【十八】
「はぁ!?」
下から抉るような角度で顔と声を上げるのは、要と合流し、とりあえずということで食事処で休憩を取っていた光であった。
周りには光たち以外のプレイヤーはあまりいないのだが、時間帯の為か食事をしに来ているNPCは数多くおり、そんな彼らの視線が声を上げた光に集まる。
不思議と人間というものは、こういう場合において、どれだけ集中していたとしてもその視線に気付いてしまう。光も例には漏れなかったようで、頭を下げ軽く手を上げて謝罪し、改めて着席し直して、
「北条氏政に誘拐されてただぁ?」
聞いた話を反芻するようにして驚きを露にした。
彼の隣に座る葵は特別リアクションを起こしていないので、冷静に受け止めてくれたのだろうと要が安心するのも束の間、
「豊臣秀吉と北条氏政が対面なんて!」
そう言って目を輝かせている彼女は、要から早く話の続きを聞きたそうにウズウズしている。
歴史が好きだからこその反応に、要は一抹の不安を覚える。こういうタイプのプレイヤー、つまり歴史が好きなプレイヤーというのは氏政が話していたような強硬派や穏健派といった派閥に所属してしまう確率が高いような気がしたからだ。しかし、彼女のキラキラとした瞳を見ると、それがいらぬ心配だったと思わせてくれる。
そんな、正にカオスという言葉でしか表現出来ない空間ではあるが、
「いや、氏政さんが誘拐を指示したとかそういう事じゃないんだよ」
話の状況を説明しようと要が一言喋るたびに、
「そもそも、何がどうなってそういう風になった訳?」
全く理解出来ないといった感じの光は、大机を挟んで向こう側に座る当人に詰め寄って訊ねて来る。
「だから、光たちと同じように移動の技能が欲しいなって思ってさ。まだ行ってない町とか村を目指して普通に……歩いてただけなんだよ」
そこまで言って、まだ伝えていないことを思い出したが、これ以上情報を詰め込むと更に混乱させるだけだろうと、時間を置いてから話す事にして、
「そしたら突然知らない人に握手を求められて、それに応じて気が付いたら捕まってて、辿り着いたのは北条の皆さんが集まってる屋敷だったって話」
「超特急過ぎて訳が分からんけど、解放されたって事は用は済んだって事?」
「用って言うか、これも最初から話すと結構長くなるんだけど良い?」
不安そうに訊ねる要に、
「それ聞かないと分かんないんだから仕方ないでしょ?」
と、呆れ顔の光と、
「今後の対策になるかもしれないから、是非聞きたい!」
と、ただ単に北条氏政に興味があるだけの葵。
彼らを前にして、自分の身に何があったのかをゆっくりと説明し始めた。




