【五】
「よし、じゃあ、これで決まり!」
柏手のように手をポンと一回叩いて声を上げた家康は更に続けて、
「伝言板にお知らせ書いておけばみんな気付くよね?」
康政に尋ねる。
伝言板とは、その家に所属するプレイヤー全員が見ることの出来るグループ内での掲示板のようなもので、今回の場合は徳川家康に仕えている徳川家の一員であれば通知が届くことになっている。所属する全ての者が書いたり消したりが出来る訳ではなく、城主である家康が決めたプレイヤーのみがその権利を許されおり、当人をはじめ、今ここにいる康政と先程から名前が上がっている酒井忠次と本多忠勝に加え、ほとんど利用する事は無いが諜報部員をしている服部半蔵もその一人である。
「まあ、急ではあるけど、それが一番分かりやすいかな?」
康政が言うと、
「よし!」
と、家康は今日、何度目になるか分からない気合を入れて、自分のウインドウを開く。
せっかく持ってきた紙と筆は足元に転がったままになっており、そこには最初に書かれた『かっちゃんのしょぐう』という文字以外何も書き足されてはいない。きっと全ての予定や言葉は彼女の頭の中に広げられているのだろうと、立ったままウインドウをいじる家康を黙ったまま見つめる。
「時間は日曜日の夜で良いかな?」
ゴールデンウイーク最終日にあたるその日は、当初の予定通り明後日の夜。
いささか急ではあると未だに思ってはいるが、
「夜なら比較的イン率も高いし、大型連休で旅行に行ってる人も最終日の夜なら家にいるだろうし、良いんじゃない?」
彼女の機嫌をとる訳ではなく、素直に思った事を口に出す。
「んふふ」
と、気持ちの悪い笑い声が家康から聞こえ、思った以上に上機嫌になっている事が分かり、康政の口からも似たような笑い声が漏れてしまう。自分にもしも年の離れた妹がいたらこういう気持ちになっていたのかな?と、少し温かい気持ちになり、逐一何を書いているのかを報告してくる彼女の全てが愛おしくなる。
「場所は駿府城の中庭っと……。優勝賞品は、『井伊直政の号』です!」
そう言い終わると三度、気合を入れた大きな声を上げながらウインドウの『更新』と書かれた場所に力強く触れ、先月の半ばに忠次が更新していた伝言板以来の書き直しを行った。
「皆、驚くだろうな。特に忠次は……」
言って、こちらも本日何度目になるのか分からない止まっていた作業を再開する。
「あ、家康的麦ごはんの時間だから、ちょっと落ちるー!」
ゴールデンウイークの予定が出来て嬉しそうな家康はそう言うと、
「オッケーが出たら夜入るかもしれないけど、どうなるか分からないから、また明日って言っとくね?」
彼女の独特な『サヨナラの挨拶』を受け、
「うん。でも、日曜日には絶対入って来てくれないと困るからね?」
大会の主催者が当日に欠席などしてしまったら、優勝賞品である号も与える事が出来ないし、大会を運営することも出来ない。そして、重要なのが大会に関するほぼ全ての情報が彼女の頭の中にしか無いということだ。
康政にそう言われ嬉しかったのか、家康は笑顔で手を振りその場から消えて行った。




