【十九】
「でも、イツツバくんがやる気を出してくれたのは良いことだよね?」
隣を歩く茜音に対してシロが言う。その言葉は当然、音声チャットを通じて兵藤にも聞こえているが、彼は気にしていないようで、
「まだまだ組んだばかりのパーティーだけどさ、イツツバくんが動いてくれるとスムーズに行く気がするんだよ?」
それを聞いて茜音はあることを思い付いたが、口には出さなかった。しかし、自分が思っていたことがそのまま音声チャットから聞こえてきた。
『オブラートに包んでるつもりかもしれんが、アイツが文句を言い出したら面倒ってことだろ?実際の年齢は分からんが精神年齢はアイツが一番低そうだからな』
「それが分かってるなら兵藤さんはイツツバくんから目を離さないようにお願いしますよ?その為の兵藤さんなんだから」
『お前は俺のことをなんだと思ってんだ!』
そう聞こえた直後、プツンという音と共に兵藤の声は聞こえなくなった。シロが茜音の方を見るので、彼女も視線を合わせて首を傾げる。
「多分、向こうで音声チャットを一時的に切ったんじゃないかな?あんまり筒抜けでも気持ちいいもんじゃないからね?」
そう言うと、
「もしくは、僕たち二人の悪口を言ってるか、ただ単に機嫌が悪くなっただけか」
そう付け加えて悪戯っぽい笑顔を向けた。
どう返して良いか分からない茜音は、
「えっと、私たちはどうやって情報収集します?」
自分の話を流されているにも関わらずシロは表情を変えずに、
「茜音さんはどう思う?」
と、聞き返す。
「えっと、やっぱりこういう世界になってもゲームはゲームだと思うので、情報が集まる場所っていうのが絶対にあると思うんです」
少しずつ言葉に熱がこもっていくのが分かる。だから、シロは静かに頷いて続きを催促する。
「RPGでの情報収集の定番といえば酒場なんですけど……」
言った茜音は辺りを見回すようにしてそれらしき建物を探してみるが、
「この近くには無さそうですね」
「じゃあ、町の中をブラブラして酒場を探そうか?その間にこの町の大体の施設の場所も覚えるでしょ?」
シロはそう言って笑うと、
「あとでイツツバくんがアイテム欲しいとか武器見てみたいとか言うかもしれないからね」
嬉しそうに言った。
アイテムショップも武器屋も情報収集も兵藤とイツツバの二人に先を越されてしまうかもしれないなんてことは、彼は一つも考えていないようであった。




