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【改稿前ver】三秒転生 〜愛する者の為に残された三秒で神を討つ〜  作者: サカキ
第二章 旅の開始〜人間の国 キャストレ編〜
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第15話 目的

翌日。宿からでた夕日とシャルネアは宿の前でお互いに向き合っていた。



「それじゃあなシャルネア。今までありがとう」

「礼を言うのはこちらの方だ。夕日に会うことで私は変わることができたんだからな」

「・・・俺、もう行くよ」

「・・・ああ、じゃあな」



シャルネアは訛った体を調整する為、武術大会の行われた訓練場に行くとのことだった。だからシャルネアとはここでお別れ。その別れの挨拶は意外に呆気なく終わった。



「夕日!!」



夕日は王城に向かう為に道を歩き始めた。だが、歩き始めシャルネアに背後を向けたとき、シャルネアから声がかかった。



「シャルネアどうかしたのか?」

「・・・いや、なんでもない」

「?」



何かを言いかけ口籠ったシャルネアを夕日は訝しげに見ていた。



「・・・それじゃあな」



数秒待ってもシャルネアの口からは何も出なかったので夕日は挨拶をして王城へと足を進めた。そうして視界から遠ざかっていく夕日を見て、シャルネアは呟く。



「死ぬなよ。夕日」



その呟きは夕日には聞こえない。シャルネアは出来れば夕日の旅に着いて行きたかった。だが、それはできない。夕日には夕日のやるべきことがあり、シャルネアにもやるべきことがあるからだ。そのやるべきことはお互いに交わらない。だから、シャルネアは夕日を行かせたくもなかった。神に挑むと言う奴を誰が行かせたがる。だが、それは夕日のやるべきこと。シャルネアに口を挟むことなど到底できなかった。

(私もやるべきことをしなければな)

シャルネアのやるべきことは纏道を皆に教えること。対して夕日は神を倒すこと。シャルネアは纏道を教え新たな国力を産み、夕日は神を倒すこと。破壊と生成。遠ざかる夕日を見てシャルネアは夕日と反対側の道へと歩み始めた。



「どうぞこちらへ」



王城へと歩き始めた夕日は王城に着いた。城の門をくぐり、王様に仕えるディステレに連れられ夕日は客間にいた。このあと王様と会う約束なのだが、王様という役柄上色々やることがあるらしい。少しして部屋の扉が開いた。



「すまんすまん。少し用事があってな」



そう言い部屋に入ってきたのは相変わらずアロハのシャツを着た王。王の表情は薄っすら暗く、あまり顔色が優れていない。少々と言っていたが本当はすごく忙しかったのだろう。王の後ろにはティリサも着いてきていた。今日から旅をする仲間。夕日のスキルの性質上ティリサが旅に着いてきてくれるのはありがたい。

(でも、本当に良かったのだろうか?)

夕日は嬉しさ半分、心配半分の気持ちでいた。



「今日来てもらったのは、我が娘、ティリサを夕日に預ける上で約束してほしいことがある」

「約束ですか?」



夕日は昨日、王に呼ばれていた。だから今、王城にいる。しかし会って何をするのかは聞いていなかった。夕日の呼び方が『夕日君』から『夕日』に変わったのは、昨日の食事会で王と喋っている内に気がほぐれて今では名前呼びになっていた。王は夕日に名前で読んでもいいぞ言われたが相手は一国の王。それは躊躇われた。



「絶対にティリサを悲しませるな。ただそれだけだ」



ただの約束ごとのはずなのにもしこの約束を破ったら絶対に許さないという意思が王様から見て取れた。この約束は絶対破れない。固く心に決める夕日だった。



「娘を他人に預けておいて悲しませるなと言うのもおかしいと思うがな」



王は自嘲気味に呟く。その言葉は夕日にというよりもティリサに向けられていた。こんな親ですまない。そう言っているようだった。



「・・・それと夕日に渡すものがある」

「渡すものですか?」



王はディステレに袋を持ってこさせた。その袋は小さく、あまり物が入りそうな気配はない。王はディステレからその袋を受け取り、目の前にあるアンティーク調の机に置いた。



「王様、これは?」

「これはお金だ。夕日はこちらの世界に無一文で来たのだろう?だから、旅をする上での費用が必要かと思ってな」



(お金・・・)

夕日は完全に失念していた。旅をするには金がかかるというのに。もちろん無一文旅と言うのもいいかもしれない。だが、夕日は旅をするために旅を始めるのではない。神を倒すために旅を始めるのだ。夕日にとって旅をすることなど目的達成の過程に過ぎない。その旅の資金を王が提供してくれるというのだから嬉しいことこの上ない。



「お金の数え方はわかるか?」



夕日は頭を横に振った。天球のお金を夕日はまだ1度も見ていない。だからお金の数え方。ましてや価値などわかるはずもなかった。



「当然といえば当然か。ではお金の種類を大まかに教える。まずこの金色の大きな金貨から」



夕日は王様が袋から取り出したのは500円玉大の大きな金貨。見るからに高そうだ。

(地球も天球も元は同じ世界。だから地球の面影が町並みにも少し見られたけど、さすがにお金は違ったか)

