【十八】
「なんだよ!絶対茜音と一緒の方が楽しかったよ!」
もう手を引かれてはいないが、兵藤の後を追うイツツバの足取りは重かった。そんな様子をわざわざ立ち止まっては振り返り、
「良いから行くぞ?」
と、声を掛ける兵藤。ひた向きな姿ではあるものの、いつまでもウダウダと文句を聞かされるのも面倒だと、
「組分けはもう終わったことだぞ?それをいつまでもぐだぐだグズって何の得になる?」
そう言った彼は一歩ずつゆっくりとイツツバに近づき、
「お前はもう少し冷静になった方が良い。この状況で自分が出来るベストを選択した方がこれからの冒険に繋がるとは思わんのか?」
言葉の意味が分からないイツツバは黙ったまま聞いている。
「今現時点での茜音によるお前の評価はお世辞にも良いとは言えないのは理解出来るな?」
イツツバは不思議そうな顔をして、
「茜音は別に嫌がって無かったと思うけど?」
本当に気が付いていないのか彼は、大真面目だ。だから、兵藤は溜め息を吐きながら、
「嫌がってなかったら、あそこでお前と揉めてないだろ?同じパーティーを組んだのも茜音の優しさだと思った方が良いぞ?」
「マジかぁ」
と、イツツバは声にならない声を吐き出して肩を落とす。
「あまり良くないという立ち位置から少しでも心象を良くするには、今、何が出来るんだ?」
返事は無いが黙ったまま頭を抱えて考える彼は、
「茜音の中の俺がどれだけ実際と違っているかをコンコンと説教する?」
「バカか!今、俺たちは何をしてるよ?」
「だから、アレでしょ?シロが言ってた色々な手掛かりみたいなことでしょ?」
「分かってるじゃねぇか。これからの冒険に役立ちそうな有益な情報をアイツらのところへ持って行ってやれば、茜音とシロのお前への評価も間違いなく上がるだろうな?」
「なるほど!よし、やるぞ!」
兵藤の口車に上手いこと乗せられたイツツバは一気にやる気を出し跳び跳ねて喜んでいるが、
『ちょっと、兵藤さん。あんまり変なこと言ってイツツバくんを焚き付けないようにね?』
いつの間にか通じていた音声チャットでシロから注意が飛んできた。しかも、どうやら設定でイツツバへは聞こえないようにしてあるようで、彼は何も知らないまま適当なNPCに話し掛けている。
「そう思うなら、どうしてチャットでアイツにも教えてやらないんだよ?」
兵藤はそんな姿を見ながら、音声チャットの向こうにいるシロと茜音に苦笑を浮かべながら溢した。




