【十六】
イツツバの言葉は茜音も含めた二人の総意であるのだが、
「その気持ちはよく分かるが、コイツが正気に戻るまでちょっと待ってろ」
大きな溜め息を吐き出しながら兵藤が大袈裟に言う。
「失礼だな。確かに日坂のこの様子には納得いかないけど、正気に戻らないといけないほど、自分を見失っていたかい?」
「一般人はそもそも日坂という宿場町に対して何かを思うことが無いんだよ」
呆れたように兵藤が返した。
茜音もイツツバも町を見てテンションが上がったのは事実だが、日坂という宿場町が実際に存在していたことは知らない。しかし、そんなこと関係なく二人は町の中心地の方へと指を伸ばして、何かを言いたそうに兵藤へと訴え掛けるそんな顔をしている。
「雨の日に捨てられてる野良犬みたいな顔だな」
それを見て素直な感想を溢す兵藤。その例えがツボに入ったのか顔を両手で覆いながら肩を震わせてクスクスと声を漏らしていたシロであったが、遂に我慢出来なくなり、プレイヤーの行き交う日坂の町の中で爆笑してしまう。
「そんなにか?」
と、何故か照れ臭そうな兵藤。
しばらくヒーヒー言っていたシロであったが、
「もう、なんか色々良い意味でどうでも良くなった」
と、明るく言い放ち、近くにいた兵藤の肩を抱くと、
「よし、何でも良いからゲームの情報を聞き込みするぞ!」
肩をホールドされている兵藤は、微妙な顔をしているが、茜音とイツツバは待ってましたと言わんばかりに、
『おー!!』
と、声を上げた。
まだ冒険のぼの字も始まっていない段階で色々なことが起こる自分のパーティーに先行きが不安になる兵藤であったが、思い返してみれば自分たちが出会った切っ掛けも中々普通ではなかった。
このパーティーはそういう運命なのだろうと何かを悟り、
「そういうことなら手分けした方が効率が良いだろう。パーティーを組んでいれば離れてても会話が出来るから、パーティーでの音声チャットをオンにしとけ」
何げなく聞こえた兵藤の言葉に、
「詳しいなー」
と、三人を代表してイツツバが声を上げる。
「ん?ああ、ゲーム雑誌か何かの記事をネットで見たんだよ」
「なんだ、全然楽しみにしてない感じだった癖に意外と事前に下調べしてるじゃん!俺より全然詳しいもん」
更に驚いたように言うと、
「いや、お前はもう少し下調べをした方がいいぞ?」
冷静に突っ込まれた。




