【一】
光と葵が隣町を目指して移動している頃、南の大陸に居を構えるとある城の中の一室では一人の少女と一人の女性がゴールデンウイークのちょうどど真ん中に当たる休日の午前中を過ごしていた。
少女は部屋の中央で両手両足を思いきり伸ばして横になり、我が物顔で大の字になっていた。そして、やることも無いのか、天井の木目を上から下へと目で追いながら欠伸を一つ二つ吐き出していた。そんな彼女のそばには正座を崩したような体勢で座布団の上に腰を下ろす眼鏡を掛けた女性が、ウインドウを開いて何やら作業に集中している。
「今日、休みなのに人が少ない」
いよいよ木目をただ見つめる事にも飽きたのか少女がそんな文句を零した。それは明らかに構って欲しいという態度の表れであるのだが、眼鏡の女性は一切気にする様子が無く、我関せずといった感じでウインドウの操作を止める気配は無い。それをわざとやっているのか、それとも集中しているが故に気付いていないのか、はたまた独り言としてスルーされてしまっているのか、人によっては聞きにくい事に当たるのかもしれないが、この少女は違った。
「やーすーまーさー!」
甘えるような声で彼女の号を呼ぶと、榊原康政の号を付けた眼鏡の女性はウインドウをいじっていた手を止め、ほんの一瞬だけ視線を少女の方へと移して目を合わせたが、すぐにウインドウへと戻して、
「休日と言っても皆がインするのは夜がメインだしね?休みだからこそゲーム以外の事をやりたいって人も少なく無いんじゃないの?」
落ち着いた声で冷静に返した。
「そういう康政は朝からインしてずっと何をやってるのさ?」
康政自身の言葉に反している今現在の状態をどう思っているのか、同じ空間にいるにも関わらず自分には一切干渉しようとしない彼女が一体何を真剣になっているのか、それが気になって聞いてみた。
「うちの倉庫の中に、迷宮で拾ってきた山のような素材があるでしょ?その相場が今、どれくらいなのかチェックして、売ったり買ったりしてるの」
言葉の半分はしっかりと理解出来たが、もう半分の言ってる意味が分からない少女は、
「売ったりは分かるけど、買ってるの?」
「これから何かあって値段が上がるかもしれない素材は安い内に大量に買っておいて、今より値上がりすれば上がった分が儲けになるでしょ?」
康政は指を動かしながら先程と同じ冷静な言葉で返す。
分かったような分からないような、そんなふわふわとした理解度ではあったが、
「まあ、うちのお財布は康政に任せてあるし、損して無ければなんでもいーやー!」
少女を寝転んだまま少しだけ声のボリュームを上げて言った。話が終わった訳では無いのだが、既に作業に戻っている康政を見て、
「暇だなー!」
と、口を開く少女。
「家康はゴールデンウイークの予定とか無いの?」
可哀想に思ったのか、作業を続けながらではあるが話を振ってくれた康政に、
「そんなの無いけど?」
少しだけ不機嫌っぽく呟いた家康だったが、
「そっか」
と、何かを納得したように頷くと、
「予定作っちゃえば良いんだ!」
そんな喜びの声を上げた。




