【八】
その後、山賊との戦闘を三回ほど終えた要は、
「なんか、この攻撃がパターン化してるね?」
まず、敵に気付かれないようにある程度の距離まで近付き、光が葵にバフを掛け狙撃を狙う。その攻撃を受けて三人に気付いて近付いて来る三人を迎え撃つ為にバフを受けた要が縮地で一気に近付いて敵の足を止めながら近接戦闘を行う。足の止まった敵を葵が弓で体力を少しずつ減らし、光もデバフで攻撃力や防御力を下げる。そのまま体力を削り切って戦闘終了となる。
こちら側が受けるダメージも少なく安全に敵を処理出来る為、効率が良い。しかし、
「敵の組み合わせも同じだからね?」
全ての戦闘での相手が、刀を持った山賊三人のグループだった事を考えながら光は言った。彼は、隣を歩く葵を見ながら、
「こっちには遠距離で攻撃出来る葵がいるからある程度有利に進めるけど、この先進んで行くと相手にも弓を使う奴が出て来る可能性もあると思う。あの山賊だって爆弾とか使って来たしね?飛び道具には注意しておいた方が良いかも」
「確かに弓持った敵が十人とか出て来たらどうしたら良いか分かんないもんね?」
大真面目で答える要に、
「バーカ」
と、光は笑いながらではあるが、短く返した。
「でも、もしそういう状況になったらどう対処するのが良いんですかね?」
葵は、これから先の戦闘で遠距離攻撃をして来る敵に遭遇した場合の話をしていたのだが、
「え、弓が十人?」
光に言葉通りに受け取られてしまい、
「十人とは言いませんけど、遠距離攻撃が敵にもいたらどうしたら良いのかな?って」
訂正しながら説明すると、光は少し悩んでから、
「うーん、盾とかがあれば防ぎやすいとは思うんだけど、今の所見たことないしね?」
そう言うと、更に続けて、
「鎧みたいなものを装備するか、矢を避けるような技能を覚えるしか無いんじゃないかな?」
遠距離攻撃の対処の仕方について話しながら足を進めると、一つの立て看板が三人の前に現れた。それは右側の遥か下を流れる川についての説明のようで、緩やかに右に曲がりながら流れて来る川に出来た大きな淵にはどうやら『花魁淵』と名前が付けられているようで、
「怪しいな」
看板を見ながら光が呟く。それに同調して、
「怪しい」
と、要も言葉を漏らした。そんな二人の事を笑いながら見つめていた葵が、
「確かにここまで名所みたいなところに看板なんて立てられてませんでしたけど、もしかしたらここが有名な観光スポットかもしれませんよ?」
「長い川にある一か所の淵だけが観光名所って中々無いと思うんだけど?」
光も笑ってそう返すと、
「それに」
と、言葉を続け、
「ああいう淵ってのは上流から流れて来たものが溜まりやすいから、怪談とかになったりしやすいんだよ?」
わざと無表情を作って要を見つめる。
「いや、ゲームだから!実際にそういうとこが例えあったとしてもこれはゲームだから!」
怯えた要は慌ててそう言うが、全く聞いていない葵は山道の端まで足を運んではギリギリに立っては下を見下ろし、どこかに川へと行ける下り口が無いかをを探す。それに気付いた要がすぐに、
「え、下りるつもり?」
と、再び声を上げると、
「当然です!赤い着物を着た女の人の正体を暴かないといけませんから!」
「光さん光さん、ちょっとあの子が熱血ジャーナリストみたいな事言ってるんだけど、止めてあげてくれない?」
要から言葉を受けた光は、鼻でフッと笑いながら、
「いや、お千代さんのクエストだから行くよ?要も怖いかもしれないけど、しっかりついて来いよ?」
「マジかあ……」
そう呟く要の肩を叩いて、前に出ている葵へと近付く。光も同じように辺りを見回してみるが、
「下りられそうなところは無いな?」
「馬で駆け下りてみます?」
中々の急斜面を目の前にして葵が大胆な事を言うので、光は驚いて一瞬リアクションが取れなかったが、すぐに落ち着いて、
「本気で言ってる?」
冗談であると捉えた光は笑顔を見せながら言ったが、どうやら彼女は結構本気でその案を提案した様で、
「戦国時代じゃないですけど、源義経が一ノ谷の戦いで鵯越の逆落としってのをやったんです!だから、私たちにも行けますよ!」
「あ、それ知ってる崖を鹿が下ってるのを見て馬でも行けるって奇襲仕掛けたやつでしょ?」
「そうです!それです!」
「義経が出来たから、俺らにも行けるっていう自信は分からんけども、このゲームの馬は優秀みたいだしやってみる価値あるかもね?」
光のそんな言葉に要は言葉を失い、葵は逆にやる気満々で自分自身に気合を入れている。
馬に跨った三人は、先頭から光、葵、要の順番で並んでおり、一番後方にいる要が、
「俺、遊園地に行っても楽しめるアトラクションって限られてるんだよね」
突然、そんな報告を入れて来る。しかし、二人からの返事は無く、
「幽霊的なものが怖いからお化け屋敷は行けないでしょ?で、絶叫マシーンも苦手なんだよね?高いとことか速いものも苦手だから」
その言葉を聞き終わる前に光は馬を走らせた。




