方角に行くということだ。俺たちは噴水を右に曲がり西の大通りに入った。すると直ぐにある看板が見えてきた。
「鍛冶屋、ここかな」
看板には鍛冶屋としか書かれていなかったが他に見当たらないためおそらくここだろう。店の前に立つ。それにしてもザ・鍛冶屋だな。て言っても一回も鍛冶屋なんて見たことがないんだが。なんていうかこう、イメージ?
「すいませーん」
俺は店の扉を開き、中に人がいるか確認する。
「っ!?」
扉を開けた瞬間、猛烈な暑さが襲ってきた。なんだこれ!?
「はーい。って大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ」
「ならいいんですけど。 それで何か用でしょうか?」
「実は人探しをしていまして、リフッシという人がこの鍛冶屋いると聞きましてそれで」
「リフッシは僕ですが」
「やっぱりですか」
出てきた瞬間から実はわかっていた。出てきた男は鍛冶屋に似つかわしくない綺麗な顔立ち、そして温かい風とともに、とてもいい匂いがした。顔には汗が張り付いていたがそれのおかげもあってかなかなかに男前に見えた。
「それで僕に何か」
リフッシさんはそう言うといきなり俺の方に走ってきた、そして俺の横を通り過ぎていく
「大丈夫ですか!?」
リフッシさんは俺の横を通り過ぎ俺の後ろをずっと着いてきたリサの方へ。
「ええ、大丈夫よ。ちょっと歩き疲れてしまって」
「ほら、こっちに座って」
店の中に椅子がありそこに座れと催促する。俺はそれを見ていることしかできなかった。俺はリサのことを特に気に留めずに自分の速度でここまで来た。俺はそのことにたった今気付かされた。
「すまんリサ。昨日から疲れていたのはわかっていたのに」
「私が勝手に着いてきてる身ですから夕日はそんなこと言わなくても」
「どういうことかあまりわかりませんけど、夕日さん?はもっと女性を気にかけないと」
「すいません」
ぐうの音も出ないとはこのことか。
「わかればよろしい」
「だいぶ落ち着きました。ありがとうございますリフッシさん」
「いえいえ、私は何もしていませんよ」
ああ、これだけでわかった。確かに爽やかイケメンだ。いや、これはもう爽やかイケメンそのもの。ミステスに来た目的の人に会うことができた。俺たちがなんでリフッシさんのことを知っているのとかなんのために訪ねてきたのか店の中では聞くことになった。今はリフッシさんに連れられ店の中を移動している。移動中それは暑くて、汗がダラダラでて早く外に出たいと思うのだった。