【六】
箱を持って二人の元にやって来た要から中身を披露された二人は、光から葵へと渡ってそれを確認する。特別、石や宝石などに詳しい訳では無いが、
「金鉱石って言うやつですかね?」
聞き覚えのある単語を葵は口にしていた。
「なるほど。さっきの二人組がこの金山に忍び込んでこれを掘って盗もうとしてたって事かな?」
辺りを見回しながら要は言うが、
「それにしても逃げ足の速い敵だったな」
と、光が口を挟んだ。
戦闘が始まる前に感じた違和感と戦闘を中断して離脱する行為、そして要が倒した筈の敵の姿が消えなかった事に違和感を覚えながら先程の戦闘を思い出していた。
そんな光を置いて、
「これって商店に売ったら良いお金になるのかな?」
と、要は嬉しそうに言っている。その相手をしている葵は、
「どうでしょう?金が入っている石ですからね?この中から金を取り出す作業ってのが結構面倒な筈ですから、あんまり期待しない方が良いんじゃないですか?この石全部が金の塊だったら相当高いでしょうけどね?」
笑いながら言った。
その話を聞いた要は残念そうにしながらも自分の道具の中に金鉱石をしまって、
「とりあえず、町に戻ってからの楽しみが出来た!」
「ってかさ、それ俺らが持って帰って良いの?」
今まで要が持っていた金鉱石は既に彼の道具一覧へと並んでいるが、それが元々あった要の右手を指差して光は言った。
「え?敵を倒した後に落とした箱に入ってたから良いんじゃないの?きっと戦闘報酬だよ!」
「そうですね。多分、大丈夫だと思いますよ?もし大事な物だったり、誰か別の人の物だった場合は商店でやり取り出来ない筈ですしね?」
葵も要に同意した。それを聞いて光は納得したように頷いたが、
「ここがリアル過ぎてついつい現実を引っ張り出しちゃうけど、ゲームなんだもんな?」
改めてそんな事を言い出した。意味が分からずに二人は黙って聞いていると更に続きが聞こえて来た。
「俺が今まで遊んだことあるゲームのロールプレイングゲームってのはさ、自分は世界を救う勇者で人の家に勝手に入り込んでタンスからお金を盗んだり、樽や壺を割って中からアイテムや武器を盗んでも許される世界だった訳じゃん?」
それを聞いて葵はフフッと笑う。
「同じゲームなんだけど、ここは自分が中に入って実際に体験するゲームで、この世界の住人も普通の人間と変わらない、だからついつい現実世界寄りの考えになっちゃうから、さっきみたいな事は出来ないなって話」
先程笑っていた葵が、
「光さんは真面目ですね。ゲームの中なんですからもう少し気軽に遊んでも良いんじゃないですか?と、言っても私もこの世界で人の家からお金を持って来れるかって言われたら無理ですけどね」
そう言って、三人で笑い合った。
突然の戦闘の為に本来の目的を忘れていた三人だったが、道を進み分かれ道まで来た所で足が止まった。そこは先程自分達がやって来た場所では無いと気が付いたからだ。確かに今来た道を含めて三つの道が交差する三叉路のようになっている事は間違いないのだが、
「なんで、向こうに行く道が二つある訳?」
先頭の要は、自分達の進行方向に二つの別れ道がある事に疑問を感じていた。入り口から奥へと向かう時にやって来た三叉路も進行方向に二つの別れ道があり、右と左どちらに行くのかという会話をしたのだから間違える訳がない。
来た道を戻って来た筈ならば進行方向には入り口へと戻る道が一本。そして、Uターンをするようにもう一本の道が無ければおかしいのだ。
「ここがさっきの場所じゃないって事だけは確かだな」
辺りを見回しながら光が言うと、
「なんで迷宮は地図が使えないかな」
不服そうに呟く要をなだめるようにして、
「まあまあ、とりあえず、この来た道に何か目印を付けて他の道に進んでみませんか?」
葵の提案に乗った要は、
「うん、冒険感があるからそれを採用しよう!」
と、テンションを上げながら道具一覧を開き、
「クエストで集めたキノコの余りがあるから、これで良い?」
松明の明かりに照らされて、より不気味に輝く真っ白なドクツルタケを岩の陰にちょこんと置いた。




