【十五】
休憩明けも何度か敵との戦闘を繰り返したが、一度でも経験しているという事がこれほど有利に戦闘を進められるとは思ってもいなかった。四人は、葵の技能で減ってしまった体力を回復する事はしたのだが、誰かがやられてしまう事や、ましてや全滅なんて事は一切無かった。
だから、光はイベントボスのエリアに入る前に一度三人を集めて、
「ボスがどういう風に動くのかを簡単に説明しておきますね?」
そう切り出した。
ここで説明しなければならないのは、武田信玄が使って来る風林火山についてだ。それ以外の技能は先日の戦いで見ることが出来なかったので、説明のしようも無いのだが、風林火山以外に技能を持っているのか持っていないのか分からないので、それも合わせて説明する必要があった。
「武田信玄がこのイベントのボスになるんですけど、僕たちが前日に戦った時は技能を一つしか使って来なかったんですけど、それがあの有名な『風林火山』っていう技能なんですけど、それぞれの言葉に対応する技能って感じになってまして、風は目では追えないくらいの高速の斬撃です。あれは狙われたら回避するのはかなり厳しいと思います」
神妙な面持ちの光は更に呟き、
「昨日の戦いでは僕らのパーティーで完璧に回避した人間はいませんでした」
いきなり飛び出たマイナスの言葉にパーティーの雰囲気は暗くなるかと思ったが、
「回避出来ないならさ、受けちゃえば良いですよね?」
まさからそんな言葉が返って来る。
「私が持ってる技能は攻撃の技能はあんまり多くは無いですけど、普段りさと二人で迷宮に行ったりする事を考えて防御系の技能を多めに覚えているんで、それが役に立つんじゃないですかね?」
それがヒントになったのか、
「その防御系の技能がどういうものがあるのか詳しく教えて貰っても良いですか?」
ここにやってくるまでの間の戦闘では一切見せることの無かった技能を彼に説明して貰うと、
「それなら大ダメージは受けなくて済むかもしれません」
光は、笑顔で言うと、
「信玄の風林火山はその言葉の順番で使う技が決まってるので、最初は絶対に風の技を使って来るんです。だから、戦闘が始まった直後はまささんに一人で盾みたいな感じになって貰って、僕ら三人は少し距離を取って補助やまささんの回復待ちをしましょう」
三人がそれぞれ黙ったまま頷きを返す。
「次に使って来るのが林なんですけど、これは姿を消す技ですね」
「徐かなること林の如くって事か」
まさが納得するように言う。
「そうです。この技は姿を消すんですが、その消えている間に攻撃が出来るのかは分かりません。足音でどこにいるのか探ろうとしたんですけど、それも聞き取れなかったので、移動が出来ないのか、それとも足音も消えるのか分かってません」
周りからの返事は無い。緊張しているのが伝わってくるが黙って聞いてくれていると判断して光は次に移る。
「火なんですけど、これは超火力の連続攻撃って覚えてくれれば大丈夫です。そして、最後は山になります。まささんが言っていた防御の技能と似てるかもしれませんけど、風林火山で順番的に四番目の技になるんで見る機会が一番少なかったんですけど、この技は動きが鈍くなる代わりに一切ダメージを受け付けなくなる技だと思います」
終始早口になってしまったが、ここで光の勉強会は終わりを迎えた。




