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群雄割拠のアレとコレ  作者: 坂本杏也
向き不向きと職人の道
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【四】

「闇市場か」

 先程聞いた言葉を頭で反芻しながら口にも出してみる。あまり良い響きでは無いが、ゲームのシステムとして存在しているのであれば悪い事では無いのだろうと思いつつも、もう少し他の名前があったのでは無いかと考えながら要との合流場所へと向かう。

 町に入ってすぐのところに立てられている看板の前には既に葵も戻って来ており、

「光さんは、休憩取らなかったんですか?」

 と、尋ねられたので適当に返事をして今、聞いたばかりの新しい情報を三人で共有した。


「そっかあ」

 と、納得したけれど残念そうな声を上げたのは要で、彼は更に続けながら、

「まあ、でも素材を集めるにもある程度行ける範囲が広い方が良いし、買うとしてもお金が掛かっちゃうからな。今日始めたような奴がいきなり製作業に手を出すのは厳しいって事か」

「でも、闇市場ってのがあるんですよね?」

 その場に座り込む要から視線を光へと向けた葵が明るい声で言った。

「あるって事は教えて貰ったんだけど、詳しい場所とかは聞いてないんだよね。まだ露店をやってるだろうから詳しい話を聞きに行ってみようか?」

 光の提案で再び、香香香みかの元を訪れてみたが、最初からそこには何も無かったように地面に敷かれた布もその上に置かれていた沢山の武器も彼女が座っていた木箱も彼女自身の姿も綺麗に居なくなっていた。先程、別れてからまだ数分しか経っていないというのに。

「あれ?おかしいな。もう店仕舞しちゃったのか」

 困ったという様子で頭を掻く光は、軽く辺りを見回してみるが当然彼女の姿は無い。

「また聞き込みして自分たちで探しましょう」

 前向きな葵に背中を押され、とりあえずは新町から運んで来た荷物を渡そうと目的の人物を探すことになった。


 目的の人物は製作通りの端に建つ大きな商店の店主であった。

 常に開けっ放しになっている入り口を潜って中に入ると、奥の方、大きな座布団に太々《ふてぶて》しく腰を下ろした小太りの男性がおり、その周りを若い男性が忙しそうに何やら作業をしている。

「ここは何の店?」

 要が不思議そうに呟くのも無理は無く、店の中に広がっているのは紙に包まれた何かや箱に入った何かなど、商品というよりは品出しの前のような状態になっている。

 周りを駆け回る男性たちはそれを持って店から飛び出したり、作業を進めたりという事で三人に気が付いても何か話し掛けたりする様子は無く、小太りの男性が気が付くまではその場でそんな状態の店内を眺めたまま時間が過ぎていた。

「おや、どうしたました?」

「あの、荷物を預かってるんですが」

 要がそう言って荷物を男性へと渡す後ろで、

「ここってもしかして飛脚問屋ですかね?」

 店主に聞こえないような小声で葵が光へと話し掛けていた。

「時代劇とかで見る箱を持ってふんどし一丁で走ってるやつ?」

 葵は少しだけ笑いを零しながら、

「そうです。でも、これも江戸時代に入ってからの文化な筈なんですけど、何か作らないといけない事情とかがあったんですかね?」

 不思議そうに呟きながらまじまじと店の中を見つめていた。


 クエストを一つ終え、報酬を貰った三人は飛脚問屋の店主へ質問を投げ掛けた。闇市場という単語とはあまり関係が無さそうな業種ではあるが、

「闇市場に顔を出したいんだけど、どこにあるか知ってます?」

 代表して要が聞く。すると、男性は慌てたようにしながら、

「どこで聞いたか知りませんけど、むやみやたらにその言葉を出したらいけませんよ?」

 睨み付けるような表情で言った。彼はその表情を崩さずに声を落として更に続けた。

「闇市場というのは確かに存在してます。武器屋や防具屋など置いてある物よりも少々質では劣りますが、それでも価格がかなり低いです。そういう事もあって、この周りにある武器防具の商店さんは、あまりというか、全く良い顔はしません。当然ですよ、商売敵ですからね」

 闇市場についての説明に三人は黙ったまま頷く。

「ですから、彼らには分からない方法で市場が開かれているんです」

 彼はそう言い終えると、先程まで自分が座って居た座布団の方へとゆっくりと戻って行く。どこにあるのか、一体どうすれば利用が出来るのかなどを聞きたかった三人は、彼を呼び呼び止めようとした瞬間、目の前に大きなウインドウが出現し、『闇市場が使用可能になりました』と表示された。


 店の外に出て一斉にウインドウをいじる三人。

「実際に市場がある訳じゃないのね」

 要が指を動かしながら呟くと、

「まあ、このシステムならプレイヤーにしか行けない訳だから、武器とか防具を売ってるNPCには絶対分からんよな?」

 感心したように光が返した。彼の見つめるウインドウには攻撃力などの性能や値段、更には製作者など細かい検索が出来るような画面が表示されている。そして、隣に立つ葵の画面には『新着順』と書かれて多くの弓が並んでいた。一番左端に並んだ弓を詳細で見て、

「傷有りとか粗悪品とか書いてあって少し性能は落ちてますけど、大分安いですね」

 嬉しそうに声を上げた。

「でも、今持ってるのより強いよ!」

 と、要。

「レベルで装備できる制限が掛けられてるのもあったりするんだな。あとは属性があったり」

 そう呟いた光は、何かを思い出したように、

「あっ!」

 と、声を上げると、嬉しそうに何かを検索し出した。

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