【二】
「まあ、俺も鍛冶をしてるところは見てみたいから、また聞いてみるよ」
光の言葉に葵は嬉しそうに頷いていた。
「そういえば、例のイベント今日からだっけ?」
ゴールデンウイークに引っ掛けた金山でのお金稼ぎイベントの話である。具体的に何をするのかという話などは町に立てられている看板には書いておらず、ゲームを開始した時に出て来るウインドウのポップアップにもタイトルと日付、時間くらいしか記されていなかった。
「時間的にはもうそろそろ始まる頃だとは思いますけど、詳しい事が書かれていなかったので」
途中で言葉を止めるようにして、ウインドウを開きもう一度確認をした葵は、すぐに視線を光へと戻して今度は首を横に振った。
「お金は確かに欲しいけどさ。昨日始めたばっかの俺達が参加出来るかって言われると怪しいよね?」
光は苦笑いを浮かべながら葵に言う。
ゲームがサービスを開始して時間が経っていれば経っている程、イベントという物に新人が参加出来る可能性が低いような気がする。物語の中盤以降に登場する町がイベントの会場になっていたり、そこにクエストを持っている人間がいたり、参加は出来ても敵が強すぎて倒せなかったり、最後まで完走することが出来なかったり。と、これらは全て光のイメージでしか無いのだが、
「貰える報酬が凄く価値のある物、例えば素材だったり、武器防具なんかだと参加出来ないかもしれないですけど、今回の報酬はお金ですから。強い人はそれだけたくさんお金を得るチャンスがあるとは思いますけど、新人さんも今現在必要な分くらいは稼げるようになってるんじゃないですかね?」
とても前向きで、それでいてプレイヤーに対して良心的な考えだった。
「でも、どっちにしても要さんを待った方が良いですよね?」
続け様に言った葵の言う通りだった。それを思い出した光は、溜め息と共に口を開き、
「流石にイベント行くってなった時にもう行って来たって話じゃアイツが可哀想だ」
一言呟いた。
「さっき話途中みたいな感じになっちゃったけど、製作系やってみる?」
鍛冶職人の話に逸れてしまい、肝心な話が途中だった事を思い出して、そう提案すると、
「はい、弓を自分で作ってみたいんですけど」
「なら、ちょっと話を聞くだけでも行ってみようか?要が来るまで暇だし」
という事で、鍛冶組合などが建ち並ぶ倉賀野へと移動することになった。
鍛冶組合の二軒隣に門を構える木工組合は、建物全てが木で出来た和建築そのものと言った感じの佇まいであった。しかし、やはり入り口の扉は常に開けっ放しの状態になっており、これはどこの組合も同じなんだなと逆に感心してしまう光だった。
建物の中にはやはり多くのプレイヤーが集まっており、木材を削る音や打ち付ける音など様々な音が鳴り響いているが、鍛冶で聞いた金属がぶつかり合う高い音とはまた違い、これはこれで素晴らしい音色であった。
「ここは平屋造りなんだね」
先に尋ねた鍛冶組合は二階建てであったが、こちらの木工組合は平屋建ての作りで、向こうと比べると高さが無い代わりに横に広いイメージであった。
「あの、光さん?」
建物の中を同じように見回していた葵から呼ばれ振り返ると、
「誰に話を聞けば良いんでしょうかね?」
「え……」
と、言葉に詰まってしまった。
そして、同時に思い出す。自分が鍛冶組合を訪ねた時は色々とあって、喧嘩の仲裁に入りそこで香香香と知り合い、そのまま組合の仕組みなどを教えて貰ったんだったと。だから、
「こういうとこって責任者とかいるのかな?」
そんな言葉が自然と口から出てしまった。




