【十三】
このゲームの中に存在する町はそれぞれが何かしら特徴を持っており、神社やお寺、お城など巨大な建造物が目印となっている町や職人に力を入れる為に組合が多く集まっている町。人の往来が盛んな事を生かして宿場町になっていたりとその姿は様々である。
その中で、とある町は大々的には宣伝をしていないのだが、少しばかり路地裏に入ると賭博場が数多く建ち並ぶ賭け事の町というのを売りにしており、今日も朝から数多くのプレイヤーが自分の稼いだお金を持ってそこに足を踏み入れていた。
夢幻迷宮と呼ばれるエンドコンテンツに挑めるように自分自身を鍛えるのとはまた少し違った方面の楽しみ方ではあるが、ここで遊ぶ為には、やはりそれなりの資金が必要になる為、ある程度は真面目に冒険をしなければならず、そこそこ腕の立つプレイヤーが多くいる賭博場であるが、その中でも特に威勢良く遊んでいる一人の女性プレイヤーがいた。彼女の名は『紗々《ささ》』。
百名以上が在籍している徳川家臣団の中の一員で、ある日ひょんなことからここに顔を出して、その日からちょくちょく遊びに来るようになった。
彼女が参加しているのは、椀の中にサイコロを二つ入れてその合計が偶数なのか奇数なのかを当てる遊び。戦国時代のものは丁半賭博と呼ばれているが、これと似たもので有名なチンチロリンと呼ばれるものがあるが、これは中国から伝わったとされ、広まったのは昭和に入ってからだと言われている。
「丁が三回も続いてるのか」
紗々は伏せられたお椀を真っ直ぐに見つめながら呟くと、自分の手元に置かれた賭札を前へと押し出しながら、
「もう一回丁だっ!」
気合を入れて声を上げた。
その場には他にも男性が数名参加しているが、そこからは、
「おぉ!」
という歓声にも似た声が漏れる。そして椀を握るNPCが試合開始の声を上げる。
「勝負っ!」
その勝負は一瞬で雌雄を決する。ある種、ゲーム内における戦闘よりも短時間で勝者と敗者が決まってしまうのだ。
「出ました!グサンの丁」
開かれた椀の下には、それぞれ三と五の出目で転がる二つのサイコロがあった。
それ以外にも六つの板状のカードを使った手本引と呼ばれるものがあり、そちらの場からは、
「五、六の二点賭けで千で良いよ」
「じゃあ、こっちは一から四の四点賭けだ!」
「四点?全く男らしくないねぇ?男は黙って一点賭けよ。俺は三に五百だ」
賭博場らしいそんな声が聞こえてくる。
苦手な人からしたらその場にいるだけでも嫌になってしまうだろう喧騒が紗々には居心地が良かった。現実世界でギャンブルなど興味は無いが、暇つぶし、息抜きにゲームの中で少しだけ遊ぶには丁度いい。当たれば皆で喜んで外れたら馬鹿みたいに笑えば良いのだ。
17.11.26 誤字修正




