【四】
どうすると言われても、きっとそれが彼らの本音だったのだろう。
彼らは、問い掛けられた氏政、そしてその隣に座る江雪斎、そして自分と同じ立場でこの場にいる連中の顔を互いに見比べるようにして、他人のリアクションを待った。
そんな彼らの様子を見て氏政が再び大きな溜め息を吐き出す。
「もう少し小太郎を見習えよ。自分で何がやりたいかを考えて自由にして良いんだぞ?せっかくジジイが居なくなったんだから少しくらい羽を伸ばしたって誰も怒ったりしないっての。それとも何だ?ジジイがいないと自分が何をしたら良いか分かんないってか?」
眉を顰めて眩しそうな顔をする。決して外から入って来る光が眩しい訳ではなく、それだけ言われても動こうとしない目の前の連中が気持ち悪いからだろう。
今現在、氏政が座っている場所にはつい先日までは北条氏康の号を持つ男が座っていた。彼は、悪く言えば独裁者。良く言えば、この北条という家を一枚岩にして日々ゲームの中での生活に勤しんでいた。それが突如引退すると宣言してからは目まぐるしい速度で、この北条家に置ける色々なものが変わって行った。その中でも一番大きく変わったのが、この北条氏政であろう。
彼女は元々こことは全く関係ない場所で普通にプレイをしていたのだが、氏康に呼ばれ半ば強引に城代として椅子に座らされ、そして、気が付けば氏康は引退し、自分が城主になっていた。
「なあ、本当にあのジジイはもう来ないのか?」
隣に座る板部岡江雪斎にだけ聞こえるような小さな声でそう尋ねる。
最近やって来たばかりの自分にとっては全く分からないが、この家臣連中にとって氏康という城主はかなり大きな存在であったのだろう。自分の好きにゲームを楽しんだら良いと思う一方で、たかがゲームの中の人付き合いでそこまで真剣になれるのもスゴイなと単純に関心し、それと同時にそんな崇拝の対象であった城主がいなくなった彼らが哀れでもあった。
「こうと決めたらテコだろうが何だろうが頑なに意見を変えない人だったからな。自分で引退を決めた時もそうだった。『引退』を宣言してから数日で貴方を見付け、氏康自身で連絡を取り……」
そこで一拍置いて、
「あとは、貴方が知る通りでしょう?」
そう言われ思い出す。
唐突に連絡が来たと思ったら次の瞬間には会って話をし、大量のゲーム内通貨を餌にしてこの北条家を背負ってくれと頼まれた。あの時、金に困っていなければ。こんなに面倒な事になると知っていれば、断ることも氏政に出来たのだろうが、タイミングが良かったのか、それともとてつもなく悪かったのか、今、ここに座っている。それが事実で全てであった。
「北条ねえ……」
氏政はそう呟いて、あまり真面目に勉強してこなかった日本史について頭の中で遡る。
関東の西側が拠点で、デカい城を持つ。場所的に上杉や武田とくっついたり対立したり戦国時代らしい身の振り方をしてたような……。
「そうだ。いつもこんな普通の家で集まって会議みたいなことしてるけど、小田原城はどうなってんだよ?」




