【八】
松明を持つ要にはとても気合いが入っていて、後ろを続く二人にとってはとても心強いものだったのだが、結果的に言えばその道の先は行き止まりで、途中傷だらけの侍との戦闘が二度あっただけだった。今度こそ本当のお宝があるんじゃないかと期待していた要の足は重く、先程の三叉路へと向かっていた。
「お宝は簡単には手に入らないね」
彼からは自然とそんな言葉が漏れるが、
「まあ、金山だからって宝があるとは限らないって事だな。まあ、あの幽霊の話からすると別に金が取れなくなったから閉鎖したって訳でも無さそうだから、まだ掘ってみれば大量に出て来たりするかもしれないけど」
光の言葉に要は振り返って目を輝かせているが、
「いや、だからと言って掘ったりするなよ?」
冷静に止められ、またやる気を無くしたようにフラフラと歩き出す。
「でも、新町の立て看板に金山のイベントがあるって書いてありましたから、今にそういうこともするかもしれませんよ?」
ゴールデンウイーク用のイベントを思い出してそう告げた葵に、
「あ、そうだった!って事はまたそのイベントが始まったらここに来ないといけないね!」
楽しそうに要が言う。
三叉路に戻って来ると、
「別にキノコ置かなくても全然問題無かったね?」
手に持っていた松明を洞窟の壁に立て掛けるように置いた要は、残りの道を覗き込みながら言った。例の二人組が点けて行ったのだろう。そちらの道は明るく照らされてる。
「そうですね。もっと入り組んでると思ったんですけど、すぐに行き止まりになっちゃいましたから、必要無かったですね?」
発案者である葵は申し訳なさそうに言葉を作ったが、
「まあ、これからもっと広い迷宮もあるかもしれないし、こういう目印的な物は事前に用意しといた方が良いって事が分かって良かったじゃん」
光がフォローを入れた。
「目印になるものか……。白い小石かパンかな?」
再び足を進めながら要が言う。意味が分からない光は黙って彼の後を追い掛けるが、
「ヘンゼルとグレーテルですか?」
と、葵から言葉が返って来た。
「そうそう」
それから二人で童話や昔話について盛り上がっていたが、
「なんで、二人ともそんなに詳しい訳?俺、ヘンゼルとグレーテルって名前は聞いた事あるけど、詳しい話初めて知ったよ」
光が驚いたように話に割って入る。
「俺はおばあちゃんに絵本とか読んで貰う事が多かったからかな?」
「うちも童話とか昔話の本とかたくさんありましたね?」
そんな何でも無い話をしながら奥へと進んで行く。三人の予想通り、洞窟は奥へ進めば進むほど幅は広く、天井は高くなって行き、終点には迷宮でお馴染になりつつあるボスらしき人影が仁王立ちで三人を迎えてくれた。
腰に二本の刀を携えたその姿は侍以外の何者でも無いのだが、この洞窟で出会った他の侍と同じように彼もまた手傷を負い負傷していた。
「ちょっと技能覚えても良い?」
ボスのいるエリア前、ギリギリで足を止めた要が言ってウインドウを開いた。
「武器と防具は強くなってるって言っても一応ボスだからね?油断せずに準備はちゃんとしといた方がいいな。回復もちゃんとすぐ使えるようにしとけよ?」
「それは、葵がちゃんとやってくれるから大丈夫!」
名前を呼ばれた葵は、同じようにウインドウを開いていたが、
「あんまり過信はしないで下さいね?私もすごい回復出来る技能がある訳じゃないので」
苦笑いで伝える。
「治癒矢だっけ?弓の技能で回復ってアレしか無いもんね?」
要は言って、再びウインドウに目を向けると、
「バフとデバフ担当なら、光が回復もしてくれれば良いじゃん!」
唐突に話を振られ、
「お前、何も考えずにただ攻撃したいだけだろ?」
光も葵と同じように苦笑いを浮かべて返事をした。
「師匠の綱親さんに縮地の中距離戦闘教わったんでしょ?それが実践出来ればダメージ受けにくくなるんじゃないの?」
「いや、いかんせんまだ技能ポイントが少なくて縮地に全然振れないんだよ」
同じ技能にポイントを振る事で様々な恩恵、メリットが受けられるのだが、まだまだ実用的に使えるまでにはレベル上げが足りない。だからこそ、今、目の前にいるボスを倒して経験値を稼ぐ必要がある。
準備を終えた三人はボスの正面へと立ち、ゆっくりと深呼吸をした。
『戦闘開始!』




