【十】
「いやいや、そんな凄い顔で睨まれても事実だから」
焦ったように言う清貞であるが、彼女が睨んでいるのはそちらの話ではない。
「まあ、とりあえず、メンバーも集まったことだし、綱親さんもこっちに来て座って話を聞いてあげてよ。他にも色々相談したいこともあるし」
穏やかな笑顔を作って言う長政に促されて、囲炉裏を囲むように座っている三人の一つ掛けている場所へとゆっくりと移動して静かに座布団へと腰を下ろした。それでも彼女の視線は正面にいる清貞から離れることは無く、そのせいで喋りにくそうな清貞は、
「ちょっと!アイツ、どうにかして」
両サイドに座る二人に言うが、
「お前の話を真剣に聞こうとしているようにしか見えんが?」
と、清綱はとぼけ。その発言を含めた彼の言動を見て長政はクスクスと鼻を鳴らすように笑った後、
「まあ、そういう事だから気にせずに一から説明してよ。光くん達に会ったことも一緒にね?」
当然、綱親へのサプライズ的な感じでその事実をオチに用意していた清貞は胡坐をかいた状態のまま前のめりに倒れ込み、
「長政さん、それ言っちゃったら俺の話が全然面白くなくなっちゃうんだけど……」
「あ、ごめん」
と、ハッとした表情をした後に真面目な顔で謝罪するあたり、長政自身には悪気は無かったようだ。しかし、
「別に長政が謝ることない。そもそも清貞の話が面白かったことなんて過去に一度も無いし、オチが分かった事で何か不都合があるとも思えない」
日本刀で斬られたような鋭く冷たい返事に清貞は体勢そのままで動くことはない。
「お前が話をしないなら、俺から簡単に要点をまとめて話しちまうけど良いのか?」
「どうぞどうぞ。俺はもう真っ白に燃え尽きちまったんで」
「本人からの許可が出たので俺から簡単に話すけど、その前に長政宛に手紙が届いたんでその内容を皆で話し合ってどうするのかを決めたいと思う」
清綱の言葉にやって来たばかりの綱親だけでなく、異常な体勢で話を聞いていた清貞までもが改めて座り直し話を聞く姿勢になっていた。どうやら彼にもこの話はまだ通っていなかったようだ。
重苦しい空気に包まれる部屋の中、清綱の視線が長政へと飛ぶが、彼は、
「別に俺からじゃなくても良いんじゃない?清綱そのまま話しちゃってよ。こんなに重苦しくなるほど重要なことでも無いと思うしね?」
促され、
「先日、俺たちの城主浅井長政宛に朝倉義景から手紙が届いた」
これだけを聞けばそこまで歴史に詳しくなくても分かることがある。
「もしかして同盟の提案?」
そう、綱親の言葉通りこの二人は歴史上同盟を結んでいた。
義理の兄である信長を裏切って朝倉側についた浅井長政の話は有名であるし、そこにまつわる様々な逸話もまた有名である。が、今回の手紙の内容はお茶会の誘いである。長政が先程言ったようにそこまで重苦しい空気になるような事では無いが、そのお茶会が同盟提案の場であるかもしれないという事実は拭えない。




