【二十一】
「あそこに見えてる町に入れば一応目標クリアにはなるんだろうけど」
相変わらず葵の後ろに乗っている光が目前に迫った町を眺めながら呟くと、
「そこからどうなるかが問題だよね?」
同意するようにして葵が言う。
十五カ所の町に足を踏み入れただけで技能が自然と手に入るのか、それとも改めてクエストが紹介されるのか現状では分からない。簡単な方が良いとは思いつつもクエストとして紹介されるのならそれも良いかな?と思ってしまう二人に突き付けられた現実は、酷くあっさりしたものだった。
満を持して馬を降りた二人がゆっくりと町の中に足を踏み入れると、二人の眼前にウインドウと共に文字が表示され、
『移動系の技能を取得しました』
というメッセージだけのイベントであった。
劇中に関係ない登場人物がナレーションベースだけで命を捨てられてしまうようなそんな寂しさはあったものの、結果目的であった技能は取得する事が出来た訳なので、
「や、やったー!」
ガラにもなく無理矢理声を上げる光に、ビクッと身体を震わせて視線を移した葵が、
「どうしたの?」
本気で心配した目で尋ねる。
「いや、あまりにもあっさりだったからこちら側だけでも盛り上がっとかないといけないかな?って思ってね」
苦笑いを浮かべながら理由を語る。
「努力は認める」
そう小さく呟いた葵は、冷静に自分のウインドウを開いて技能一覧の中に収まっている先程取得したばかりの移動系技能を探しながら、
「とりあえず、一回使ってみようか?もうここまでは来られるんだもんね?」
と、誘われた光は彼女に言われるがまま頷いた。
葵の細く長い指がウインドウに触れると、まずは大陸から選ぶようで、彼女の行った事がある北と東の大陸が二つ表示され、そこで東を選択すると更に細かく、今までに訪れた事のある町がズラッと一覧で表示される。
「やっぱり行き慣れた新町とか倉賀野にしとこうかな?」
独り言を呟いて優しく『新町』に触れる。すると、光の前から葵の姿がゆっくりと姿を消す。
「これって俺も使わないといけないのか?」
その様を見つめたまま疑問を口にしていると、
『新町へと移動しますか?』
という表示がウインドウに現れる。
「ああ、これで俺も付いていけるって感じね」
呟いて、『はい』『いいえ』と書かれた『はい』の方に触れた。
「おかえり!」
真っ暗な景色がゆっくりと色を付けて行く途中にそう声を掛けられる。声色ですぐに葵だと気が付くが、
「おかえりって言葉はこの状況で合ってるの?」
そう返しながら辺りを見回すとそこは紛う事無き新町であった。




