【十八】
「いや、本当に助かった。ありがとう」
散らばって行く人垣を背にした清貞が光と葵の二人に対して頭を下げる。
「結構な数のプレイヤーが通り過ぎて行ったはずなんだけど、誰も足を止めてくれなかったんだ。まあ、厄介事に巻き込まれたい奴なんてのは居ないだろうから当然だとは思うんだが、アンタらは別だったみたいだな。本当に助かったよ」
そう言って笑顔を見せる。
彼の行動に一度静止を入れた光は、改めて、
「実は、俺たち浅井長政さんとはちょっと知り合いで、彼女が貴方の事に気が付いたから仲裁に入りましたけど、そうじゃなかったら分かりませんでしたよ」
苦笑いで正直に言う。しかし、清貞は長政と知り合いだという事実の方に食い付き、その後の事はどうでも良かったのだろうか、
「え、長政の知り合いなの?」
と、二人の顔を指差して尋ねる。
順番に見返すように繰り返し視線を受けていた葵が、我慢出来なくなって、
「はい、前にちょっとお世話になって」
そう返し、
「その時に清綱さんと綱親さんにもお会いして綱親さんとは色々遊んだりしてるんですけど」
簡単にではあるが、自分たちとの関係を説明した。
「じゃあ、俺は結構ラッキーだったって事か」
そう独り言のように零しながら、
「でも、お姉さん、よくこの号見て長政の家臣って分かったね?もしかして歴史とか好きなの?」
少し圧が強めの態度に葵は少々引き気味で、黙ったまま頷いて返事にする。
「何かの用事でここを通りかかったの?」
矢継ぎ早の質問。今度は光へと視線を動かして尋ねる。
「まだゲームを開始して日が浅いんですけど、移動系の技能を取りたくて行った事無い町を回ってるんです。清貞さんは?」
「ああ、俺はね。久しぶりのインになるんだよ。このゲーム。だから、何か変わってるとこ無いかな?って色んな町をまわってブラブラしながら、まあ、散歩みたいな事してたんだけどね?その時に、このゲームに俺が復帰したってのを知ってるのは綱親だけだなってのを思い出して、長政と清綱にビックリサプライズ的な何かをやろうかな?って思って、あそこの店に入ったんだよ」
そう言って清貞が指差すのは先程まで彼自身と揉めていた商人がいる店だった。
「……なるほど」
光も指差す方を一瞥する。
そこで会話が途切れた事を良い事に、光はすぐに口を開き、
「じゃあ、我々は先を急いでますんで、行きますね!サプライズが成功するように祈ってます」
そう言い残し、葵は無難に頭を一度下げてその場を後にした。
「ゲームに復帰した人がサプライズするってどうなんだろう?」
和田の町を抜けた先で葵の後ろから光のそんな声がする。
「私が同じ立場だったら、恥ずかしくて出来ないけど、案外面白い計画かもしれないよ?」
「そう?」
「だって、こういうのは意外性だからさ?誰もそんな事やらないだろうって思ってる事の方が本当にビックリすると思うんだ」
「なるほど。一理あるかもしれん」
と、顎に手を当ててブツブツと呟く光を乗せて馬は次の町へと向かってひた走る。




