【七】
「ほら」
と、何とも気だるげな声と共に長政の目の前へと手紙が差し出される。端を持っているせいで手紙としての形を自分自身で保つことが出来ずに力無く折れ曲がるそれは、沈黙の広がる小谷城の中に吹く風に吹かれて小さく、そして小刻みに揺れていた。
長政は黙ったまま受け取り、綺麗に折りたたまれた手紙を器用にクルクルと回転させて本文へと目を通す。
手紙とは言ってもここはゲームの中の世界である。その為、流石に筆などを使って綴られているような文字では無く機械を使って印刷されたような堅苦しい字体ではあるものの、
「なんか随分フランクなんだけど」
中身に目を通した長政が困惑しながら言う。
「え?」
その言葉が気になり清綱も横に立ったまま覗き込むようにして手紙を見た。
「俺の勉強不足で悪いんだけど、朝倉義景って女子中高生くらいの年齢なのか?」
清綱の見つめる先にある手紙の本文には、大袈裟な程小文字が使われた随分と親しい風に書かれた長政へのお茶会の招待状らしきものが綴られていた。
「これを読む限りだと若そうな感じはするけど」
長政は相変わらずの苦笑いで言葉を返し、
「まあ、俺達ってこのゲームの号を持ってる人たちの中でも取り分け人と関わらない部類だからね?朝倉さんが存在してるって事も知らなかったし、勉強不足と言うよりも世間知らずって言った方が正しいかも」
と、自虐っぽく続けた。
「いや、このタイミングで茶会なんかに誘って来るって事はもしかすると最近号を貰った奴かもしれんぞ」
「浅井家なんかと繋がってもあんまりメリット無いと思うんだけど」
手紙を縁側に置いた長政がやる気無さそうに言う。
「俺たちと一緒であんまり周りに興味が無いんじゃないか?」
「興味無かったらお茶会なんかに招待しないでしょ?」
「まあ、少なくとも俺らはやった事無いな」
そんな張本人である長政の顔を真っ直ぐ見ながら言った清綱は、更に言葉を続けて、
「このお茶会、出るにしろ出ないにしろ返事はちゃんと出しとけよ?」
渋々首を縦に振った長政だったが、
「あ、一応綱親さんにも意見とか聞いた方が良いかな?」
「お前に来た手紙なんだからお前が決めて良いだろ?まあ、長政が意見を聞きたいって言うなら聞いてみても良いかもしれんが、アイツは戦闘ばっかりだから有意義な意見が返って来るとは思うなよ?」
少しキツめの言葉でそう言うと、そのまま庭を散歩するように歩みを進め、
「技能、戦闘、武器、防具。そういう事に関してはしっかり自分の意見も言うが、今回のはどちらかと言うと外交だからな?あの戦闘馬鹿が一番面倒臭がるところじゃないか?」
そんな言葉を苦笑いで聞いていた長政も、
「決闘とか戦の招待だったら良かった?」
綱親への意見を求めるものの例としてそう言ったのだが、清綱にはそれrが長政の冗談に聞こえたらしく、
「戦なんか吹っ掛けられたら俺らに勝ち目なんか無いだろ?」
数メートル先まで進んで呆れたような表情と仕草で返した。




