【七】
馬に揺られて八幡の手前までやって来たところで一つの案が浮上した。それは、過去に一度使った太閤橋ではなく、船で北の大陸まで渡ろうという話であった。前回、この町にやって来た時、要が散々言っていたのを光が思い出しての事だった。
「要がいないのに良いの?」
とても微妙な表情で心配そうに言う葵であるが、
「でも、このまま馬に乗って橋を渡るのもつまんないでしょ?」
そう光に言われ、同意をしてしまう。それに、もう一度あの橋を渡るという事は、もしかすると再びお金を徴収され、あの日であった力というプレイヤーと顔を合わせるかもしれない。宗久と取引をしなくてはならない光たちにとって、今、彼の周りのプレイヤーの目にむやみに触れるのはあまり良い気はしなかったので、結局、船で渡るという選択に行き着いた。
光は馬に揺られながら、港に停泊している船を遠くに見て、
「まあ、こっちだから安全って訳でも無いけど」
独り言のように呟いたが、
「それって、あの船が沈んだりするってこと?」
不安そうに葵が後ろから声を掛けた。
「流石にゲームだからそこまでは……」
そう答えようとしていた光の頭に船が沈没し、誰もいない無人島に漂着してサバイバルをしながら救助を待つというどこかで見たような、プレイしたような映像が頭に浮かんで来る。仮想現実という今までにやったことのないリアルなゲームではあるが、そこまで自由なはずがない。だから、苦笑いを作って、
「無いでしょ?」
言い切り、
「飛行機とか船の事故で漂着した無人島でサバイバルしながら脱出するとかってゲームは別でありそうだけど」
「自分たちでイカダとか作ったり?」
「ありそうありそう」
などと、そんな雑談で盛り上がっている二人は馬を降り、八幡の町へと向かう。
町の中を抜け、港の方へと降りて行く二人。
先程見かけた船は港に着いたばかりだったのか、そこから降りて来るプレイヤーや大量の荷物の積み下ろしなどで人がごった返している。これを見ると各町で賑わっていた大通りや倉賀野の職人組合にも負けない活気がある。
「で、船にはどうやって乗るんだ?」
周りを通り過ぎる人たちの顔を見ながら、必死に後ろを付いてくる葵に尋ねてみるが、彼女も自分と同じ時期に始めたプレイヤーで、ほとんど同じスピードで成長して来た初心者には分かるはずも無く、
「とりあえず、それっぽい人を探して聞いてみるしかないか」
と、零す言葉も葵に届いているのかすら不安になってしまう人の渦に、光は溜め息を吐き出して一息つくと葵に向かって手を伸ばし、
「要じゃなくてもこれじゃ迷子になるかもしれないしね?」
照れ臭そうにそう言った。
それに答えて手を握る葵も同じような表情をしながらも、
「光が迷子になるかもしれないから、私がしっかり握っておかないとね!」
照れ隠しでそんな事を言って返す。
「また、ここで迷子探しさせるのは辛いからよろしく頼むよ」




