【五】
「今のところ、七十周くらい?」
四人の中では断トツの周回数ではあるが、他のメンバーは誰一人として驚いてはいない。それどころか、
「まあ、ミズホだったらそれくらいはいってると思ったけど、むしろ思ってたより意外と少ない感じか?」
あっけらかんと椎名がそう言い放つ。
まだイベントが始まって五日ほどしか経っていないにも関わらず、周回数が七十を越えているということは、一日平均で十周以上していることになる。それに驚かないのも恐ろしいが、少ないとまで言われてしまったミズホは一体どういう風に思われているのだろうか。
「七十周以上してみての感想は?」
ろじぃが質問を振ると、ミズホの視線は一度宙を泳ぐようにして一周し、
「さっき、椎名が言ったみたいに出来ることがたくさんあって楽しい。普段は日本刀しか使ってないけど、他の武器でも回ってみたくて、新しい武器二つも買ってしまった」
自分の欲求を満たすことが出来た喜びとお金を使ってしまった悲しみ、その二つが合わさったなんとも言えない顔で三人を見つめる彼に、
「その気持ちは分かる!でも、結局表向きはお金を稼ぐイベントな訳だから、武器二つ買ったところで大したこと無いんじゃ?報酬とかで金塊貰えるでしょ?あれ」
「いや、そうやけど、武器の方が高くて全然追い付かんよ」
ミズホは言いながら自分のウインドウを開いて所持金を確認して深いため息を吐き出す。
「何をするにもお金は大事だからな」
椎名はボーっとウインドウを見つめるミズホを見ながら言って、
「この後、またダンジョン潜って金策するか?」
モンスターなどの敵モブからドロップした素材やいらない武器、防具などを売却してお金を稼ぐというのがこのゲームにおいて一番ベタな金策ではあるのだが、今回のイベントではそれにプラスしてボス討伐後に換金アイテムが貰える為、いつもに増して効率が良い。それに加えて号が貰えるかもしれないという話まで付いて来た。
「金策も大事だと思うが、それよりも信玄の号です。お金は貯める事がいくらでも出来ますけど、号はそんなお金をいくら払っても買えるものではありません」
千歳はそう言って、何かを思い出したのか、首を振りながら、
「あー……、失礼。今確認出来ている号の中に一つだけお金で手に入るものがありました」
「ん?何?お金稼ぎながら信玄の号を取りに行くっていう一石二鳥の作戦?」
白々しくも話に乗っかる椎名に、
「信玄であれば残り二つくらいならば分け与える号は持ってるだろうな」
と、ろじぃも続いた。




