【二】
「でも、良い武器が一つ手に入ったからと言ってもそう簡単には話は進まないよね?」
村正の作業場へと向かう為に通りを進む葵の口からもっともな意見が出て来た。しかし、それは発案者である光も当然考えている事で、何か良い作戦は無いかと考えていた中でたまたま出て来たそれらしいモノが今回の武器を使った作戦というだけで、他に何かがあればそちらを優先しても良いと思っていた。
「ま、失敗したら失敗したでまた別の作戦を考えるしか無いとは思うけど、それでも宗久の懐に飛び込めるのが事件の真相への近道だと俺は思ってる」
まるで名探偵のような口ぶりで話す光であったが、
「具体的に、その懐に飛び込むには他にどんな作戦何があるの?」
鋭く光に突っ込まれると、焦ったような表情で、
「いや、あの人と会う前には色々考えてた作戦もあったんだよ?」
そんな言い訳を挟みつつ、
「その中の一つはある程度効果があったとも思ってるし」
具体的にどういうものかを口にしようとしない事が気になり、そこ追及すると、
「葵は、このゲームで最もレア度が高いアイテムって何だと思う?」
突如始まったクイズ大会に、先程話題に出ていた職人が製作出来る最高難易度の武器や防具だろうか?それともそんな武器や防具を製作する為に使う素材アイテムなんじゃないか?と、頭の中で考えを巡らせる葵であったが、彼女の回答が口からやって来る前に、
「同じモノがこの世界に二つとして存在していない号だと思うんだ」
確かに武将一人に対して取得出来るのは一プレイヤーだけの筈だが、
「それはアイテム扱いで良いの?」
当然の疑問が葵から聞こえる。
「確かに形としては存在していないけど、プレイヤーを介した状態で存在はしてるから」
「うーん、なんか腑に落ちないけど、まあ、いいや、続けて」
光は短めにお礼を言って先を話す。
「豊臣秀吉と海北綱親っていう号を持った二人がいれば食い付きも良いかな?って考えてたんだけど、少し見積もりが甘かったね。向こうも号を持ってるし、お金持ちの商人だとやっぱり周りには結構号を持ってる人がいるのかもしれない」
四人が宗久の屋敷を訪ねた時、二人の号を持ったプレイヤーが居たからこそ個人的に挨拶を交わしてはくれたようだが、本当に簡単な挨拶だけでその場を去り、あとの事は別の人間に任せてしまっていた。
「でも、二人が居なかったら直接会えてないだろうから効果は十分にあったと思う。これで武器の取引をしに行く時は二回目って事になるからね?」
「確かに初めて会う人に武器の取引をしてくださいってお願いするのはちょっとハードル高い感じがする」
「でしょ?一つ懐に飛び込めてる証拠じゃん」
とは言ったものの今回の武器の取引が上手い事光たちが目指している方向へ向かう可能性の方がはるかに低い。しかし、それでも宗久と親しくなっていれば彼の尻尾を掴めるチャンスがやって来る可能性もあるだろう。
今回の武器製作は、香香香の好意に甘えている為にお金がほとんど掛かっていないが、次の手を考える時は自分たちだけでどうにか出来る方法をしっかりと考えなければならない。