天球のお金は地球のお金と全く違っていた。



「金貨はこの銀貨100枚分の価値がある」



続いて取り出した銀貨は、100円位の大きさの硬貨。銀貨は光を反射し、銀色の輝きを見せる。



「そして銅貨。銅貨は100枚あれば銀貨と同等の価値になる」



つまり銅貨が百円だとすると銀貨は一万円、金貨はその100倍の百万円。



「大まかにこんな感じだ。まあ、さらに細かいことをいえばまだまだ小さい価値のものもあるのだが今はこのくらいでいいだろう。知りたいことがあったらその時ティリサから聞くといい」



王が説明し終え、夕日は硬貨が入った袋の中を見る。所々に金色が見えた。

(なんでこんなに小さい袋なのにこれだけの硬貨が入っているんだ?)

袋は小さく、重さを感じさせない。そのことに夕日は疑問を持った。頭に疑問符が浮いている夕日を見て、王は話しを始めた。



「そうかそうか。夕日は魔道具を見るのは初めてか」

「魔道具ですか?」

「そうだ。その袋の中は別の空間に繋がっており、見た目よりもたくさんの量を入れることができる」

「すごいですね。それ」



疑問が解消し、夕日は袋の中に再度目を向ける。

(たくさん金貨があるけど・・・この袋だけでどのくらいの価値なんだ?)

夕日は改めて目の前にいる男性が王なんだと再認識させられた。



「それでもう行くのか?」

「はい。残されている時間はあまりありませんので」

「では、ティリサとはしばしの別れをせんとな」



そう言うと王はティリサの元へと歩く。



「お父様」

「ティリサ。楽しんでこい」

「はい」



ティリサ表情はとても笑顔だった。神を倒すための旅を楽しむ。それは夕日からしてみれば不謹慎に当たるものだ。

(ティリサは俺に着いてくるだけ。世界を、外を見るための旅だ。その傍ら俺の目的である神を倒すことに協力するに過ぎない。だから、俺がどうこう言うのは間違ってるよな)

夕日は王の発言を不謹慎だと感じることはお門違いだと考えた。旅に送る親からしてみれば楽しい旅にしてほしいものだろう。



「夕日さん。まずは何をしましょうか」



王様と別れの挨拶を交わし終え、リサが夕日に喋りかけてくる。



「とりあえず、強い感情の持ち主に会いに行こうと思う。俺達のスキルの性質上感情がすごく大事になってくるからな」

「そうですね。でも、強い感情の持ち主って誰か心当たりはあるんですか?」



ティリサの質問はほぼ答えが出ていた。夕日はまだ天球に来てあまり経っていない。その夕日がそんな人知っているわけがなかった。



「いや、ないけど」

「私もそんな人聞いたことないですね」



早くも躓いたかと思われたがこの場にいるのは何も夕日とティリサだけではない。



「聞いたことあるぞ」



静まり返った場に声が響く。その声の主は王だった。



「本当ですか!?」

「ああ王都から南に少し行くと都市が見えてくる、そこにとても優しくてイケメンな人がいると聞いたことがある」



夕日は有力な情報を得られると思っていたが王からの情報はなんとも言えないもので、肩透かしを食らった気分になった。



「それのどこが強い感情の持ち主なんですか?」

「その人はただのイケメンではないらしい、もの凄く優しい爽やかイケメンなんだよ」

「爽やかイケメン・・・」



爽やかイケメンの名前的に、夕日が爽やかな感情を学べば使えるかはようになる魔法は風属性の魔法。風属性というと色々使えそうだ。

(その人が強い感情の持ち主かわからないけど、とりあえず行ってみる価値はあるかな)



「それじゃあ、とりあえずそこに行くことにします。それで、その都市の名前はなんて言うんですか?」

「ミステスだ」

「ミステス・・・」

「ミステスは自然豊かな都市でな、何回か行ったことがあるが、とても空気が綺麗だった印象があるな」

「それは楽しみではありますね」



夕日の返事を最後に場を静寂が支配した。別れの時がきた。



「・・・それじゃあ、もう行きます。わざわざ旅の資金まで用意してくれて本当にありがとうございます」

「いや、いいんだよ。私にできることといえばこのくらいだからな」

「本当にありがとうございます」



その後、夕日たちは王城の扉の前に来ていた。門の前にいるのは夕日とティリサだけ。ここをくぐれば夕日たちの旅は始まる。



「それじゃあティリサさん行こうか」

「その・・・」

「ん?」

「これから一緒に旅をする仲間ですし呼び方を変えたほうがよろしいかと思いまして。それで、私のことはリサと呼んで欲しいのですが」

「わかった。えっと、リサ」



ぱぁっと笑顔になったリサ。愛称で呼ぶことなど今までなかったリサからしてみれば嬉しくなるのも当然だった。



「それでは行きましょうか」

「おう」



夕日たちは門をくぐる。目指す場所はミステス。夕日たちの物語はまだ始まったばかり。

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