【十七】
「さて、秀吉公をあまり足止めしてしまうと、ご友人たちにも悪いのでそろそろ解放してあげないとな」
要と氏政、双方による会話は止まっていたが、気まずい空気を気にしてか、氏政側からそう言われた。先程の事が気になっている要ではあったが、こんなにも周りの目があるこの状況で訊ねることではないと、言葉を飲み込み、
「まあ、半ば強引な誘拐という形ではありましたけど、北条氏政と板部岡……」
要は視線をその江雪斎の方へ向けて号を確認するが、結局読み方を思い出す事が出来ず、
「板部岡なんちゃらの号を持ってるお二人とお知り合いになれた事は初心者の僕にとっても有意義な時間でした。北条家の家臣の人たちの中には豊臣秀吉の事をあまり良く思っていない人もまだいるかもしれませんが、豊臣秀吉はそういう人であったとしても号を持っている僕はそんな人間じゃないって事を理解してくれれば嬉しいです」
そう言って頭を下げた。
「板部岡江雪斎な」
と、向こうから本人が訂正する声が聞こえて来るが、
「それじゃあ、せっかくなんで、友好の証として友達登録させてください。北条さんたちに何かあればすぐに連絡してください!大した力は無いですけど、協力出来ることがあれば駆け付けますから」
胸を張って言う。
「すぐに駆け付けると言うが、秀吉公は移動の技能を取りに行く途中だったんじゃないか?」
と、要の申し出が嬉しかったのか、氏政は笑顔でツッコミを入れた。
要自身はそんなツッコミに返す言葉が無く、恥ずかしそうに頭を掻いて間をごまかしていた。
結局、その場に集まっていた北条家の家臣連中も合わせて全員が屋敷の外へと足を運び、要が帰る姿を見送ることになった。
「小太郎。申し訳ないが、秀吉公のご友人のところまで送ってやってくれるか?」
その中の先頭に立つ氏政に言われた小太郎は黙ったまま頷いて要の元へとゆっくりと近付く。
「それじゃあ、また」
短い別れの挨拶もそこそこにすぐに視点は暗転し、気が付くと新町のすぐ外へとやって来ていた。
「あ、ありがとう」
周りを確認して状況を理解し、隣に立つ小太郎に礼を言う。
「無理矢理連れてきてしまって申し訳なかった」
感情が一部欠落したような、テンプレートな謝罪の言葉だけを残して、彼の姿はまたすぐに見えなくなってしまった。
「どうせならもう少し色々聞けば良かったかな?」
そんな独り言を溢しながら、町の中へと足を進め、
「忍者っていうのもカッコいいよなあ?」
それと同時にウインドウを開いて光へと連絡を入れる。
「ただ今、小田原から帰還。なんつって」




