【十】
「ゲームを始めた理由は、このゲームの世界観が戦国時代ってところかな?歴史好きとしてはどういう風に再現されてるのか知りたいからね?」
そう言って嬉しそうに笑う。
「やってみたいことは勿論、全てを楽しむこと」
どこまでが本気なのか分からないが、本人が歴史好きと言っている以上、一般人が楽しめないようなことも楽しんでしまうに違いない。例えば、武器である刀の細部のディテールであったり、その当時の人々が生活していた民家の造りであったり、歴史好きにしてみれば天国のような設定なのだ。
しかも、このゲームの核となる号は、テレビやラジオの広告で、『貴方も戦国武将になれるかも?』という宣伝文句と共にイチオシされており、
「運が良ければ号も取れるかもしれないし」
案の定、シロもその存在がゲームを始めるに至った最たる理由なのであろう。だから、
「どういう事をやったら取れるのかっていう条件みたいなものがあるらしいんだけど、それは公表されてないんだって、自分たちで見つけてくれって話みたいだけど、中々そんなの見つけるの大変だよね?でも、まあそれぞれの武将ごとに条件は違うらしいから、普通に冒険してたら誰かの条件をクリアって事もありそうだけど……」
そこまで言って他三人の視線に気が付く。
ここまで冷静な状況判断と丁寧な言葉遣いで落ち着いて喋っていたシロが急に早口になり、ゲームのシステムについて熱く語っている姿は、まだほとんど時間を共有していない三人でも『ん?』と思う光景であった。
「あ、いや、まあ……」
と、歯切れ悪く頭を掻くシロは、どうにかしてこの場の空気を変えねばと思い、頭をフル回転させて一つの話題を見つける。それは、四人全員の自己紹介が終わり、その中でそれぞれのゲームの中でやりたいことがあまり明確では無かったという事だ。
「四人のゲームの中でやりたい事が分かった訳だけど、イツツバくんも兵藤さんも俺もとりあえずゲームを楽しめれば良いって感じなのかな?」
シロは言いながら二人を見ると、肯定の頷きが返って来る。
「って事は……」
今度は茜音に視線を向け、
「綺麗な景色を見ながらのんびりと冒険をするっていう茜音ちゃんの意見に全員のやりたい事が含まれるって感じで大丈夫?」
そう言って何故か茜音に訊ねるが、既に彼女のやりたい事が入ってしまっているので、彼女には肯定も否定もする権利が無い。そう分かっているので何もリアクションをしないようにしていたが、
「私は綺麗な景色を眺めて、皆でお弁当とか食べたいですけど?」
気付かない内に自分でも良く分からない言葉が口から出てしまっていた。




