【三】
作品のタイトルを聞いた柴田は、
「じーおーゆー?」
英語読みでは無く、明らかに日本語の発音でそう呟いた。そして、そのまま言葉を続け、
「それは何かの略称?」
「いや、違うと思うんだけど」
自信無さそうに返した中道は、持っていたタブレットですぐに調べ始め、
「えーっと、その武将の名前を貰えるっていうシステムから来てるらしいんだけど、名前って意味の号から取ってるみたい。でも、読み方はジーオーユーで合ってるっぽい」
「へえ」
感心したように相槌を打った柴田はそのまま黙ってしまった。同じように中道も無言のままタブレットをいじっている。これが昼食を取った後の普段の二人で、何も珍しい事はない。どちらかと言えば、今日のゲームという話題で少々盛り上がった事の方がレアなケースなのである。
昼休みも残り十分となって、先程よりも更に人気が少なくなった食堂であったが、ゲームの話題で盛り上がっていたもう一つのグループは、未だに何やらだらだらお喋りを続けている。
「興味はあるんだけど、しばらくゲームをやってない人間でも大丈夫なものなのかね?」
ふと柴田が呟いた。黙ったまま考え込んでいたのは結局、『G.O.U』についての事だったようで、それが分かった中道は嬉しくなって、
「大丈夫なんじゃない?結構、意識しないで身体とか動かせるらしいし、むしろゲームを操作してるって感覚が無いからゲームをプレイしたこと無い人とかしばらくプレイしてない人の方が向いてるかもね?」
柴田を乗せようと言葉巧みに助言を繰り返す。そして、取って置きは、
「そういえば、ゴールデンウイーク前に追加分の発売が始まるみたいで、予約の方はもうとっくにいっぱいになっちゃってるんだけど、家電量販店とか大型ゲームショップとかだと当日分も結構な数用意してるみたいだから、並べば買えるんじゃないかな?」
その言葉を受けた柴田は、テレビで流れていたあの映像を思い出し、苦笑を浮かべた。
まさか、自分があそこでインタビューをされていた人たちと同じような立場になるとは思わなかったという笑いだったのだが、
「もし俺がやるって言ったら、一緒に始める?」
全く何も知らない自分一人で始めるよりは、中道を道連れにして、ある程度ゲームの情報を持った状態で始めた方が躓く事が無さそうだと判断したからだ。新しい事を始めた後、何か大きな壁にぶつかって挫折してしまうと、そのまま二度と再開しないという事が多々ある。これはある程度年齢を重ねてしまったせいなのだろうが、保険というものを備えるようになる。
「まあ、俺も興味あったからさ、柴田君が一緒にやってくれるって言うなら是非にって感じなんだけど?」
笑顔で返した。
当然、興味が無ければ事前に情報をこれだけ知っている事も無いだろうし、柴田の為にタブレットを取り出して動画や記事を検索したりはしないだろう。
それならば、最初から一緒にゲームをしようと誘ってくれれば良かったものをと柴田は思ったが、先程のゴールデンウイークの予定の話をしていた時の事を思い出して、反省する。旅行に行こうという誘いなどをことごとく断ってきたのは自分なのだと。
だから、今回はと、
「大型連休はどこに遊びに行っても人ばっかりだろうから、ゲームの中でのんびりするとしますか?」
少し遠回しではあったが、
「うん、何か久々に休みにやる事が出来たかもしれない」
と、中道はテンション高めで返事をくれた。
「あ、柴田君。ソフトとハード合わせて七万円くらいするから覚悟してね」
「値段もさすがに最新って感じだ」
苦笑いを浮かべた柴田は、自分の目の前に置かれたトレイを手に取りながら、
「じゃあ、そのお金を稼ぐ為に午後の仕事も頑張りますか?」
言うと、
「別にうちの会社歩合制じゃないけどね?」
という中道のツッコミが返って来た。
「変なとこ真面目だな」
二人はトレイを片付けて食堂の出口から自分たちの部署へと戻って行った。
17.04.16 誤字修正、内容修正




