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群雄割拠のアレとコレ  作者: 坂本杏也
催し物と出雲阿国
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【五】

 要の提案で音声チャットをパーティー限定に設定して、三人がバラバラに聞き込みに向かう。

「この設定にしておけば、離れてても喋れるから!」

 光の耳にそんな言葉が聞こえて来るが、当然そばに要は居ない。少し不思議な感じはするが、これはこれで便利なので良しとしようと思っていたが、

「こんにちは!この町で冒険者の手を借りたいって言ってる人知りません?」

 更に続け様に、

「すいません。少しお話し聞かせて貰えますか?」

 要に続いて葵が町の住人に話し掛ける声が聞こえて来る。三人で会話をするというよりもそれぞれの発している言葉がそのまま筒抜けになっているので、慣れるまでは少し違和感を感じてしまうかもしれない。しかし、二人がしっかりと情報収集をしている事は間違いないので、光一人がサボる訳にはいかず、

「すいません、この辺に困り事や厄介事を抱えてる人知りませんか?」

 適当にすれ違ったNPCに尋ねる。

 現実世界でこんな事を聞いたら、こいつは何を言ってんだ?と、怪訝けげんな表情でジロジロと見られるのがオチだと思うが、そこは流石にゲームの中という感じなのだろうか。NPCは優しく笑い掛け自分たちの知っている事を色々と話してくれた。


「素材集めと材料集めのクエストか」

 光は、独り言として呟いたつもりだったのだが、

「こっちもそんな感じのばっかりだった。荷物運んでくれとかね?」

「ああ、まあ、荷物運ぶのがこの先の町とかなら受けとくのもありかな?」

 要の返事に少しだけ動揺しつつも、冷静に言うが、すぐに否定を入れた。

「あ、でも荷物届けた後にここに戻って来ないと報酬貰えないとかだとちょっと面倒だな」

 長政に馬を貰ったので歩きよりは移動時間も大幅に短縮されたはずなのだが、報酬を受け取る為に町を馬で往復するとなると少しだけ二の足を踏んでしまう。

 そんな中、

「え、本当ですか?」

 という葵の声が二人の耳に届く。彼女は、

「それはどこに住んでる方が言ってるんですか?」

 と、続けると、話し相手であろう人にお礼を言った。

「あの、今聞いた話なんですけど」

 すぐに男二人へと声を掛ける葵だが、

「あ、ちょっと待って下さい。一回集まってからにしましょう!」

 珍しく彼女主体で集合場所が決められ、要と光はすぐにその場所へと向かった。


 新町に入ってからの街道で唯一の脇道があったその場所。三人で人混みを掻き分けて立て看板を覗いたあの場所にもう一度戻って来た。商売人や冒険者、看板を見る人に買い物帰りの人など、相変わらずの人混みで、ゆっくりと話も出来ないと考えた要が、

「一回どこかに入って聞いて来た情報まとめる?葵の話も詳しく聞きたいし」

 彼の提案によって一番近くにあった食事処へと入る事になった。

 三人が商店へと足を踏み入れるのはこれが初めてで、峠のお茶屋で団子を食べた時は外の長椅子で済ませてしまっていたし、新町に来てからも覗くだけで通り過ぎてしまっていた。

 中に入ると、女将さんと呼ばれていたふくよかな女性に声を掛けられ、

「あの、個室みたいなところってあります?」

 要がそんな注文をするので、後ろをついていた二人はお互いの顔を見合わせる。

「それじゃあ、お二階にご案内いたしますね」

 バリアフリーなんて言葉からはほど遠い鋭角な階段は、何年も使っているんだろうと感じさせる焦げ茶色をしており、足を掛けるとギシギシと音が響くので一つ上の段を手で掴みながらでは無いと不安で上れないような代物だった。

 しかし、二階にあった襖で区切られた個室は予想以上にしっかりしており、時代劇に出て来る反乱分子による悪巧みの決起集会などがひそかに開催されているであろう雰囲気をかもし出していた。


 女将が居なくなった後、

「なんで個室?」

 そう光が要に尋ねると、

「情報は大事な財産だからさッ」

 親指を立てながらドヤ顔で言うので、軽く頭をはたく。

「綱親さんと話してる時にそんな話題になったのよ」

 そう言う要は自分の頭を軽く撫でながら続け、

「清綱さんの口癖なんだってさ」

 それを聞いた二人は、「ほお」とか「へえ」と声を上げた。

「情報は財産か……知将っぽい言葉だな」


「とりあえず、俺と要のクエストはさっきも言ったけど、素材集めとかおつかいばっかりだった。素材とか材料はどこで手に入るか分からないから受けといても良いかな?って思ってる。おつかいの方は、届ける場所によるかな?」

 そこで光の視線は葵へと向かう。

「あ、えっとですね?」

 要からもほぼ同時に視線を受けた葵は、何故か少し小声になって、

「さっき私が指定した集合場所があったじゃないですか?」

「ああ、あの立て看板のところ?」

 その小声は伝染するようで何故か相槌を打つ要まで小声になっている。

「そうです。あそこに細い脇道があったじゃないですか?あの向こう側に宿屋があるらしいんですけど、そこの従業員の方が幽霊を見たって話があるんですって」

『幽霊?』

 意外過ぎる単語に男二人は声を合わせて反応する。

「で、その幽霊を見たって場所が」

 そこまで言うと思わせぶりな態度で少しだけ溜めて、笑顔を作る葵。

「え、何々?」

 要が不安そうに聞くと、

「その場所が、黒川金山の近くなんですって!」

「おや?」

「おやおや?」

 三人はそれ以上何も言う事無く、お互いの顔を見ながら笑みを零すばかりであった。

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