【十四】
光が葵に話した事に嘘は無かった。前を行く二人が光たちよりも経験が豊富という事もあるだろうが、そもそも四人で敵を倒して行こうとする意識がはっきりとしていた。突然、先頭の男だけが猛ダッシュでパーティーを分散させたりはしなかっただけの話だが、それでも数度の戦闘をこなしても大した被害も出ていなかった。
途中に設けられた大きな空間で一休みをしていた一行。
「あのもし良かったらこれ食べてください」
そう言ってりさが差し出したのは綺麗な紙の上に乗っけられた金平糖であった。淡い色あいではあるものの、白や赤、青といった様々な色をしておりとても綺麗で、パッと見た限りではとても食べ物とは思えない程であった。
「体力や疲労回復とか気分転換の為に持ち歩いてるんです」
そう笑顔で言われ、光と葵はその紙の上に手を伸ばす。自然とそこから話は弾み、
「僕たちが昨日来た時は、こういうイベントに参加する事自体が初めてだったっていう事もあるんですけど、一緒に来ていた仲間が大怪我をしちゃって」
光は今日、ゲームを始めてから何度も頭で考えていた事を口にしていた。
「あんなに出血するんだってビックリしましたよ」
その言葉に不思議そうな顔をしてまさとりさがお互いの顔を見合わせる。それを見て何かを思い出した葵が、
「あ、そういえばこのゲームって出血の……」
そこで間がしばらく開いて、
「……何だっけ?」
考えていた割にはちゃんとした答えが出てこなかった。
「何が言いたいの?」
葵の顔を覗き込むように光が呟くと、彼女は傷口から血が出る様子を身振り手振りを大きくしながら何かを伝えようとする。光が、それに合うような言葉をまるでクイズのように次々に答えて行くが、中々世界には到達する事が出来ない。
「あ、エフェクトだ!エフェクト!」
結局自分で正解を見つけだし、元々言いたかったことをしっかりとまとめる。
「このゲームは血が出たり、流れたりとかのエフェクトが無いって話だったでしょ?」
「ああ、そういえばそうだったかな?」
二人の言葉に、金平糖を道具の中にしまったりさが、
「今日の夜中に行われるメンテナンスはその不具合の修正をするのかも?」
自分が今日、ゲームを始めるときに表示されていたお知らせを思い出しながら言う。
「そんなの出てたな」
少しぶっきらぼうな言い方でまさも話に乗って来た。
そのゲームにおいて重大な不具合が発生した場合は、ゲームを運営している会社がメンテナンスを行いその不具合を修正するという事が良くある。それはこの『G.O.U』でも同じで、
「じゃあ、やっぱりあの血が出てたのは不具合だったんだ」
葵の言葉に、
「急に血が出るなんてビックリしなかった?」
りさが少し不安そうな顔で尋ねる。きっとあまり得意では無いのだろう。
「現実世界でもあんな凄惨な現場は見ること無いですから多少驚きはしましたけど、自分自身でゲームの中の世界だってのがあったので、少しは和らいでたかもしれないですね。それにあんまり戦闘自体を経験してないってのもあったので、このゲームって出血するんだってのもその時に初めて思ったくらいで、言われるまでは違和感なんてほとんど感じませんでした」
くしくも先日、要が大けがを負い休憩した場所で、そんな話をしていた。




