【十五】
このゲームに慣れたプレイヤーであれば、イベントダンジョンへなど技能を使って一瞬で移動してしまう。それは、食事処で管を巻き武田信玄の号に向けて本格的に動き出した彼らも、久し振りにメンバー全員が集まり改めて浅井家として動き始めた彼らも同じであり、それぞれのグループがダンジョンへと降り立つタイミングもまた同じであった。
技能を使ってそれぞれがそれぞれで移動したにも関わらず、パーティーを組んでいる為か、四対四、お互いがお互い同士対面し合うように綺麗に並んで姿を現した。
「あ」
と、声を漏らしたのは当然号を持っていない側で、椎名は直ぐに指を差しながら、
「浅井長政!浅井長政!」
そう連呼した。
「名前を呼ぶのも指を差すのも失礼だから止めなさいね?」
と、軽く注意する千歳であったが、彼もまた号を持つプレイヤーには興味津々で、
「すいません。うちの馬鹿が!ちょっと田舎の出身で有名人を見つけるといつもこんな感じなので……少々迷惑でしょうが、気にしないで頂きたいです」
そう言いながら一歩二歩と近付いて、長政に対して手を差し出す。
「私、千歳雨と申します」
差し出された手を無下にすることは出来ない長政は快く握手に応じ、
「どうも、ご丁寧に」
と、言葉少なではあるもののしっかりと返事をする。
「浅井さんたちもイベントダンジョンに?」
「ええ、まあ」
明らかに話を広げないようにしている長政など無視をして、
「パーティーメンバー全員が号持ちだとどれくらいの時間でダンジョンクリア出来るんでしょうね?」
軽く、ジャブ程度に言葉を振る。
「どうでしょう?久し振りに戦闘をするメンバーばかりなので慣れてる方に比べたら大分掛かってしまうのでは?」
「私たちもあんまり今回のイベントには参加していないんですが、もし宜しければダンジョンクリアのタイムアタックなどどうでしょう?号を持つ四人と持たない四人でどれくらいの差が出るのか?」
千歳の向こうでミズホが何かを言いかけていたが、椎名とろじぃによって口を塞がれている。
同じようにこちら側では、千歳の態度が気に入らない清綱と清貞の男二人が文句の一つでも言ってやろうと一歩足を踏み出すが、長政に腕を出され制止されてしまう。
「良いですけど、戦闘に不慣れなメンバーが多いのでお手柔らかに?」
長政は右手を横に出したまま苦笑いでそう伝えた。
「えっと、それはつまりこれからこの二つのパーティーでイベントダンジョンのタイムアタックをするという事ですか?」
改めて確認する綱親に、両パーティーの男共ほぼ全員が肯定する何かしらの動きを取った。




