【九】
「もう全員分かってると思うけど、俺の名前はイツツバ。本当は四つ葉のクローバーからヨツバって名前にしようと思ったんだけど、なんか女の子っぽいかな?って理由でイツツバにした!」
言いながら何故か嬉しそうな彼は、
「それに五つ葉は金運が良くなるって聞いたから、ゲーム内でお金持ちになれる感じでちょうど良いでしょ?」
と、続けた。
聞いている三人からしたら、何がどういう風にちょうど良いのかは分からないが本人が満足そうなので黙ったまま話を聞く。
「俺も茜音と似たような感じなんだけど、違うのはテレビのコマーシャルで見たってとこかな?確か、深夜でやってたアニメの枠で流れてたと思うんだけど」
「運営側からのアンケートじゃないんだから、そこまで詳しく説明しなくても良いぞ」
と、兵藤からヤジのようなツッコミがやって来る。イツツバはあまり良い顔はしなかったが、すぐに表情を明るいものへと戻すと、
「このゲームでやりたかった事は、とにかく楽しむこと!知らない世界を細かいところまで探索してみたいし、自分の体で刀を振り回してもみたい。甲冑とかあれば着てみたいし、色んな人と交流したい!」
彼は、そこで一度間を置くと、三人の視線を更に集めようと小さく咳払いをして、
「その為に、一緒に冒険をしてくれるプレイヤーを探してたんだ」
「なるほど、それでストーキングをしてた訳だ?」
再び兵藤からのヤジが聞こえる。
「そんなことしてない!」
必死に否定しすぐさま茜音の方を見る。
「ねぇ?茜音」
そう同意を求めるが、彼女は肯定も否定も出来ない。助け船を出してくれそうなのはシロだけ。そう思い、今度は彼女がシロの方へと視線を向ける。それに答えるために、
「うーん」
と、捻り出すように声を上げたシロは、
「じゃあ、とりあえず、イツツバくんのこのゲームの中でしたいことは茜音ちゃんと同じってことで良いのかな?」
茜音と同じ。その響きが嬉しかったのだろう、イツツバは先程までの会話の内容など忘れてしまったかのように喜んで頷いた。
「じゃあ、次は俺か?」
イツツバに相手にされなくなった彼が、
「兵藤だ」
と、短く自己紹介をする。そして続けて、
「このゲームを遊ぼうと思ったきっかけは特に無い。何となく面白そうだなと思って適当に手に取った。だから、特にやりたいこともこれといってない。今流行の仮想空間ってのがどんなものか体験出来ればそれで良いかな?とは思ってるが、まあ、お金を出した分だけでも楽しめれば良いな」
先に自己紹介をしていた二人よりもややドライな感じがした。それが本心なのか、何かを隠しているのかは分からない。でも、発売日にゲームに参加している時点で適当に手に取ったという事は無いのではないか?と、シロは不審に思う。しかし、そんな態度は一切見せず、
「俺の名前はシロ。さっき簡単に言ったから要らないかな?」
自分の自己紹介を笑顔で開始した。




