【十九】
清貞を見つめる長政は何を言われても腕を組んだまま仁王立ちをして動こうとしない。だから、清綱が代わりに、
「死にそうになったら回復してやるから安心しろ。どうやらうちの大将は何があっても動かんみたいだからな」
そう言って隣に立つ綱親の方を見ながら、
「ある程度したら助太刀してやってくれるか?」
と、小声で指示を出す。
彼女としては、複数の敵を前にして慌てふためいている彼の姿を見るのは面白いのでそのままでも良いかな?と、思っていたが清綱にお願いされては仕方がない。
黙ったまま頷いて戦闘の様子を見守る。
清貞が先制を取っているので、まだ敵からの攻撃はやって来ていない。チラチラとこちら側を見ていた清貞も長政の態度と清綱の言葉で吹っ切れたのか、敵の前衛をしている鎧を纏った骸骨男に斬りかかる。
上段の構えから振り下ろされた攻撃は骸骨男に見事命中し、不意をついているとはいえ中々のダメージを叩き出した。
敵の頭上に表示された数字を見て清貞は喜ぶが、
「意味無い」
彼には届かないか細い声が綱親から溢れる。
敵モンスターは二人一組で出現しており、前衛の骸骨男だけならば今の攻撃で何の問題も無かった。が、
「後衛にヒーラーが居る」
更に溢した綱親の言葉通り、後衛のモンスターである真っ黒な着物を纏った別の骸骨によって、今減ったばかりのダメージを補って余りある量の体力が回復した。
「あ、先にそっちだったか」
清貞も状況を理解して悔しそうに言うが、敵が回復したということは自分達の攻撃ターンが終わったという事を示している。
そう、敵はヒーラー一人ではない。悔しがる清貞に容赦なく骸骨男の薙ぎ払い攻撃がやって来る。それを寸でのところで自分の刀で弾き、その襲撃を殺すように後ろへと身体を飛ばして受け身を取る。
「はーっ!甘ぇ!俺には受け身って技能があるんだよ!」
剣先を敵へと向けながら叫ぶが、
「確かに便利ではあるが、地味だよな?」
先程の綱親と同じように彼には聞こえない声量で清綱が呟く。本人がショックを受けないように配慮しているのだろう。
「久しぶりに見たけど、やっぱり猫みたい」
続いて綱親が溢す。
「ああ、猫ってどれだけ高い所から落ちたとしてもちゃんと着地出来るんだっけ?」
どこかで聞いたそんな蘊蓄を披露しながら、猫と目の前で戦闘を行っているパーティーメンバーである清貞を頭の中で重ねて長政が言う。
「そろそろ助太刀した方が良いです?」
「まあ、一応タイムアタックの最中だしな?別に煽られて腹は立たんが、簡単に負けてやるつもりもない」
その言葉を肯定と見なした綱親が一瞬にして敵との距離を詰める。




