【五】
三人は馬に跨り次の町である高崎を目指していた。
相変わらず、街道沿いには田畑が広がっていて長閑で気持ちが良い。現実世界ではなかなか味わえない景色と馬に揺られて風を感じるというこの贅沢はゲームならではのものである。
高崎へは直ぐにやって来る事が出来たのだが、町の入り口では何やら見慣れない光景が広がっていた。それは、柵で覆われた大きな門とその向こうに建つ小さな小屋のような建物で、門や小屋の周りにはNPCではあるが侍のような格好した人間の陰が複数見ている。
直前で馬を止めた三人。その先頭にいた要は見慣れないその光景に目をやりながら、
「あれ、何やってるんだろ?」
不思議そうに呟いた。
門のそばには門番のように槍を構えた男性が二人、三人の方を睨むように立っており、その二人の間を抜けて行商人が街道へと出て来る。
「何だか関所みたいですね」
馬から降りた葵はそう言いながら、その門のところを一瞥し、自分の馬の腰の辺りを優しく撫でていた。それに倣うように男二人も馬を降りて道具の中へと戻した。
「仮に関所だとすると許可証が無い人間は通れないんじゃない?」
要は不安そう言う。それを葵が肯定しながら、
「もし関所だとしたら手形が無いと通れないですけど」
そう言った直後に、
「あ!」
と、何かを思い付いたように声を上げ、
「もしかして、手形が報酬になってるクエストがどこかにあるんですかね?」
要と同じように不安そうに呟いた。しかし、光だけはそんな二人の会話を聞きながら黙って数十メートル先の関所らしきものを見つめ、
「なんか、通る人の顔を見てる?」
そう、光の言葉通り、その関所を通過する人間は小屋付近にいる侍に顔を眺められてはその門の通過を許されているようだった。
「って事は、誰かを探してるって事?」
「多分」
見たままの事を言っているので、確証は無いのだが、それでも自分達が通過しても差して問題が無いだろうと思ったので、三人は平然と門をくぐり町の中へと足を踏み入れた。
例の小屋には役人のような侍が複数に経っており、門を通過してようとしている人間に対して次々話し掛けている。その例に漏れず三人にも中年の男性役人らしき人物が声を掛けて来た。
「アンタらは倉賀野から?」
「はい」
と、光が答えると、
「馬で?」
短い言葉で淡々と質問がやって来る。
「はい」
それに合わせるように、光もあまり無駄な言葉は使わないで返事をする。
「そう。アンタらみたいな冒険者には詳しく聞いてんだけどね?実は、最近この辺を漁り回ってる盗掘屋っちゅう集団がおるんだわ」
その聞き覚えのある名詞に後ろに立っていた葵と要が表情を変える。しかし、それに気付かない役人はそのまま話を続け、
「で、この顔に見覚えある?無ければ覚えておいて、どこかで見掛けたら知らせてほしいんだけど」
そう言って取り出した紙に書かれていた似顔絵は、前日にあの金山で出会った小太りの男の顔にそっくりだった。
三人の中でしばらく時間が止まったような感覚に襲われた。が、光がゆっくりと口を開き、
「実は、その男を見掛けたことがあります」
正直に話した。話した途端、周囲の様相は一変し、周りにいた役人達が一斉に三人の周りへと押し寄せると、
「詳しい話を聞きたいので、お城まで一緒に来ては頂けませんか?」
周りからのプレッシャーもあり、簡単には断れる雰囲気では無い事は分かっていたので、仕方なく了承し、三人は高崎の町の南側にあるお城へと連れられて行った。




