【三】
「いや、しかしこのゲームにおいての技能みたいなものだろう?ボケとかツッコミってのは。それならば標準装備という表現で間違っていないんじゃないか?」
そう自分の正当性を本気で主張するろじぃに対して、そこまでの気持ちを込めてツッコミを入れた訳ではない椎名。彼の言い分としては、その場を盛り上げる為にあえてそういう言い方をしただけなのだが。
「はいはい、分かった分かった。俺の発言が間違ってました」
彼の方がほんの少しだけろじぃよりも大人であった。
しかし、素直に謝ることが癪だったのか、心から謝罪をしている表情ではなかった。
場の空気を考えて、そこを取り成したのは椎名からリーダーと呼ばれていた千歳であった。
「まあ、二人の言い争いはどちらにしろ下らないことだと言うことで本題に戻りたいと思います」
取り成すと言うよりはブッタ切ると言った方が自然かもしれない。
「まあ、今回はなんと言っても新イベント関連の事がほとんどだとは思いますが、それぞれ何か気になったことでもあれば挙手の後どうぞ」
あれだけのことを言われ、更には話を終わらせられたにも関わらず先陣を切って手を挙げたのはろじぃであった。彼は先程の事など気にする様子もなく、
「いつものように、新イベントに関しては攻略サイトや考察サイトなどを使って色々と情報を集めてみた」
そう言って鼻の頭付近まで右手を動かしつつも、思い止まり持って来ていた手を何事も無かったように元の位置に戻す。
「この四人でも何度も攻略をしている為、基本的な情報は省くが、今までのイベントよりもかなり攻略難易度は下げられているように感じた」
「まあ、確かに、コンボが決まりやすかったり、色々な戦術が試せたりして戦ってて爽快感っていうか、楽しさがあったよな?」
椎名が口を挟むと、ろじぃはゆっくりと頷く。
「更に、これまでと違う点は他にもある」
それを説明しようとした瞬間、他の三人からほぼ同時に、
『ボスだな』
という声が聞こえた。ろじぃは目を細めながらも、
「そうだな。今回のボスは武田信玄とはっきりと表示されていた。今までのイベントのボスはモンスターだったり、人の形をしているものであっても歴史上の人物の名前が使われているものなど一つも無かった」
「確かに」
と、誰かが相槌を打つ。
「そんな状況でネット上がどう盛り上がっているかというと、今回のイベントは換金アイテムが目的のイベントでは無いんじゃないか?ということだ」
「武田信玄がボスで出て来た瞬間からそういう事もあるんじゃないか?って思ってたけど、やっぱりそういうことっぽいな」
椎名が嬉しそうに言う。それを見て他の二人と黙ったまま頷く。そして、
「裏ミッションみたいなもので、武田信玄の号が手に入るんじゃないか?って話だ」
ろじぃがハッキリと言葉でどういう事なのか説明した。




